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ポール・クルーグマン「根深い政治分裂がオバマの業績を見えにくくしてる」

Paul Krugman, “Deep Divisions Cloud Obama’s Legacy,” Krugman & Co., June 20, 2014.
[“The Pundits and the President,” June 10, 2014; “We Will Be Welcomed As Liberators,” June 14, 2014.]


根深い政治分裂がオバマの業績を見えにくくしてる

by ポール・クルーグマン

Stephen Crowley/The New York Times Syndicate

Stephen Crowley/The New York Times Syndicate

中道派のオバマ叩きの季節がやってきたみたい.「大統領は無力だ」なんて話をきかされる.「大統領は党の足を引っ張ってる」と民主党員が不満をこぼしてるぞ,なんてメディアで伝えられたりしてる(けど,オフレコ発言ばかりだ).

どんな客観的な基準で見ても,これはなんとも変な話だ.オバマ大統領の目玉政策である医療改革は,出だしこそゴタゴタに見舞われたけど,そこから立ち直った.任期が終わる頃には,ほぼ確実にもう覆しようがなくなってるだろう.オバマ大統領は,大気浄化法 (Clean Air Act) 以来,環境保護政策で最重要な方策をとった.金融改革はそこまで圧倒的な成果じゃないし,理想的なかたちにはまだまだ足りないものも多いけど,それでも際だった成果だ.大統領として大事なのが,永続的な効果をもつ物事をやることだとしたら,オバマ氏はまさにそれをやってのけたわけだ.じゃあ,なんでオバマ叩きなんかになるの?

答えの一部は,オバマ大統領はこういう成果を上げるはずじゃなかったって点にあるとぼくは思う.彼は,通説でマジメだとされることをやるはずだった:つまり,財政危機に対処するために各種の給付金を削減するはずだった.実は財政危機なんてありゃしないって事実や,長期についてほんとに気にかけてるならメディケア受給世代についてよりも炭素排出量についてもっと心配すべきだって事実があっても,このバイアスは変わらない.「強力な大統領ってものは,他のことじゃなくてとにかくエリートのお気に入り強迫観念にその力を注ぎ込むものだ」ってことになってるんだ.

さらに答えの一部になるのが,オバマ氏の支持率はたしかに低いってこと.でも,先日『ニューヨーク』誌でジョナサン・チェイトが指摘してるように,2012年選挙に突入したときにもオバマ大統領の支持率は低調だった.有権者はべつにオバマに魅了されていなくても選挙はゼロサム・ゲームであって,有権者は共和党のアジェンダをほんとに嫌ってたってことがものを言ったんだ.

それどころか,これから長らく,どんなに成功を収めようと,空に届かんばかりの支持率をもつ大統領にお目にかかることはないんじゃないかとぼくは見てる.アメリカは政治の二極化がひどいことになってる.そして,とくに共和党は,どんなに平和と繁栄をもたらそうととにかく民主党の大統領ならどんなヤツでも嫌うことだろう.でも有権者の40パーセントに支持されていて,さらに,自分のことは嫌っていても共和党議員のことも嫌ってる人たちの12~13パーセントを引きつけられる民主党の大統領なら,大きな勝ちをおさめられる.そして,それこそが,ありそうな未来の姿だ.

長くぼくの文章を読んでくれてる人ならご存じのとおり,大勢の人たちが大絶賛してた頃にオバマ氏にすごく批判的だった.いまでも,2009年から2010年にかけて,オバマ氏とその仲間たちがいろんな前線でもっとやってくれてたらよかったのにと思ってる.でも,いま,オバマ氏は大統領ってものがやるべきことをやってる:そう,国をいい方向に変えていってるんだ.

© The New York Times News Service


「我々は解放軍として歓迎されるでありましょう」

一次近似として,自分の間違いを認める人なんていないってことを,これまで何度も書いた.いつも決まって引き合いに出してた例は,5年前に「歯止めのかからないインフレがいますぐやってくるぞ!」なんて恐ろしげな警告を発していて,いまもおんなじ警告を発してる人たちだ.

でも,それも,イラク侵攻は見事にあっさり片付くよと請け合ってた連中にはまるで及ばないね――「誰も彼もバグダッドに行きたがる,本物の男ならテヘランに赴く」って発言を覚えてるかな?――あの同じ面々が,いまじゃあの腐敗した無能体制を救援すべきだと言い張ってる.基本的にはイランの同盟国であって,ぼくらのじゃないのに.

© The New York Times News Service


【バックストーリー】ここではクルーグマンのコラムが書かれた背景をショーン・トレイナー記者が説明する

二極化する政治と中道派

by ショーン・トレイナー

いくつか国内の論争(たとえばタリバン捕虜と引き替えにボウ・バーグダール軍曹が解放された件など)に続いて,政治アナリストのなかには「オバマ大統領の身内である民主党で彼に背を向ける民主党議員が出始めている」と結論づける人たちと,「いや,オバマ氏は党内でまだまだ広く支持を受けている」と反論する人たちがわかれている.

6月9日に『ナショナル・ジャーナル』に掲載された記事で,コラムニストのロン・フォーニアが,匿名の民主党情報源の語った話を紹介してる――フォーニアによれば,議員,コンサルタント,ロビイストもこれに含まれているそうだ.そうした情報源が言うには,大統領に対するいらだちが高まっているそうだ.「彼らはオバマを称賛し,尊敬もしている」――とフォーニアは述べる――「だが,指導者として欠点がいくつかあるために,彼の大統領職務は打撃を受けたと考えている.統治の細部にまで注意を払わずにいること,政治的プロセスと国民から身を引いていること,雇用について学ぶ意志に欠けていること,そして,自分たちの先入観を問い直すだけでなくボスにも異議を唱える意欲をもった一流のアドバイザたちをまわりにそろえることができていないこと,そうした欠点が問題だと言うのだ」

『エスクアイア』誌の評論家チャールズ・P・パースは,指導者としていくつか欠点があることをオバマ氏の失敗の特徴だと匿名の情報源たちが語ったのをフォーニア氏が使ったことを問題にとりあげた.「対立する共和党による前例のない妨害行為によって「政治的プロセス」と呼ぶに値するものなどなくなっているということが,フォーニア氏と彼の情報源たちの頭からは抜け落ちているようだ」と彼は記している.

最近の世論調査によれば,オバマ氏の支持率は40パーセントをかろうじて上回るあたりを上下している.だが,ネイト・コーン記者が先日の『ニューヨークタイムズ』記事に書いた解説によれば,「オバマの支持率が低調なのは,民主党寄りの有権者から選挙年なみの支持を維持する難しさと,ますます政治が二極化する時代にあって党派を超えた支持を勝ち取ることの難しさが,映し出されているのかもしれない.」

© The New York Times News Service


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