(…)日本における再生医療は,中間段階すなわちフェイズIIでの試験結果にもとづいて条件および期限つきの販売承認を得られる.フェイズII では,ヒトによる臨床試験を行い,安全性と蓋然的な効能を実証する.Frost’s Kumar によれば、かつて承認までの時間でアメリカと欧州連合に後れをとっていたが,いまや承認までおよそ3年の道程となっている.かつては、これに7年から10年かかっていた.
世界中で、こうした治療を推進するなかで企業はさまざまな足止めにぶつかっている.アメリカでは、はじめて国から承認を受けてヒト胚性幹細胞の試験を開始した Geron Corp. は、2011年にその計画を中止した.同社は、コストと規制の複雑さを中止理由に挙げている.
(…)全世界で科学者たちはこの分野で何年も研究を進めている一方で、治療法は遅々として市場に登場してこない.だが、日本には希望がある.すなわち、政治的な規制の壁なしに、有望な治療法がこれまでより迅速に登場し、その見返りもこれまでより早くに得られるという希望がでてきている.
日本が自由化を進めている理由は、高齢化が進むなかで、アルツハイマー病やパーキンソン病の治療法の需要が強い.新制度のもとで、遺伝子治療や再生医療(e.g. 幹細胞)を有する企業は、小規模な試験で条件および期限のついた承認をえられる.条件および期限つきの承認をえると、企業はその治療法を販売しつつ、有効性に関するデータ収集を最長7年間つづけられる.7年の期限に達したら、企業は最終的な販売の承認を申請するか、その製品の販売・利用を終わらせねばならない.この点で、新制度は『選択自由医療』で Bart Madden が医薬品に提案している制度に似ている.
規模が大きく価格統制がないため、アメリカの医薬品市場は世界でいちばん高額な医薬品市場となっている.ざんねんながら、これにより、アメリカの FDA は世界全体の投資に大して過大な影響力をもつことにもなっている.だが、日本市場の規模はじゅうぶんに大きいため、自由化された承認プロセスが自由化された支払いモデルと結びついたなら、世界全体での研究開発を増進しうる.
日本でなされた革新は、世界中で利用できるようになるだろう.その点で、ぼくらは今回の重要な自由化を称えるべきだろう.