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マッケンナ&フェランティーノ「WTOはサンタクロースの通関に役立っているのか?」

MILES MCKENNA,MICHAEL FERRANTINO “Is the WTO Helping Santa Claus Clear Customs?“(blogs.worldbank.org, December 20, 2013)


トレード・ポスト1 もちょっとお休みをもらう時期が来た。でも休みで読者のみんなとお別れする前に、貿易に少々関係することをみんなに聞きかじってもらおうかなと思う。

休みの季節は、おもちゃメーカーとその販売業者にとっては凄く重要な時期だ。周りがクリスマスに彩られる頃には、そうした企業は適正価格で消費者を獲得しようと躍起になっているけれど、輸入品にかかる関税がしばしばことをややこしくする。

サンタが良い子と悪い子のリストを持っているように、貿易財にもリストがあって、世界貿易機構(WTO)の新協定2 はこのリストをもっと分かりやすいものにすることを目指している。毎年、世界中の税関職員は国境を越えてくる何百万ものおもちゃをどうやって分類するかの決定を行っている。彼らはそうした決定を世界税関機構(WCO)の商品の名称および分類についての統一システム(Harmonized Commodity Description and Coding System)にしたがって行っている。「HS」という名称でよりよく知られているこのシステムは、約5000種類のそれぞれの商品グループに対して6桁の数字からなるコードを付けているんだ。そうしたコードのおかげで商品の統一的な分類や、税関職員が参照するための法的なシステムが出来て、それが貿易に掛かる費用を抑えるのに一役買っている。WCOによると、200以上の国がHSを使用していて、国際貿易財の98%がその対象となっている。

ある製品がどの分類に入るかは、その製品が今年のクリスマスプレゼントのランキング1位となるかどうかに大きな影響を与える可能性があるけれど、話はそうした一般的なものだけで済むだろうか。

トイビズ対アメリカ政府の例を見てみよう。10年以上前、マーヴェルコミックス3 の子会社トイビズは、同社が輸入していたアクションフィギュアが人形ではなく非人間玩具として分類されるよう訴えを起こした。人形のほうが高い関税がかかっていたんだ(こうした差異は後に撤廃されたけれど)。数年に及ぶ裁判の後にトイビズが勝利し、X-MENファンタスティック・フォーなどのヒーローの輸入コストは劇的に引き下げられることとなった。

おかしなことにこの決定は、ファンの激怒を引き起こした。多くの人がX-Menを非人間として分類することは不当だと考えたんだ。それは関税どうこうということではなく、X-menがミュータントと人間の平等性の象徴だったからだ。ミュータントが人間として扱われるよう認められるための奮闘がX-menのストーリーのキーポイントだ。

これが今度の休みにどう関係するかって?税関職員がとっても良く知られたクリスマスのマスコットたちをどうやって分類してきたかを知れば、みんな驚くかもしれないよ。

アメリカでは、アメリカ税関・国境警備局(CPB)がそうした分類の決定を行っている。遡ること1989年、CPBはクリスマス商品について3600以上もの分類を行った。身に着けるものに関しては頭の天辺からつま先まで、それ以外もおつまみからホログラムのプレゼント包装庭木の飾りに至るまで何であれ、「祝祭用品」であると業者がCPBを説得出来れば、それらはアメリカへ輸入される際には免税となる。

これは簡単なことじゃない。サンタクロースを例にとってみよう。赤いクリスマス衣装をまとっていない場合、彼はクリスマス的ではないとされてしまう。とある置物のセットの事例においてCPBは、クリスクリンドルジェド・マロース4 の両方について、「老人、あるいは修道士ないし牧師としてのみ識別することのできるものであり、輸入に際してサンタクロースとは識別されない」とした。彼らはHSコードの39、「その他のプラスチック製品」として分類され、5.3%の従価税率を課された。

クリスクリンドルがだけがいじめられてると思うのであれば、フロスティ・スノーマン5 を見てみよう。CPBによると「一般的なスノーマンはクリスマスの祭事用シンボルとは認められず、免税扱いにはあたらない。」もしフロスティが免税されたいと思ったら、彼は彼の歌を歌うことができなければならない。そうすると祝祭用に分類されることになるんだ。

