経済学101は主に皆様の寄付によって賄われています。温かい支援をお待ちしています

スコット・サムナー 「影響の不安 ~誰かに『影響』を与える(誰かの『影響』を受ける)ということ~」(2012年9月18日)

●Scott Sumner, “The anxiety of influence”(TheMoneyIllusion, September 18, 2012)1


名目GDP目標というアイデアの影響経路――名目GDP目標というアイデアは誰から誰にどのようにして伝わったのか?――を探る試みが盛んなようだ。ビル・ウールジー(Bill Woolsey)ライアン・アヴェント(Ryan Avent)も詮索に乗り出しているが、どちらの記事も必読だ。私としても二人の意見2にこれといって異論は無い。ところで、この種の話題(誰が誰に影響を与えたか?)については個人的に思うところがある。あのボブ・ディランでさえもが「盗作」の疑いで批判されねばならない社会というのは「オリジナリティ」(独創性)というものへのこだわりがあまりにもいきすぎてしまっている社会なのではないかと思われるのだ。ディランと声を揃えて言いたいものだ。「オリジナリティ」は過大評価されている、と。

「歌詞の一部を盗作しているのではないか?」との批判の声に対してボブ・ディランは怒りも露に反論を加えた。「盗作だ!」と糾弾してくる相手を「腰抜け連中と子猫ちゃんたち」と呼びつけた上でディランは語る。音楽の流用は「フォークの伝統の一部だ」。

1980年代のことだ。俄かに「ニュー・マネタリー・エコノミクス」を名乗る一団(中心人物はフィッシャー・ブラックにユージン・ファーマ、グリーンフィールド&イェーガー、ロバート・ホール、アール・トンプソンら)が台頭してきて金融政策に対するまったく新しいアプローチ(に見えたもの)(「価格」アプローチ)3を打ち出した。しかしながら、しばらくして先行者がいたことが明らかになった。アーヴィング・フィッシャーが1913年に“A Compensated Dollar”(補正ドル案)の中でまったく同じアイデアを開陳していたのだ。物価の安定を図るために金(ゴールド)の公定価格をその都度変更すればいいというのがフィッシャーの案であり、フィッシャーは「この案は自分のオリジナルだ」と思っていた。しかし、知り合いの一人に「アナイリン・ウィリアムズが1892年にエコノミック・ジャーナル誌に寄稿した論文の中で似たようなアイデアを語っていますよ」と教えられる。そう伝えられたフィッシャーは他にも先行者がいないか調査に乗り出し、ウィリアムズよりも前の1800年代初頭の段階で同様のアイデアを述べている先行者(トマス・アトウッドやジョン・ルークら)がいることを突き止める。やがてフィッシャーはその調査の結果を一冊の本に纏める。『Stable Money: A History of the Movement』がそれだ。数多くの先行者がいたわけだが、その大半はお互いの業績を知らずに独力で同じアイデアに辿り着いていたのだった。 [Read more…]

  1. 訳注;原エントリーのタイトルの“The anxiety of influence”(「影響の不安」)はハロルド・ブルームの同名の本からとられたもの。 []
  2. 訳注;「サムナー⇒タイラー・コーエン⇒ブラッド・デロング⇒クルーグマン⇒ゴールドマン・サックス⇒クリスティーナ・ローマー」という影響経路に加えて、「サムナー⇒マイケル・ウッドフォード」という影響関係も(ウッドフォード自身は否定しているものの)あるのではないか、との見解。 []
  3. 訳注;金融政策というのは「金利」を操作するのでも「貨幣集計量」を操作するのでもなく、「貨幣の価格」を操作することにあり、との立場。 []

スコット・サムナー「2パーセント目標の超過より3パーセント目標未達の方がのぞましい」

[Scott Sumner, “Better to undershoot a 3% target than overshoot a 2% target,” TheMoneyIllusion, January 1, 2016]

金融政策について,ぼくはライアン・アヴェントとよく似た見解をとっている.でも,次の点について,ちょっとばかり細かい文句をつけておこう.

