経済学101は主に皆様の寄付によって賄われています。温かい支援をお待ちしています

タイラー・コーエン 「雨や雪が降るほど路上の安全性は高まる?」

●Tyler Cowen, “Can more rain make the road safer?”(Marginal Revolution, November 6, 2003)


スクープが舞い込んできた。

カリフォルニア大学バークレー校公衆衛生大学院研究科の博士研究員であるダニエル・アイゼンバーグ(Daniel Eisenberg)は全米48州でこれまでに発生した100万件を超える交通死亡事故のデータを分析し、その結果次のような驚くべき事実を見出した。一カ月ごとの降水量や降雪量が多いほど交通死亡事故の発生件数は少ないということがわかったのだ。具体的には、一カ月ごとの降水量が10センチだけ増えると、交通死亡事故件数は3.7%だけ減少するという関係が成り立つというのだ。

アイゼンバーグは次のように語る。「データを詳しく分析する前は降水量と交通死亡事故件数との間には正の相関が成り立つ1だろうと予想していたのですが、どうやら両者の関係はもっと複雑なもののようです。」

アイゼンバーグの分析によると、次のような結果も明らかになっている。雨が降ったその当日の交通死亡事故発生のリスクはその日以前に雨が降らない期間が長く続くほど高くなるというのだ。連日のように雨や雪が降る場合には、雨が降ったその当日の交通死亡事故発生のリスクは低下するというのだ2

言い換えるとこういうことだ。(雨や雪が降ったために)危険な路上を運転せねばならない経験をつい最近した場合には人は(そうでない場合よりも)一層慎重に運転するようになる。しかし、我々人間というのは弱くて愚かな存在であって、過去に味わった危険な体験などあっという間に忘れ去ってしまう3というわけだ。

雨が降らずにいる期間が長引くほど降雨日当日の交通死亡事故発生のリスクが高くなる理由についてアイゼンバーグは私とは別の説明を与えている。

「雨が降らない期間が続くとその間に路上にオイルが溜まったり車の破片が飛び散ったままになりますが、そういう状況で雨が降ると当初のうちは道路は滑りやすくなるでしょう。」4

アイゼンバーグは次のような興味深い結果も見出している。

・・・全般的に見ると、降雨(や降雪)は交通死亡事故に対してよりもそれ以外の(死亡事故にはつながらない)交通事故に対して一層大きなインパクトを持っているという。

アイゼンバーグは語る。「1日あたりの降水量が1センチだけ増えるにつれて、その日に交通死亡事故が発生するリスクは平均して1%程度上昇することになりますが、それ以外の交通事故が発生するリスクは11%程度上昇することになります。」

つまり、雨や雪が降った日には人の死を伴う交通事故以上にそれ以外の(交通死亡事故以外の)人身事故や軽度の衝突事故が増えるということだ。

アイゼンバーグはこう語っている。「天候が悪い時にはドライバーは車のスピードを落とす傾向にあるとは言え、あらゆる事故を回避するに十分なだけ減速するというわけではないということなのかもしれません。しかし、平均的に見ると、(降雨や降雪という事態を前にして)ドライバーたちは事故の深刻度を抑えるように行動しているとは少なくとも言えるでしょう。」

言い換えると、あなたの命を奪う恐れがあるのは雨ではないということだ。お酒や愚かさ、不運、そして下手な運転テクニックこそが交通死亡事故の重要な要因なのだ。

  1. 訳注;降水量が多いほど交通死亡事故件数も多い []
  2. 訳注;コーエンは引用していないが、記事ではこの点について次のようにもう少し詳しく説明がなされている。「アイゼンバーグは次のように語る。「降雨(や降雪)が1日ごとの交通死亡事故発生リスクに及ぼす効果はその日以前にどの程度雨や雪が降ったかに依存しています。例えば、今日雨が1センチだけ降ったとしても前日も雨だった場合には今日の交通死亡事故発生リスクは平均すると上昇することはありません。しかし、前回雨が降ったのが2日前という場合は、今日雨が1センチだけ降ると交通死亡事故発生リスクは3.7%だけ上昇することになります。前回雨が降ったのが21日前ということになると、今日雨が1センチだけ降ることで交通死亡事故発生リスクは9.2%だけ上昇することになり、2日前に雨が降った場合よりもリスクは2.5倍近くも高まることになります。」」 []
  3. 訳注;危険な体験が行動(この場合は運転)に影響を及ぼすのは非常に短い期間であってその影響は長持ちしないということ。雨が降らない期間が長引くほど危険な体験(雨の中で運転するという経験)もますます過去の記憶となり、それに応じて運転も慎重ではなくなるということ。 []
  4. 訳注;記事ではさらに次のようにコメントが続いている。「しかし、雨が2日続けて降ると、オイルや車の破片は路上から洗い流されることになり、その結果(道路が滑りやすいという意味での)路上の危険性は低下することになるでしょう。」 []

コメントを残す