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アレックス・タバロック「セックスの再分配と障害者」

Alex Tabarrok “Sex Redistribution and Disability” Marginal Revolution, May 5, 2018


セックスの再分配に関するロビン・ハンソンロス・ドウザットの論説にまつわる議論の中で,セックスと障害という問題が争点に上がっていないのに驚く。この問題は医療倫理に関する研究では活発な議論の的の一つとなっている。生命倫理学者のジェイコブ・アペルは2010年の医療倫理学誌(Journal of Medical Ethics)で次のように主張している。

著者が考えているように性的快楽が基本的人権だとすれば,身体的・精神的障害のせいで無報酬の成人との性的関係を持つことが不可能ないしほとんど起こりそうにない個人のために,売春の法による禁止には狭い例外を作るべきである。

(略)改革が強く必要とされている第二の領域は,アメリカの介護施設,精神病院,グループホームにおける「ノーセックス」方針である。こうした施設の多くは,患者の部屋のドアをいかなる時にも開けておくことを義務付けており,秘め事は不可能も同然となっている。こうした制約の根底には,完全に健常で合理的な個人によるはっきりと表現された要望以外は,性的関係の最低限の同意基準を満たさないという前提がある。そうしたアプローチによって推進された原則は,施設に入れられた個人は施設の外で生活している個人よりも高度な保護を必要とするというものだ。これは確かに多くの物事については正しい。しかしながら,性的関係に関してはそうした「高度な」基準は,「現実世界」の同意基準に合わせることのできない個人の要望と利益を満たすにあたってはしばしば障害となる。

性的自由の「消極的権利」という概念以上に取り組むべきは,伴侶を見つけるには障害が重過ぎる,身体的障害が重すぎて自分自身で慰めることができない,のいずれかもしくは両方に当てはまるような障害者の性的快楽の「積極的権利」も認めるというものだ。ドイツ,オランダ,デンマーク,スイスといったいくつかのヨーロッパの国は,非営利団体による深刻な障害者のための限定的な「接触」サービスを許可している。

イギリスには,性労働者と障害者のマッチングを助ける慈善事業がある。デンマークやオランダでも同じようなサービスがあり,そうした国では性的な障害者サービスのために(多くはないものの)納税者の資金が使用されている。緑の党はそうしたサービスを他所へ提案している。

あるドイツの政治家は,深刻な障害を抱える人々が国家の負担で「性的介護」を受けられると示唆したことで議論を巻き起こした。

緑の党の高齢者・介護政策担当広報官であるエリザベート・シャルフェンベルクは,他のいかなる手段でも満足を得られない障害者に対する性的サービスのため,政府が「補助金を提供する」ことは可能であると述べた。

そうした制度はデンマークとオランダで現在実施されており,特別な訓練を受けて認証された「性的介護者」がお金のない障害者への訪問を行っている。

誰が何と言おうと,これは関係する人々にとって奥深い重要性を持った正当な問題だと思う。こうした問題を公の議論に持ち込む人が非難され,気色悪いなどと言われるのは不幸なことであると同時に間違いだ。改善できることだし,すべきだろう。

フランシス・ウーリー「セックスの分布に関するいくつかの基本事実」

Frances Woolley “Some basic facts about the distribution of sex” Worthwhile Canadian Initiative, April 29, 2018


カナダ公衆保健調査は,カナダ統計局が行っている任意の年次調査で,保健の状況やリスク要因に関する幅広い情報を収集している。2013-14年の調査の一環では,15歳から49歳のカナダ人47,764人に対して性活動―これまでセックスをしたことがあるか,調査前年にはセックスをしたか―について質問がなされた。

調査を受けた人たちの大多数は下のグラフにあるように性的に活発だった。 [Read more…]

アレックス・タバロック「2017年王立経済学会賞」

Alex Tabarrok “The Royal Economic Society Prize” Marginal Revolution, May 4, 2018

2017年の王立経済学会掲載論文の最優秀賞にバート・ウォレン・アンダーソン,ノエル・ジョンソン,マーク・コヤマの「Jewish Persecutions and Weather Shocks 1100-1800(ユダヤ迫害と天候不良 1100年~1800年)」(ungated版はこちら)が選ばれた。ノエルとマークはジョージ・メイソン大学(GMU)の同僚だし,ロバートもGMUの卒業生だ。論文の要旨は以下のとおり。

