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エガートソン他「マイナス名目金利の金融政策」

Gauti Eggertsson, Ragnar Juelsrud, Ella Getz Wold” Monetary policy with negative nominal interest ratesVOX.EU, January 31, 2018

マイナス金利のマクロ経済上の役割について,経済学者の見解は分かれている。本稿では,預金金利の名目ゼロ下限のせいで,マイナスの政策金利がこれまでのところ家計や企業が直面している預金金利に対して非常に限られた影響しかもたらしておらず,またこの預金金利の下限が貸出金利への波及の減少も引き起こしているようである。マイナス金利にはしたがって総需要を刺激する効果はないように思われる。 [Read more…]

バスカー&シムコ―「バーコードの普及と経済効果」

Emek Basker, Timothy S. Simcoe “Upstream, downstream: Diffusion and economic impacts of the universal product codeVOX.EU, January 18, 2018

1990年代と2000年代におけるアメリカの小売業の急速な成長は,ICTによって加速させられた。本稿では,ユニバーサル・プロダクトコード1 とスキャナーの採用を地理的に見ることで,バーコードがそうした成長の主要な原動力の一つであったことを示す。バーコードを採用した企業は10%多く従業員を雇用し,より幅の広い製品を提供し,国外から調達する可能性が高かった。 [Read more…]

  1. 訳注;アメリカで用いられている製品コードの規格。UPC []

マイケル・ブライアン「ヤップ島のお金」(2004年2月1日)

Michael Bryan “Island MoneyFederal Reserve Bank of Cleveland, February 1, 2004

南太平洋のちいさな群島では,非常に驚きの「お金が」使われており,しばしばそれについて教室内の議論で言及される。本稿では,ヤップ島の石のお金について詳しく検討し,そうしたお金の特異な形態が私たち自身のお金について何を教えてくれるかについて問う。


同じくらい目を引くのはヤップ島の(略)土着のお金で,見かけは大きな石英の結晶のような石だ。(略)我々が知ったところによると,ある石は(略)直径3メートル超,重さ4.5トンある。こうした尋常ならざる石は所有者の家の前に置かれ,その人の重要性と富はその人が設置できる「ドル」の数によって表される。

J. R. ルハント「エスピーグル号報告書」1883年10月10日1

経済学者は自身の経済モデルを説明するのに,特定の選好と性質をもった島民が住む想像上の島におけるおおむね孤立した単純な市場での取引についての物語を語るのを好む。こうした「島の経済」は,経済学業界ではほとんど定番となっている。

本稿では,南太平洋のちいさな群島であるヤップ島のユニークで興味深いお金について考えることで,この寓話を根底から覆えすことにする。 [Read more…]

  1. 原注1;Gilliland (1975) []

タイラー・コーエン「本の書き込みはどうすべき?」

Tyler Cowen “How should you take and write notes in books?Marginal Revolution, February 3, 2018

訳者注:本エントリに関連して「大著の読み方」(拙訳)というのもありますので,ご興味あらば。


こんちわ!
本を読んでるときにノートを取るやり方なんかはある?本の重要な部分をクリッピングするとか。それとも読んだだけでハイお終いって感じ?

マシュー E.

(訳注:上記の読者からの質問と)同じ週にWilliam D. からもメッセ―ジがあった。

(前略)読んでる本にどうやってメモ書きしたりマーカーを引いたりしていますか。これは僕の教官(教科書は再読の際の完全性を保つために真っ新に保っておくべき派)と僕(教科書の理解や目的の部分を探すのにメモ書きが役に立つ派)で活発な議論をしてる際にこれが問題となったんです。教科書に書かれた過去のメモによって再読が妨げられるとおもいますか,それとも便利になると思いますか。自分としてはどっちとも判断がつきません。教科書に依るんでしょうか。

僕のやり方は簡単,だけど洗練されたものじゃない。 [Read more…]

