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ポール・クルーグマン「私の政策が失敗するのはどう考えても批判者がわるい!」

Paul Krugman, “Just Blame the Naysayers,” Krugman & Co., April 25, 2014. [“Blaming the Messengers, Euro Edition,” The Conscience of a Liberal, April 15, 2014.]


私の政策が失敗するのはどう考えても批判者がわるい!

by ポール・クルーグマン

Marco Gualazzini/The New York Times Syndicate

Marco Gualazzini/The New York Times Syndicate

ほほーう.ユルゲン・スタークのコレを見逃してた.これまでにぼくが読んだもと中央銀行家の文章で,いちばんすんごいヤツに数えられるね:「我々がくらしているのは,持続的な物価安定の時代である可能性が高い」――もと欧州中央銀行の委員が,最近出た『フィナンシャル・タイムズ』の論説にこう書いている.「これはいい知らせだ.これにより,実質の可処分所得は増加し,やがては民間消費を支えることになるだろう.インフレ予想はしっかりと定着している.物価下落を予想して家計と企業が購入を延期していることを示す証拠はない.差し迫ったデフレの警告や欧州中央銀行の行動をもとめる訴えは見当違いであり,無責任だ.この議論が長引けば長引くほど,そして,議論が激しくなればなるほど,自己成就的な予言のリスクは高まってしまう.」

ごらんのとおり,スターク氏は,まず低インフレで実質の可処分所得が増加すると断定している.そんな答案を学部の試験で書いたら「不可」だよ:そうだね,たしかに,名目の(インフレ調整していない)所得がどんな率で伸びたとしても,その所与の伸び率に関しては,インフレ率が低いほど実質所得の伸びは大きくなる.でも,低インフレは名目所得の成長率を1対1で減らしてしまう.影響力のあるもと金融当局者がこれを理解してないって思うと,生唾飲み込んじゃうね.

さて,低インフレがなんの影響ももたらさないってのは事実じゃない.低インフレは債務の実質価値を上昇させる.すると債務者たちは支出を減らすことになる一方で,債権者たちはそれを上回るほど支出を増やすことはないので,結果は縮小的になる.それに,名目金利がゼロ下限にあるとき,低インフレは実質金利を上昇させる.これらはどちらも需要を押し下げる効果だ.

あ,そうそう.ヨーロッパでは全体として低インフレにある.これによって,債務国にとっての調整問題はずいぶん悪化してる.ここんところを,スターク氏は言及すらしてない.

でも,ほんとにびっくりするのは,デフレの可能性について語ることすら,それで自己成就的な予言につながりうるので無責任だっていう,彼の主張だ.おっしゃるとおりでごぜえます:欧州中央銀行の不適切な対応によってヨーロッパは日本式の失われた10年~20年に陥るとすれば,そんなことが起きるかもしれないと警告した批判者たちがみんなわるいし,みんなが拍手喝采してればなにもかもうまくいくんですよね,わかります.

なんで一部の政策担当者たちがそんな世界に暮らしたがるのか,ぼくにも理解はできる――自分たちの政策は失敗すると批判者が言ったりするとほんとに失敗してしまうなら,それは批判したヤツのせいだってことになる世界をのぞむのはわかるよ.でも,そんな心根の人が,そんな見解を『フィナンシャル・タイムズ』でほんとに公表しちゃうなんて,ちょっと想像できないよ.

© The New York Times News Service


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