同時に,連銀の2パーセント目標をインフレ率が上回っている期間には,中央銀行が政策金利を上げる余地がもっと大きくなる.長期的名目金利の水準が高ければ高いほど,次に問題が生じたときに金利をゼロまで下げねばならなくなる見込みは薄くなる.

2009年,2010年,2011年だったら,2パーセントインフレ目標を超過しようとするのは意味があっただろう.でも,失業率が 4.6 パーセントになっている今日では話がちがう.経済が堅調なときにインフレ率を2パーセントを超えるところまで押し上げれば,経済が低調になったときに2パーセントインフレ率の下を狙わなければならなくなる.次にゼロまで引き下げねばならなくなる見込みはむしろ強まる.

というか,これこそ,2008年に間違ってしまったことだ.住宅ブームのあいだにインフレ率は2パーセントを超過していた.このため,2008年に政策を積極的に緩和する手をうつ必要が生じたとき,(2008年のあいだ2パーセントを超えていた)インフレの昂進を恐れて連銀は手控えてしまった.景気過熱期に2パーセントインフレを下回っていて,景気後退局面で2パーセントインフレを上回るのなら,理にかなっている.

ライアンはもっと高いインフレ率を支持する力のこもった論証を他にも提示しているけれど,インフレ目標の変更という観点でとらえた方がもっと有効だろうと思う.2パーセント目標を 0.5 パーセント超過するのを支持するかわりに,もっと高い3パーセントインフレ目標を 0.5 パーセント下回るのを求める方が理にかなう.インフレ目標を3パーセントまで引き上げることで,次に景気後退が訪れたときに連銀が金利を引き下げられる余地は大きくなる.2パーセント目標の超過では,そうはいかない.それに加えて,景気過熱期に目標未達でいる方が,ライアンも以前から支持している名目GDP 目標の精神と整合する.

こういう話は,意味のない難癖に思えるかもしれない.「2.5パーセントインフレ率になるんだったら,〔超過か未達かで〕目標をどうするかって話になんかちがいがでてくるの」と思うかもしれない.ごく短期的には,なんのちがいもないかもしれない.でも,明確に定義された政策レジームの文脈で金融政策の意思決定をしなかったら,経済は安定しなくなる見込みが大きい.とくに,景気循環のターニングポイントに達したときにはなおさらだ.

例によって,この3パーセントインフレ目標はぼくが優先する選択肢ではない(ぼくが推すのは名目GDP水準目標だ).ここでは,たんに「ハト派的」とでも言えそうな現行の政策論をとる人たちにとっていちばん有益な選択肢だとじぶんが考えるものを例解しようと試みてるにすぎない.

スコット・サムナー「弱者に同情しすぎる保守派」

[Scott Sumner, “Bleeding heart conservatives,” TheMoneyIllusion, December 30, 2016]

長年,やたら弱者に同情するリベラルに悩んできた.彼らは,社会の底辺で苦しむ人たちを美化する傾向がある.もちろん,右派はこれと真逆の間違いをおかして,底辺の人たちを邪悪な人間だと考えた.適正な態度は,冷静な功利的現実主義だ――彼らは犠牲者でもないし悪漢でもない.さて,道徳心の見せびらかしにやっかいな新しい傾向がでてきているようだ――弱者に同情しすぎる保守派という新しい傾向がある.
[Read more…]

スコット・サムナー「炭鉱の雇用を奪ったのはオートメーションであって貿易ではない」

[Scott Sumner, “Coal jobs were lost to automation, not trade,” TheMoneyIllusion, December 21, 2016]

dwb というコメンターがこんなコメントを残している:

炭鉱の雇用をつぶした「技術変化」は安い天然ガスと電力需要の低迷とオバマによる化石燃料撲滅キャンペーンの 1-2-3 パンチだよ

この人は,少なくとも貿易を悪者にはしていない.それでも,基本的にはまちがってる――ごく最近まで,石炭の雇用を奪っていたのはオートメーションだ.石炭産業の雇用はこうなってる:

screen-shot-2016-12-21-at-12-03-08-pm-e1482339825967

実は見かけよりなおわるい.1973年にオフィスでの雇用が加えられたおかげで,データで人為的な急増が生じているからだ.実際の炭鉱夫たちを数えたなら,雇用喪失はグラフよりはるかにひどいものになる.ただ,このグラフですら,87万人から約11万人へと雇用が失われている.鉄鋼業よりほんのわずかにわるい.