メンジー・チン「ジャネット・イエレン:真の公の奉仕者」

Menzie Chinn “Janet Yellen: A True Public Servant” Econbrowser, February 2, 2018

本日(2月2日),ジャネット・イエレンがFed議長としての任期を終えた。

画像元: Federal Reserve

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タイラー・コーエン「モロッコに関するあれこれ」

Tyler Cowen ”Thoughts about MoroccoMarginal Revolution, December 31, 2017


1 フェズはたぶん古代末期時代との連続的つながりを世界一はっきりと感じられる場所だ。モーシェ・ベン=マイモーンやイブン・ハルドゥーンはこの街で働いたが,フェズのメディナ1 を歩けば,そうしたことが簡単に実感できる。ベン=マイモーンの家で食事をすることもできるのだ2 (おすすめ。ほとんどが野菜料理)。フェズには西暦859年から続く世界で最も古い大学があるほか,継続して運営されているものとしては世界で最も古い図書館もあり,これは1359年からのものだ。 [Read more…]

  1. 訳注:旧市街。モロッコの各都市にあるが,フェズのメディナは歴史の古さ,規模,複雑さで群を抜いている。 []
  2. 訳注;本当にベン・マイモーンの家だったのかはわからないが,Chez Maimonideというレストランがある模様。メディナのメイン入口近くのレストラン密集地区の観光客向けローカル料理店といった感じっぽい。 []

ジャネット・イエレン「困難な10年間と今後の課題」

Jenet L. Yellen ”A Challenging Decade and a Question for the FutureAt the 2017 Herbert Stein Memorial Lecture, National Economists Club, Washington, D.C.,October 20, 2017


ナショナル・エコノミスト・クラブでお話しさせて頂くのを大変うれしく思います。また,慎重な分析,研ぎ澄まされたプラグマティズム,冴えた機転を特徴とするハーバート・スタインの公職や学業における功績は,私たち経済学者の中でも最高の事例であり,彼の名を冠した場にいられることを光栄に思います。ハーバートは,政府の政策に対する新たなアイデアやアプローチの着想に積極的でしたが,彼のそうした開明性は本日の私の講演の主題に沿うものです。というのも,本日は金融危機と大不況の勃発以降に連邦準備制度(Fed)が用いた非伝統的な金融政策ツールとそれらツールが将来の経済的課題において果たす可能性のある役割についてお話ししようと思います。

10年近く前,アメリカは大不況以来最悪の経済金融危機のぬかるみに陥り,連邦公開市場委員会(FOMC)は雇用最大化と価格の安定という議会より課せられた目標を追求するにあたり,ある大きな課題に直面することとなりました。すなわち,私たちの主要な伝統的ツールであるフェデラルファンド・レートが実質的にゼロにまで下がっている中,弱体化するアメリカ経済をどのように支えるかというものです。そして,この課題への対処によって2つ目の課題が沸き起こりました。それは,金融緩和策が必要なくなった場合に,それを秩序ある形で縮小できるということをどのように保証するかということでした。いずれの課題も,それに失敗していれば雇用最大化と価格の安定を促進するための私たちの能力を毀損し,数百万もの国民の生活に深刻な影響をもたらしたでしょう。

本日は,私たちが1つ目の課題を解決したということと,2つ目の課題の解決にも良い進展が得られているということをお伝えしたいと思います。 [Read more…]

ジョン・コクラン「イエレン議長を振り返る」

John Cochraine “Yellen Retrospective” The Grumpy Economist, November 2, 2017


本日の新聞報道によれば,トランプ大統領はジャネット・イエレンの後任としてジェローム・パウエルをFed議長に任命することを決定した。

Fedの責務は「雇用最大化,価格の安定,長期金利の安定を促進する」ことだ。彼女の任期におけるこれらの結果について,イエレン女史は胸を張って良いだろう。

全都市消費者物価指数(除食料及びエネルギー)

文民失業率

10年物財務証券満期利回り

これら3つの変数すべてが過去50年において最良となっている。私を含め,多くの人が多くのことについてFedに文句を言うが,Fedに課せられた責務に関していえば,彼女が上の3つのチャートを次の職場の壁に飾るのを咎める人はいないだろう。

イエレン女史が特段課題に見舞われることがなかったと言う人もいるかもしれない。大統領が戦時において試されるがごとく,Fed議長は出来事によって試されるというわけだ。イエレン女史が不況や金融危機に見舞われることはなかった。この晩夏の静けさ漂う景気循環の中で,彼女の仕事の大部分は何もしないこと,そして彼女に大きなことをさせようとする人々の呼びかけに抵抗することだった。Fedの主要なツールであるフェデラルファンド・レートはほとんど動かなかった。

