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ノア・スミス「同質性にいざなうセイレーンの歌」(#2)

[Noah Smith, “The siren song of homogeneity,” Noahpinion, April 30, 2017]

〔数回にわけて掲載しています.前回はこちら

オルト右翼は本当に同質性支持の運動なんだろうか? トランプ支持運動は?

どんな運動も…まあ,異質だ.オルト右翼は同質性についてよく語るけれど,同質性の話ばかりしてるわけではないだろうしし,運動をやってる理由も同質性を求めるからというだけじゃないはずだ.なかには,社会正義運動がこわくてオルト右翼に加わった人たちだっているかもしれない――結束して相互防衛しようというわけだ.あるいは,とにかくしかじかの移民集団に反対して加わっている人たちもいるかもしれない――キューバ系の隣人はかまわないけれどシリア系の隣人はこわくてたまらないという人たちも,オルト右翼に参加しているかもしれない.あるいは,キリスト教右派が崩壊したあとに安住できる集団を探し求めている宗教的伝統主義者かもしれないし,古き南部らしいスタイルの人種主義政治で結集したネオ南部連合主義者かもしれないし,参加できるイケてるクラブを探してるただのトランプ・ファンかもしれない.人によっては,「同質性」なんてたんにこの国からけしからん連中を追い払うために連呼しやすい言葉でしかないかもしれないし,あるいはみずから選び取った価値観の基礎となっているかもしれない.トランプ支持運動について言えば,ほぼ間違いなく複数の理念がある――大統領選に勝つという大同団結の目標を掲げるものなら,かならず複数の理念があるものだ.

だが,これまでの研究を見ると,人種の異質性に対する恐怖は現実にトランプ支持の原動力となっているのがわかる.たとえば,この研究をみると,じぶんは白人だという意識が強い人たちに「アメリカはかつてほど白くなくなっている」ということを思い起こさせると(これは事実はないかもしれないんだけどその話はのちほど) ,トランプ支持が増えたという.ちなみに,同質性の支持は,トランプ支持層の文献や論議になんどもなんども出てくる主題だ.トランプの助言役マイケル・アントンの有名なエッセイ「93便選挙」は,トランプ支持層の基本マニフェストの1つだと広く考えられている:

三点目,これが最重要項目だ.自由を尊ぶ伝統も自由とはなにかという分別も自由の経験もない第三世界の外国人をとめどなく国内に入れることで,有権者層はますます左よりになり,ますます民主党よりになり,共和党支持は薄れ共和主義は薄れ,ますます伝統的なアメリカらしさが薄れていく.言うまでもなくアメリカ国民もそうなっていく.

こうして見ると,どう質的な社会を求める欲求はオルト右翼からもっと幅広いトランプ支持運動にいたるまで強固な広がりをもっている点はかなりはっきりしていると言っておこう.

データにもとづく同質性支持の論

同質性を求める主張をせんじつめれば,「同質的な社会の方が暮らしやすい」という考えにいきつく.オルト右翼の人たちは,日本の犯罪率が驚くほど低いのを引き合いに出して,民族的に似通った人たちは争わないという証拠だと言う.また,同質性によって社会の信頼が高まるとも彼らは言う.

この「信頼」の考えを支持する研究は相当な量がある.そうした論文へのすぐれたリンク集がほしければ,ブロガーの”Roissy” こと James Weidmann によるこのポストを見るといい.Roissy はこの説をたった1つの式にまとめている:「多様性 + 近接性 = 戦争」 ここで彼のリストをそっくりそのまま再掲するつもりはない.かわりに,ごく一部だけを抜粋しておこう:

1. デンマークでの研究によれば,1979年から2009年の期間で,地方自治体レベルでの民族的多様性と自己申告による信頼度とのあいだに負の相関がある.

2. イギリスでの研究によれば,地域社会がより多様になったあともその地域社会にとどまった人たちは,じぶんの社会に対する態度が悪化したと報告している.

3. オランダでの研究によれば,教室の多様性が高まると児童はじぶんと民族的に近い友達をいっそう選びがちになっている.

4. ある研究によれば,ヨーロッパ各地で,民族的出自のさまざまな移民は社会的信頼が低下する傾向にあるのに対し,民族的出自の似通った移民はこれが高まる傾向がある.

Roissy のリストには経済学の論文は入っていないけれど,経済学者たちも民族的な分断がもたらす危険な項目に注意喚起している.Alesina, Baqir, & Easterly (皮肉にもかなり多様な執筆グループ)の有名な研究では,民族的な分断により公共財の供給が減少するのを見いだしている.Alesina, Glaeser, & Sacendote の研究では,アメリカがヨーロッパ流の福祉国家をもていないでいるのは多様性だという仮説を提示している

どのようにして多様性によって信頼が低下し社会の機能不全にいたるのかについては,さまざまな仕組みが提案されている.「もしかして,遺伝的により近い相手と協力するように人間は遺伝的にプログラムされているんじゃないか」とか,「もしかして,帰属する集団がちがえば人々の利害もちがってくるんじゃないか」とか,「もしかして,じぶんとちがう風変わりな相手には遺伝的に恐れを抱くようになっているんじゃないか」などなど.

だが,こういう証拠を持ち出すのに加えて,〔白人だらけの同質な社会を支持するのには〕情動に訴えかける魅力もある――本当に重大な政治思想というのは,決まってそういう面があるものだ.多様性を恐れる気持ちに訴えかける負の魅力がある――「じぶんが少数派になってしまうんじゃないか」「ことによると他の集団による憎悪の対象になって軽んじられたり抑圧されたりするんじゃないか」という不安のもとになる.他方で,半ば想像上の理想郷を熱望する気持ちもあるように思える――「白人版の日本」という,誰もが白人であるために現代アメリカにはあまりなかった近隣の仲間意識・社会的結束・平和が醸成されるという理想の国を求める気持ちに訴える魅力もありそうだ.

#3 に続く


Comments

  1. >「同質性」なんてたんにこの国からけしからん練習
    >a convenient rallying cry for expelling undesirable groups from the country
    「練習」ではなく「連中」ではないでしょうか?

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