すると,石炭産業は輸入に圧倒されてしまったんだろうと決めてかかる人がいるかもしれない.でもちがう.過去5年というもの,石炭は純輸出になっている.全生産量の 7% から 12% の範囲だ.

「輸入ではないとすると,じゃあ石油やガスとの競争で生産がたたきのめされたんだよね?」と言うかもしれない.そうでもない.以下のグラフをみてもらうとわかるように,石炭産業はこの数十年にわたって生産を増やしている.石油やガスとの競争が実際に生産を食いはじめたのはこの数年になってのことだ.

screen-shot-2016-12-21-at-12-08-16-pm-e1482340150949

じゃあ,どうしてこれほど多くの石炭産業の雇用が消えてしまったんだろう? 答えは単純,「オートメーション」だ.ぼくが若かった頃とくらべて,いまの生産量は2倍近くまで増えている.そして,はるかに少ない労働者で回している.

コメンターのなかには,「オートメーションによる雇用喪失は貿易による雇用喪失より痛みがかるい」と思う人がいるかもしれない.実際には,痛みは同等だ.オートメーションで失われる雇用は,人員削減によって時間をかけて徐々に起きるわけではなく,波となって生じる.しかも,景気後退のさなかに起こることもよくある.たとえば鉄鋼業では,USスチールとベツレヘムスチールが旧式の工場を閉鎖したとき数千の雇用が失われ,ニューコアとチャパラルは別の地域にもっと効率のいい新式工場をつくった.ピッツバーグで多くの鉄鋼業雇用が失われる一方で,その分を置き換えたのはテキサスのもっと少ない人員だった.

似たことが石炭業でも起きる.ワイオミングの新しい巨大露天掘り炭鉱は巨大ショベルカーを使う.ウェストバージニア州の閉鎖炭鉱の従業員100名がこれで置き換えられてしまう.

screen-shot-2016-12-21-at-12-14-21-pm-e1482340516411

ワイオミングが外国だったら,ウェストバージニア州の炭坑夫たちは議員たちに怒鳴り声を上げて,自分たちは安いワイオミングの輸入から「保護」される必要があると訴えるところだろう.だが,ワイオミングもアップルパイなみにアメリカなので,誰も関税を主張なんかしない.それでも,かりにオハイオ州の鉄鋼が中国からの輸入に影響を受けた場合と,経済問題はそっくり同じだ.

オハイオ州の鉄鋼労働者やウェストバージニア州の石炭鉱夫の苦しみにもっと注目すべきだという聖人ぶった論評がメディアで騒々しく飛び交っているのをみかける.なるほど,でもそうした評論家たちの何人が,この2つのグループの利害が真っ向から衝突しているのを認識してるんだろう? トランプが鉄鋼を助けるべく保護主義政策を追求したら,それによってアメリカの石炭輸出は打撃を受ける.TPP はウェストバージニアの景気をよくするだろうけれど,一方でオハイオの製造業を脅かす.

だが,もっと深い水準では,石炭と鉄鋼が直面する問題はそっくり同じだ.アメリカでは,というかほぼ世界のいたるところで,オートメーションが急速に鉱山業や製造業の雇用を削減していっている.この問題が消えてなくなることはなさそうだ.それどころか,ロボット工学の進展にともなって,事態はいっそうわるくなるだろう.トランプはいくらか象徴的な動きこそ見せられるだろう(空調設備企業 Carrier の件や環境保護法の緩和など).それで救われるのは一握りの雇用だ.そして,世間には見えない他の雇用が失われる.だが,根本のところではなにも変わらない.たんに,いまより薄汚くて暑い地球をもたらすだけだ.そして,そんときにもラストベルトの労働者たちはあいかわらず怒っているだろう.