前近代から近代にかけてのヨーロッパで少数民族の迫害を引き起こしたのはいかなる要素だっただろうか。1100年から1800年にかけてのヨーロッパの936都市におけるユダヤ人迫害1366例からなるパネルデータを用い,我々は気温の低い作物成長期の後では迫害が起きる可能性が高まるか検定を行った。過去5年間における成長期の気温が1標準偏差下がると迫害が起きる可能性は(基準値である2%に対して)1~1.5%ポイント上昇する。この効果は土地が貧しく貧弱な国家で最も大きくなる。迫害の長期的な減少は,部分的には市場統合の拡大と国家の能力の増大によるものとできる。

王立経済学会の判断は正しい。これは理論と原データを巧みに組み合わせた素晴らしい論文だ。

今回の賞によってまた一つGMU経済学部が一流である証拠が増えた。

スコット・サムナー「日本旅行を終えての感想」

Scott Sumner ”Back in the USATheMoneyIllusion, May 1, 2018

日本について書いた前回のポスト1 の続きをさらっと書いてみよう。小奇麗で魅力的,礼儀正しい成田空港を発ち,ごちゃごちゃしていてだらしなくて混沌としていて無秩序なロサンゼルス空港に到着すると,まさに横っ面をはたかれたような思いがする。特に最高なのは,まだ機内にいるうちに航空会社から税関申告書が配られるところだ。着陸した後,税関申告書を誰にも見せる機会はないのにだ。きっと乗客の時間つぶしのためとでも思っているんだろう。数独をやるのと同じように。その一方で,小さな家とコンクリートのビル,電線であふれた日本を訪れた後に見るオレンジ郡南部は楽園のようだ。アメリカと日本を比較するのは本当に難しい。お互いにそれぞれ違った長所と短所があるからだ。 [Read more…]

  1. 訳注;言及されている記事の邦訳はこちら(optical_frog氏訳) []

タイラー・コーエン「教育のシグナリングモデルを単純化して考えてみる」

Tyler Cowen “A simple question about the signaling model of education”, Marginal Revolution, April 27, 2018

議論の目的上,教育とは100%シグナリングでしかないとしてみよう。ついでに人々のIQ,誠実さ等々といった地頭的なものはこの議論に関係する範囲の期間中は変わらないものとする。

少なくとも就職後最初の数年間では所得格差が広がっていっているという状況を考えてみよう。雇用主には労働者の質の違いを見抜くことができず,それを表すシグナルを見るほかはない。これは,教育を得ることはそれまでよりも「より分離的」となっていくことを意味するはずだ。

これにより,それまでよりも教育はより厳しいものになる。とはいってもこれは「入ること」のほうではなく(雇用主は自分自身で採用面接官を用意することもできる),やり遂げることのほうだ。やり遂げることが難しいので,きちんとやり遂げることはそれまでよりもより一層質を示すものになる。やり遂げることが難しいのは,教育がより厳しくなるから,というわけだ。

さてこれは正しいかな?

サミュエル・ボウルズ「マルクスと現代ミクロ経済学」

Samuel Bowles “Marx and modern microeconomicsVOX.EU, April 21, 2018

マルクスは経済学としては全くの失敗だったことに疑問をはさむ経済学者はほとんどおらず,これは大抵のところ彼の労働価値説に基づいた評価による。しかし本稿では,企業における資本と労働の権力関係に関するマルクスの描写が現代資本主義の理解と改善にとって不可欠な洞察であったことを論じる。実のところ,そうした洞察は労働市場や信用市場に関する標準的なプランシパル・エージェントモデルに組み込まれているのである。 [Read more…]

フランシス・ウーリー「初級経済学の試験に挑戦,ただし60年前の」

Frances Woolley “Could you pass a 1950s Econ 1000 exam?Worthwhile Canadian Initiative, March 29, 2018