ミスフィットおもちゃ島6 の分類も同じくらいややこしい。ランキン・バスの古典的映画に出てくる赤鼻のトナカイやその他のキャラクターは、免税とされるには十分なほどお祭り的だった。でも、あるボブルヘッドフィギュアのセットについての事例で、いくつかのおもしろい分類が明るみになった。

一つには、こうしたボブルヘッドを免税項目に分類するのは間違いだったということだ。CPBはそれを次のように明確化した。ボブルヘッドという玩具は「その愉快、風変わりな見た目と首振りの動作から…大人向け(及び子供向け)の娯楽用と定義される。」赤鼻のトナカイやお間抜け雪男は「動物あるいは非人間生物を模した玩具」に分類を直された。けれどエルフのハーミーは「服装の如何に関わらず…人間を模した」人形とされた。ちょっとおかしいよね。

おかしなことにサンタクロースのボブルヘッドは玩具でも人形でもなく、人間あるいは非人間ともされていない。サンタは「クリスマス祝祭用品及びそれらに関する部品・付属品:クリスマス装飾:その他:その他」に分類されている。けれど幸運なことに、これは免税だ。

エベネーザ・スクルージ7 は人間を模した人形に分類されているが、クリスマス用あるいは祝祭用の人形とはされず、したがって12%の従価税率が課された。彼は多分嬉しくなかっただろうね8

「ミセス・サンタベーキング」の人形も人間とされたけれど、驚愕にもクリスマス的とはされなかった。彼女も12%の関税を受けている。

グリンチ9 は、とにかくもクリスマス的とされた!この事例では彼の心変わりが功を奏したのかもしれない。ともあれ、今は彼と飼い犬のマックスは動物あるいは非人形玩具とされており、シンディ・ルー・フーやその他のフービルの住人とは少々一線を画している。

こうしたこと全ては馬鹿げたことに思えるかもしれないけれど、自分が輸入業者で、商品が港に着いたときにどの関税が適用されるか分からないという場合を想像してみてほしい。これは重大な懸念事項だ。情報が提供されているかどうかが、二国間の貿易規模と貿易コストに大きな影響を与えるという調査もある

貿易円滑化に関する新たなWTO協定が、重要な通関情報の公表(第1条)、必要要件変更についての事前告知(第2条)、関税の事前照会制度の設置(第3条)を具体的に規定しているのはそうした理由からだ。この事前照会制度は特に、その国がどのように品物に対して分類、原産地の決定、課税を行うかを輸出入業者に対して明確にする。そしてこれら全ては、新たな取引についての不確実性を弱めるとともに、願わくは時間とともに世界中の通関プロセスを円滑化させるものなんだ。

というわけで、輸出入業者にとっては一足先にクリスマスが訪れたのかもしれない。

(本エントリは世界銀行のウェブサイト使用条件に従って掲載しています。The World Bank: The World Bank authorizes the use of this material subject to the terms and conditions on its website, http://www.worldbank.org/terms.)

  1. 訳注;世界銀行ブログの貿易関係のカテゴリ []
  2. 訳注;今月7日のバリでの合意 []
  3. 訳注;二大アメコミ出版社のひとつ。 []
  4. それぞれドイツ、ロシア圏のサンタクロースないしサンタクロース類似キャラクター []
  5. 訳注;同名の歌を元にした雪だるまのキャラクター []
  6. 訳注;ランキン・バス社が作成したクリスマス特別番組「赤鼻のトナカイ(Rudolph the Red-Nosed Reindeer)」に出てくるキャラクターたち []
  7. 訳注;小説「クリスマス・キャロル」の主人公。余談ながらスクルージは経済学者にやたら人気で、本サイトの過去エントリ(hicksianさん訳)にもある通り、Scroogenomicsという本まで出ていたりする。ここここも参照。 []
  8. 訳注;スクルージは町一番のけちであるため []
  9. 訳注;童話「How the Grinch Stole Christmas!(いじわるグリンチのクリスマス)」の主人公。心が小さく、クリスマスが嫌いで、プレゼントやツリーなどを盗むことでクリスマスを邪魔しようとするが、最終的には人々にとってのクリスマスがそうした物質的なものだけではないことに気付き、その瞬間に心が大きくなる。 []

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