自分たちの苦しみは外国人のせいだとデマを吹聴するのはいつだって心地いいものだ.でも,その外国人も同じことをやる――彼らにとっての外国人がわるいと責めるだろう.その外国人にはぼくらも含まれる.

スコット・サムナー「モンティパイソンの知恵」

[Scott Sumner, “The wisdom of Monty Python,” The Money Illusion, November 8, 2016]

あんまり落ち込みなさんな:

きっとなにかしらいいところもあるはずだ:

1. まだトランプが一般投票で負けるかもしれない.

2. 反ヒスパニック系をめぐるトランプの言辞はどうかしてるといまでも思ってる.でも,何百万ものヒスパニック系があの男に投票するというんだったら,ぼくも気に病むのはやめておこう.

3. トランプは病理的な嘘つきだ.だから,「やる」といま言ってるろくでもないことを全部やるともかぎらないかもしれない.

4. 実のところ,まともな提案もほんのわずかだけれどある.たとえば,債権と債務の税制一本化みたいな提案だ.実現しそうには思わないけれど,世の中わからないものね?

5. ブロガーにとっては,これから12ヶ月以上にわたって取り上げる話題に事欠かないだろう.

ぼくが思いつくのはこれくらい.みんなはどうだろう?

〔訳者註記: 原文でこのあとに続いている追記は省略しています〕

スコット・サムナー「なぜ日銀の政策変更が(おおよそ)信頼を欠いているのか」

[Scott Sumner, “Why the BOJ policy move (mostly) lacked credibility,” The Money Illusion, September 21, 2016]

今日連銀がなにをやってなにをやらないにせよ,先日の日銀の決定はそれよりもはるかに重要になりそうだ.ただ,いまのところ,疑問を解消する以上にさらに疑問を生じさせている:

1. 日銀の公表では,10年物国債の利回りを0パーセントに抑え,かつ,2パーセントインフレ目標の超過[オーバーシュート]を試みるという.
2. 日銀は超過準備付利 (IOR) を下げたりさらなる量的緩和を行うとは公表しなかった.

今日の市場の反応は,ぼくには評価しがたい.当初の反応は明らかに好意的で,株価は2パーセント近く上がったし円はほぼ1パーセント下がった.ところが,その後,円はいったん下げた以上に上げもどした.だからといって,日銀の行動がなんの影響もなかったというわけではなく,どういう影響であるにせよ,せいぜいのところ市場の予測をほんのわずかに上回っていたというだけの話だ.
[Read more…]

スコット・サムナー 「ルーズベルト流の決心」(2010年1月5日)

●Scott Sumner, “Rooseveltian Resolve”(TheMoneyIllusion, January 05, 2010)/【訳者による付記】このエントリーはベン・バーナンキがまだFRB議長を務めていた2010年1月に書かれたものだという点にご注意ください。


まずはブラッド・デロング(Brad DeLong)とバーナンキ議長との間で交わされた有名な問答を引用することにしよう。

ブラッド・デロング(カリフォルニア大学バークレー校教授、ブロガー): どうしてFRBは3%のインフレ目標を導入せずにいるのでしょうか?1

バーナンキ議長: FRBは「物価の安定」に強くコミットしている。国民の間でそのような理解が広がればインフレ予想が大きくぶれることもなく安定することになり、そのおかげで金融政策の有効性も高まることになると期待されます。その結果として金融政策は物価の安定化だけではなく実体経済の安定化にもより効果的に貢献することが可能となるでしょう。現実に目を向けると、家計の長期的なインフレ予想にしても企業の長期的なインフレ予想にしても過去数年間にわたり極めて安定した状態を保っています。ところで、「FRBは長期的なインフレ予想を高めるような戦略に打って出るべきだ」という提案が聞かれますが、FRBはこれまでのところそのような提案には乗っていません。理論的な観点からしますと、長期的なインフレ予想が高まれば実質金利が引き下がることになり、その結果として支出が刺激され経済全体の生産量が増える可能性があります。しかしながら、そのような理論的な主張においては長期的なインフレ予想を高めようとする戦略に伴うリスクが見逃されています。「FRBはインフレが加速してもそれを鎮めようとする気がないのではないか?」。国民がそのように疑い、FRBは本気で「物価の安定」を達成する気があるのだろうかと国民から信頼されなくなってしまう可能性があるのです。そうなってしまえば将来的に金融政策の有効性が弱められることにもなりかねません。現在のところインフレ予想は錨につながれたかのようにしっかりと安定しているわけですが、この成果は過去30年にわたる長い苦労の末にやっと手に入れられたものです。インフレ予想が安定しているのは当たり前のことではないのです。FRBの具体的な行動のどれをとってもマーケットや国民とのコミュニケーションにしてもそうですが、その狙いがインフレ予想をしっかりと安定させることに向けられているのもそのためなのです。

