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ニック・ロウ「マクロ経済論議:需要不足VS不確実性ってほんと?」

Nick Rowe “Insufficient Demand vs?? Uncertainty” (Worthwhile Canadian Initiative, July 04, 2014)

(訳者補足:本エントリは、先に訳したジョン・コクランの記事と、それへのノア・スミスの反応に対するもの。)


これは間違った二分法だ。以下では、ささっとノア・スミスジョン・コクランへの反応を書いてみよう。

ジョン・次のように言ってる。「ジョン・テイラー、スタンフォード大学のニック・ブルーム、シカゴ・ブース大学のスティーブ・デーヴィスは、勘に頼った政策によってもたらされた不確実性のせいだと考えている。大統領の次の一筆や司法当局による魔女狩りによって全ての努力が水の泡にされてしまう可能性があるのであれば、誰が雇用や貸出、投資をしたいなどとおもうだろうか。エド・プレスコットは、歪みの大きな税や差し出がましい規制を強調している。シカゴ大学のカーシー・マリガンは、社会保障政策による意図せざるディスインセンティブを解析している。そしてその他色々。これらの問題が不況を引き起こした訳ではない。だがこれらは今や悪化しており、回復を妨げ成長を遅くしている。」

オーケー。政治的不確実性の増大が「雇用や貸出、投資」をする意志の減少を引き起こしたと仮定してみよう。これは妥当なように僕には見える。ただ力の向きは正しいけれど、その大きさは分からない。

マネタリストであればこれによって貨幣への需要が増大し、中央銀行がそれを相殺するに十分な行動を取らない限りは不況が引き起こされると言うだろう。

ニューケインジアン/ニューウィクセリアンであれば、これによって自然利子率が低下し、中央銀行がそれを相殺するに十分な行動を取らない限りは不況が引き起こされると言うだろう。

政治的不確実性の増大は総需要を減少させる。それに加えて、正のフィードバックプロセスが総需要の初期の減少を増幅させる可能性がある。政治的不確実性の増大に直接的には影響されなかった人たちでさえも、総需要の初期の減少に加えて、総需要に対する彼ら自身の不確実性のせいで雇用や貸出、投資をする彼ら自身の意思を減少させるだろう。だから平均的な人や企業は調査に対して、不十分な需要が彼らの個別事例では問題だったのであり、政治的不確実性が原因だったのではないと答える可能性があるんだ。

でも需要側の問題であったとしても、それは適切な金融政策対応によって防ぐことができた。確かに供給側の効果もあるんだろう。そしてこうした需要側と供給側の効果の相対的な大きさを推測することは、実証的にはとても難しい。(ノアが促しているように)インフレ率が下落している(需要側)か、それとも上昇している(供給側)かを見ることによっては、事態の全貌が明らかになるとは限らない。なぜなら相対価格にショックを引き起こすようなものは全て、名目価格硬直性によって、それが長期フィリップス曲線を不利な方向1 にシフトさせる以上に短期フィリップス曲線を不利な方向へとシフトさせ、経済を長期フィリップス曲線上に保つためには一時的なインフレの上昇が必要2 となる可能性がある。(GST(付加価値税)がそれよりも効率の悪い税を代替するために導入された際のカナダはこの一例だし、石油の相対価格が上昇する際はいつでもこうしたことが起きている。)

だからこれはどっちがどうとかいう話じゃない。それどころか両方に少しずつ原因があるという話ですらない。政治的不確実性の上昇は、それによる需要への効果を通じて不況を引き起こす場合があるんだ。金融政策が適切に対応しないかぎりはね。(そしてこれはもちろんながら、名目GDPを目標にするということだ。インフレ目標は、供給側のショックが短期フィリップス曲線の不利な方向へのシフトを引き起こす際にはうまくいかないからね。)

  1. 訳注;シフト前と同じインフレ率において失業率が悪化、あるいはシフト前と同じ失業率におけるインフレ率が上昇するということ。 []
  2. 訳注;長期フィリップス曲線上(自然失業率)と同じ水準の失業率となるためにはインフレの上昇が必要になるということ。 []

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