実効フェデラルファンド・レート

彼女が何もしなかったというのは正しいが,彼女は状況をめちゃくちゃにすることもなかった。金融政策の歴史の多くは凡ミスで構成されており,うまく業績を上げてきたわけではない。歴史的には,中央銀行家は晩夏のような景気循環の時に過剰ないし過少に反応してきた。緊縮・緩和を問わず,劇的な行動をとるよう大きな声で求める人がいないということもなかった。Fedが株式と住宅価格を操作すべきという「マクロプルーデンス政策」という誘惑の声はとりわけ強かった。彼女の前任であるベン・バーナンキは,2008年の危機と不況に対するFedの対応,そして2007年に危機が来ることをFedが見通せなかったという失敗について,彼女よりもはるかに多くの紙幅を割かれるだろう。状況をめちゃくちゃにしなかったということが歴史において大きな位置づけを与えられることはないが,おそらくはそうした位置づけを与えられるべきだ。

金融政策について,そしてより重要な問題である(と私が考えている)Fedの金融規制についての各人の考えはどうあれ,トランプ大統領は彼女を再任命しないという伝統破りを行った。Fed議長が順当な仕事を行った場合,彼あるいは彼女は再任されるという伝統はFedの独立性を保つための良い方策だ。この伝統がなくなってしまわないことを祈ろう。

イエレン女史の新たな旅立ちと,パウエル氏のFed議長就任に幸いあれ。

ジョン・コクラン「付加価値税」

John Cochrane ”VAT — full textThe Grumpy Economist, October 4, 2017


掲載から30日経ったので,ほかのすべての連邦税に代えて付加価値税を勧めるという趣旨でWall Street Journalに掲載した論説をここにも掲載しよう。前回のブログポストにはさらなる補足がある。
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ジョン・H・コクラン
2017年9月4日東部標準時 2:38 pm

トランプ政権と有力議員たちはまもなく税制改革提案を明らかにするだろう。報道では,この提案には法人税と所得税の引き下げのほか,一部の税額控除の終了が含まれている。しかし,優遇された(あるいは冷遇された)集団に(あるいは集団から)所得を移転する手段として主に税法を捉える人々や,控除,特例,補助金を支持者に与える政治家たちの普通の利益によって真の改革は阻害されることが多い。

したがって物事が常の通りに動くならば,アメリカの複雑で機能不全な税法が大きく変わることは期待できない。しかし,この国の指導者たちが本当に抜本的な改革を行おうとしていたならば,彼らはこの政治的行き詰まりを打開することもできた。変化は有権者にとって簡単で分かりやすく魅力的なものでなければならない。そして規制改革を伴った抜本的な改革だけが経済成長を3%あるいはそれ以上に引き上げることができる。 [Read more…]

世界銀行eMBeDチーム「誰もが誤りを犯す:2017年ノーベル経済学賞を開発事業に生かす」

eMBeD “Everyone misbehaves: Putting the 2017 Economics Nobel Prize to work for developmentblogs.worldbank.org, 10 october, 2017


2017年のノーベル経済学賞がリチャード・セイラーの経済理論への心理学の導入という革新的業績に対して授与されたというニュースは,シカゴ大教授であるセイラーや「実践 行動経済学 健康,富,幸福への聡明な選択(原題:Nudge)」の共著者にとっての勝利に留まらず,行動経済学の知見を用いた世界中の政策にとっての勝利でもある。

ダニエル・カーネマンの(アモス・トベルスキーとの)判断と意思決定に関する研究は,彼に2002年のノーベル賞をもたらした。2002年のノーベル賞が行動経済学に対するもの,あるいは経済理論および研究における心理学の利用に対するものであるとするならば,今年2017年の賞は行動公共政策に対するものと言えるかもしれない。セイラーの主要な研究はトベルスキーとカーネマンの研究の拡張だが,特筆すべきことはこの研究を政策決定にまで拡張したことだ。セイラーのおかげで,行動経済学はすべての人々にとって便利なものになった。とある人が書いたように,「今や我々はみな行動経済学者だ。」 [Read more…]