[Read more…]

  1. 訳注;この段階ではFRBが具体的に何%のインフレ率を目標にしているのかについてはまだ明言されていなかったが、2012年1月に(PCEデフレーターで測って年率)「2%のインフレ率」を目標にすることが公けにされた。ただし、インフレ率の動きだけではなく、失業率の動きにも目を配る旨が明言されている。FRB自身はインフレ率にも失業率にもどちらにも同等に目配りをする現状の政策枠組みを「バランスのとれたアプローチ」(balanced approach)と呼んでいるが、学術的には「フレキシブル・インフレ目標」に括られることになるだろう(FRBの現議長であるジャネット・イエレンがまだ副議長だった2013年4月に行った講演を読む限りではイエレンも同様の(FRBは「フレキシブル・インフレ目標」を採用しているとの)認識のようだ)。 []

スコット・サムナー 「『流動性の罠』と『肥満の罠』」(2016年5月13日)

●Scott Sumner, “Liquidity traps and obesity traps”(TheMoneyIllusion, May 13, 2016)


しばらく前に「流動性の罠」を「肥満の罠」になぞらえた記憶があるのだが、過去エントリーを漁っても該当する記事がどうしても見つからない。それはともかく基本的なアイデアはこういうことだ。今よりも体重を減らすためには次に掲げる3つの選択肢のうちどれか一つを選ばなければいけない。そういう状態に陥っている人は「肥満の罠」に嵌っていることになる。

1. ダイエット(食事の量を減らす)

2. エクササイズ(運動)

3. 減量手術

いずれも減量につながる方法だという点では専門家の間で同意が得られている。しかしながら、ダイエットもエクササイズもかなりの自制心が必要とされる行為であり、減量手術となると費用もそれなりにかかるし痛みも伴うかもしれない。「ダイエットもエクササイズも続けられそうにないし、減量手術なんてとんでもない」。そのように考えていずれの選択肢も選ぼうとせず、その結果として体重がなかなか減らない。「肥満の罠」の出来上がりというわけだ。

専門家の間で「流動性の罠」の問題を取り除く方法として同意が得られている選択肢がいくつかある。

1. インフレ目標値の引き上げ

2. 水準目標(物価水準目標あるいは名目GDP水準目標)の導入

3. 「チャック・ノリス」アプローチ(「必要なことは何でもやる」との約束)

4. 通貨安誘導(為替レートの減価を促す)

ポール・クルーグマンのお気に入りは1番目の選択肢であり、私自身のお気に入りは2番目と3番目の選択肢だ。ところが、世の中央銀行は概してあれやこれやの理由をつけて上に掲げた4つの選択肢のどれもやりたがろうとしていない。その代わりに世の中央銀行は別の2つの手段(そこそこの効果はあるかもしれないが、目標を達成するには力不足の可能性がある手段)を頼りにしている。その2つの手段とは量的緩和とマイナス金利(準備預金に対する金利をマイナスの値に引き下げる)だ。