経済原則の期末試験は,知らず知らずのうちに経済学という学問の核となる部分の一覧となっている。こうした試験問題は,経済学の基盤となる概念を問うように作られており,そうした概念は経済分析の基本となるアイデアだ。

というわけで,期末試験問題集と解答付のクリフォード・L・ジェームズ の「経済学の原則」(初版は1934年,参照したのは1956年の第9版)を手に取ったときに試験問題をスキャンしておいた。スキャンデータはのダウンロードはこちらから。私としては,経済学のという学問の60年前の基本原則と,それがどのように変わったかを知りたかったのだ。

数十年後の今も変わらないことの一つは,経済学が希少性と資源配分の問題から始まるということだ。

1.「豊富な経済」において,人々の欲求を満たす物とサービスは需要に比して希少に留まる。(正/誤)
2.生産における顕著な増加は,アメリカ経済における配分問題を完全に解決する。(正/誤)

希少性は避けることができない。人々は常にトレードオフに直面している。とはいえ,「豊富な経済」というのがどんなものであるかが分からない状況では,問題1の答えは「正」ではないかということもありえる。

1950年代では,希少性と資源配分は全く異なったツールで分析されていた。当時のアプローチはより制度的で,それは次の問題を見るとよく分かる。 [Read more…]

タイラー・コーエン「学会って意味あるの?」

Tyler Cowen “What is the real value of academic conferences today?” Marginal Revolution, March 8, 2018


読者の一人,RVから質問があった。

ワーキングペーパーやインターネットのおかげで今やっている研究について広めることが非常に簡単になった現在,学会の実際の価値についてどう考えてますか。キャリアの中盤に差し掛かっていて,どう見ても間違いなくスーパースター研究者ではない経済学者である自分の感覚としては,学会とは実際のところ,院生時代やキャリアの初期の頃の友人と一緒に時間を過ごす機会を買うというような大部分社会的なものだと思っています。

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スコット・サムナー「日本は金融緩和をしていない,緩和が必要なのだ」

Scott Sumner “Japan doesn’t have easy money, but it needs itTheMoneyIllusion, March 4, 2018


金融政策にまつわる混乱については,時にやれやれと頭を振るしかないことがある。

日銀は2%のインフレ目標を設定している。インフレ率は少々上がっているものの,依然として目標には程遠い。もっと重要なのは,市場における指標は今後日本が2%目標を達成する見込みが薄いと示しているということだ。したがってこんな話はまったく意味が分からない。

「日銀政策委員会としては,2019年度頃には物価が2%に達すると見込んでいる。そうなった場合,出口について検討と議論を行うことに疑いはない」と黒田東彦日銀総裁は述べた。

誰か説明してくれないか?どうしてインフレが近いうちに2%に達するなんて日銀は考えているんだ?10年物国債の利回りは今のところゼロに近い。アメリカでは2.9%だというのに。

長引く緩和が銀行の利益を圧迫しているため,一部のアナリストは,2%の目標は20年もデフレに苦しんでいる国にとっては高すぎる水準であるとして,インフレが2%に達する前に金利を引き上げることを日銀に求めている。

インフレが2%に達する前に日銀が政策を引き締めても,1~2年の間に政策金利を再びゼロ%まで引き下げざるを得なくなることだろう。

追記:ここの表を私が誤読していないか誰か教えてくれないだろうか。ドルの先物ディスカウントの相場はベーシスポイントだろうか。この表では30年先物ドルがたった50円で取引されているということを示しているのだろうか。

デビッド・ベックワース「パウエル議長が金融政策ルールに言及」

David Beckworth “Fed Chair Jay Powell on Monetary Policy Rules” Macro Musings Blog, February 27, 2018


本日2月27日,ジェイ・パウエルはFed議長としての初めての議会証言に臨んだ。それに加え,彼はFedの金融政策年次報告書を議会に提出した。彼の議会証言,それに続く質疑応答,そして年次報告書の論点は多岐にわたる。ここでは彼の証言のうち非常に興味深く,かつ重要なものともなりうる部分について取り上げてみたい。というのは,ジェイ・パウエルは金融政策ルールを承認(endorsement)したのだ。

議会証言録によれば,彼は次のように発言したとされている。 [Read more…]