タイラー・コーエン「雑食の多文化エリートは実は変化をこばむ保守?」

[Tyler Cowen, “Are cultural omnivores actually stuck-up sticky bits?” Marginal Revolution, June 18, 2016]

ゴールドバーグらスタンフォード大学とイェール大学の研究者たちは,長きにわたる定説に大穴を開けた.Yelp と Netflix に投稿された数百万ものレビューを分析して明らかになったのは,もっとも文化的に冒険心があると考えられる人々が,実は「限度をこえる」と捉えられる経験に対してもっとも抵抗を示す,ということだった.

つまり,ランチにタイ料理を食べ,仕事上がりにボッチボールで遊び,夜はフランス映画を鑑賞するといった楽しみ方から「文化的雑食」と称される人々は,その実,いろんなものを混ぜ合わせるのに反対する人たちに他ならない.ホットドッグにホムスをのせたりせず,マカロニ・ウェスタンは論外,”Switched-On Bach” など知ったことか.こうしたものは,文化的に真正ではないと彼らは考える.こんなものはごたまぜだと見る彼らは,そろって眉をひそめるのだ――1968年にウェンディ(旧姓ウォルター)カルロスが J.S.バッハをシンセで演奏したときにそうしたように.今日の文化的エリートたちは,〔賞味・鑑賞の〕経験が真正な場合にしか賞賛しない.つまり,テキサスのバーベキューで豚足を食べるのは及第点だが,メキシコのタコスに中東のタヒニをこってりと盛り付けるようなマネは落第なのだ.

「典型から外れる作品や料理を彼らは嫌うのがわかりました」とゴールドバーグは語る.スタンフォード大学経営大学院で助教授をつとめるゴールドバーグが言うには,「彼らはこのうえなく開放的なそぶりをすることもありますが,実のところ,そんなことはありません.多文化的にふるまうことで,彼らはもっとも保守的で,現状からの変化にもっとも抵抗する人々になっているのです」

あるいは,これをたんに趣味の良さと呼ぶべきかな?

Katherine Conrad の記事はこちら.例によって目利きの Dan Wang のツイート経由.

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