EconLogブログでブライアン・カプラン(Bryan Caplan)が上のリストの5番目に加わるかもしれない(もしかしたらうまくいくかもしれない)アイデアを提案しているが、おそらくFedはやりたがらないだろう。カプランの提案というのは「政府が未償還の国債をすべてコンソル債に置き換えればいい(コンソル債で借り換えればいい)」というものだ。そうなれば金利がゼロ%の下限にまで低下することは決してないだろう。というのも、金利がゼロ%に達するとコンソル債の価格が無限大になってしまうからだ。この案は確かに効果を上げるかもしれないが、中央銀行はかなり大きな価格変動リスク(保有する債券の市場価格が大幅に変動するリスク)に晒されることになる。そのために中央銀行はこの案には乗り気にならないだろう1。ちなみに2015年初頭にスイス国立銀行(スイスの中央銀行)が厳しい金融引締めに転じた理由も(保有する債券の)価格変動リスクを懸念してのことだったのだ。というわけで、カプランの提案を効果が期待できそうな方法として上のリストの5番目に加えてもいいだろうが、中央銀行が乗り気になるような選択肢とは言えないだろう。

(追記)EconLogブログに新しい記事を投稿したばかりだ。Fedの組織改革に関するヒラリー・クリントンの見解を取り上げている。あわせて参照してもらえたら幸いだ。

  1. 訳注;サムナーもコメントしているように、コンソル債の市場価格は金利が少し変化しただけでも大幅に上下する。将来的に金利が上昇し出したら中央銀行が(バランスシートの資産側で)保有しているコンソル債の価格が大幅に下落し、売りオペに使える資産が足りなくなる事態が招かれる恐れがある。中央銀行はそうなる可能性を嫌って未償還の国債をすべてコンソル債に置き換えるという措置には乗り気にならないだろう、という意味。 []

スコット・サムナー 「ギリシャの独立記念日」(2015年7月5日)

●Scott Sumner, “Independence Day for Greece!”(TheMoneyIllusion, July 5, 2015)


複雑な経済問題への条件反射的なコメントは大抵間違っているのものだが、だからといって躊躇するような性質ではない。個人的にかなりびっくりしたのだが、(EUをはじめとした債権団が要求する)財政緊縮策の受け入れの是非を問うギリシャの国民投票で「ノー」(財政緊縮策の受け入れを拒否)が今のところ圧倒的多数を占めているとの速報が伝えられている1。このこと(国民投票で「ノー」が勝利を収めること)は一体何を意味しているのだろうか?

1. ギリシャ政府がEU側の現状の要求を飲むことはあり得なくなった。EU側が要求内容を多少変更してきたとしてもギリシャ政府がそれを受け入れることはないだろう。

2. EU側が大幅に譲歩するというのは想像し難いところだ。とは言っても、どんなことでも起き得る話であり、EU側が大幅に譲歩する可能性も皆無というわけではない。EU側が大幅に譲歩するかどうかは(ギリシャの運命だけではなく)例えばスペインの(急進左派政党である)ポデモス党の運命を大きく左右することにもなるだろう2。仮にEU側がギリシャに対して大幅に譲歩したとしたら、ポデモス党がスペインの次期政権の座を奪取する可能性も出てくることだろう。その一方で、EU側がギリシャに対して大幅に譲歩することがなければ、ポデモス党は苦しい立場に追い込まれることになるだろう。ここで頭にとどめておくべきことがある。ユーロ圏の各国政府は(人質にとられた同胞を救い出すために身代金の支払要求に応じることで)ISIS(イラク・シリア・イスラム国)の重要な資金源の一つとなっているという事実がそれだ3。言うなればテロリストに対する資金協力に応じる格好になっているわけだが、そうだとするとEU側がギリシャに対して大幅に譲歩して結果的に共産主義者を(債務負担の軽減というかたちで)資金面でサポートする道を選ぶなんてことは想像し難い話だと果たして言えるだろうか?

