アレックス・タバロック「東京の土地利用のレッセフェール」

[Alex Tabarrok, “Laissez-Faire in Tokyo Land Use,” Marginal Revolution, August 4, 2016]

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日本の首都・東京は1300万人を越えて人口が伸びている.それなのに,住宅価格はここ20年でほとんど上がっていない.なんでだろう? 東京は土地利用に自由放任アプローチをとっていて,これによって多くの建物は全国で共通のわずかな一般的規制にだけしたがえばよくなっている.『フィナンシャル・タイムズ』のロビン・ハーディングが,東京の制度についてとても重要な記事を書いている:

驚くべき事実がある:2014年に,東京都(人口1330万人,空き地なし)で142,417件の住宅が着工した.この数字は,カリフォルニア州(人口3870万人)で許可された建築件数 83,657件を優に超え,イングランド(人口5430万人)全体の新規住宅着工数137,010件よりも多い.

東京の安定した建築件数は,さらに驚くべき事実と関連している.アメリカ西部では住宅価格の高騰で歪みが生じた――高齢者と若者を対立させ,すでに裕福な人々に富を再分配し,いい雇用がある地域に移動する機会を他の人たちが手にできなくしてしまった.これと対照的に,この日本の首都では不動産コストはほとんど変化していない.

これは,人口減少の結果ではない.日本でも,他の国々と同じく「都市回帰」が起こっている.

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どうしてこんなことが可能になってるんだろう? まず,日本には強い土地財産権の歴史がある:

区画規制により,土地所有者の権利は強い.実際,日本の憲法では「財産権は,これを侵してはならない」と宣言している.民間企業が所有者に土地を売却させることはできないし,地方政府が所有者に土地利用をやめさせることもできない.誰かがピンクの貝殻で装飾した疑似ゴシック風のお城を建てたいと思ったら,当人の勝手にしていいのだ.

でも,これだけでは説明しきれない部分が残る.日本で1986年~1991年ごろに巨大な土地価格バブルが起きたからだ.それどころか,日本は制度を改めて規制を減らし認可プロセスを迅速化したのは,このバブル崩壊に対応してのことだった.

(…)1990年代に,政府は開発規制の緩和をすすめ,これが都市再生特別措置法というかたちになった.この法律により,区画整理をやりやすくなった.オフィス跡地は新規住宅に転用された.「バブルから経済が立ち直るのを助けるために,日本は都市開発に関わる規制を緩和しました」とイチカワは語る.「バブルがなければ,東京はロンドンやサンフランシスコと同じ状況になっていたでしょうね」

アパートのサイズを計算する際にエントランスホールや公共空間は除外され,既存の区画内でさらに大きくできるようになった.一方,いま審議中の案では,旧来の耐震基準に合わせてつくられた区画を解体すれば所有者がさらに大きく立て直せるようにしようとしている.

土地供給が固定していて経済が成長すれば避けられない帰結として住宅価格が高騰するわけじゃあない――住宅価格が高く,しかもさらに上昇を続けているのは,土地開発を規制する政策選択の結果だ.

選択によってうまれた政策なら,選択によってやり直せる.

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