3. ギリシャ政府は密かにユーロ圏からの離脱を企てて(望んで)いたのだろうか? これまでのギリシャ政府の奇妙な行動を説明するにはそう(ギリシャ政府は密かにユーロ圏からの離脱を企てていたと)考えるのが最も妥当なように思える。とは言っても、この点については個人的に確信があるわけではない。

4. 仮にギリシャ政府がユーロ圏からの離脱を密かに企てていたとしても、ギリシャ政府としては意に反してユーロ圏から追い出されたかのように演出したいところだろう。その一方で、仮にドイツ政府がギリシャにユーロ圏から出ていってもらいたいと密かに考えていたとしても、ドイツ政府としてはシリザ側に責任があるかのように演出したいところだろう。ギリシャ政府とドイツ政府との間で繰り広げられるそのような演技合戦はしばらく続くかもしれない。

5. 国民投票で「ノー」が勝利を収めたにもかかわらず、ギリシャがユーロ圏にとどまることはあり得るだろうか? ヨーロッパではどんなことでも起き得る話だ。「ユーロ圏から離脱する」(“leaving the euro”)ということはマクロ経済学的な観点からするとユーロとは別の計算単位(medium of account)への移行を意味するという点をおさえておくべきだろう。ギリシャ国内でユーロが計算単位として使用され続ける4限りはギリシャはマクロ経済学的にはユーロ圏にとどまっていることになるのだ。ギリシャ中央銀行がECB(欧州中央銀行)の理事会にこれまで通り参加するかどうかは関係ないのだ。「代用貨幣」(“script”)が流通し出したとしても(ユーロ建てで測った場合よりも)賃金が引き下げられない限りは労働市場の回復には大して役には立たないことだろう(ギリシャは近くにある北モンテネグロのように(「公式の」ユーロ圏の一員ではないものの)「事実上の」ユーロ圏の一員に括られることになるかもしれない5)。

6. 私なら今回の国民投票で「イエス」を投じただろうが、それはともかくギリシャ国民の幸運を祈るばかりだ。ユーロ圏から離脱することには疑いようのない便益が伴う。名目GDPの回復がそれだ。その一方で、ギリシャが今後もユーロ圏にとどまった場合には国家統制色が徐々に強まって破綻国家(failed state)への道を歩むという悪夢のシナリオが付いて回ることになる。シリザが政権の座に就いたままでユーロ圏から離脱するケースと今回の国民投票で「イエス」が勝利を収めるケースの二つを比べるとどちらが好ましいだろうか? 私の意見では、短期的には後者(国民投票で「イエス」が勝利を収めるケース)の方が好ましく、中期的には前者(シリザが政権の座に就いたままでユーロ圏から離脱するケース)の方が好ましい。そして長期的には後者(国民投票で「イエス」が勝利を収めるケース)の方が好ましいだろう(アルゼンチンの例を思い出してもらいたい)。

7. 今回の国民投票の結果を受けてユーロというプロジェクトは失敗に終わったとの感がさらに強まる可能性があるが、そのような見方が広まればイギリスがEUから脱退する可能性(Brexitの可能性)も若干ながら高まることになるだろう。

8. 国民投票で「ノー」が勝利を収めるということはギリシャがユーロ圏から離脱すること(Grexit)を意味する。ヨーロッパ各国の指導者はこれまでにそう発言してきたわけだが、(国民投票の結果が判明する)明日以降になってこれまでと違う発言をしようものなら底抜けの馬鹿(complete fools)のように見えることだろう。

ユーロ圏からの離脱が何を意味しているかについて私がこれまでに読んだ中でも最も優れた説明を以下に引用しておこう。

既にユーロを導入している国にとってはユーロ圏からの離脱は痛みの緩和を意味しないかもしれない。スペインは賃金と価格の引き下げを通じて競争力の回復に漕ぎ着けている。ユーロ圏からの離脱には長期的な成長を阻害するポピュリスト的な政策の採用を伴う可能性がある。ペンシルバニア大学のヘスス・フェルナンデス=ヴィラヴェルデ教授は次のように語る。「市場志向的なスイスのようになるつもりならユーロ圏から去るべきではない。アルゼンチンのようになるつもりならユーロ圏から去るがよい。」

仮にユーロ圏から離脱する動きがギリシャだけにとどまらずその他の国々にも広がった場合、最終的にヨーロッパは(暴力を伴わない)一種の内戦状態に陥る可能性がある。自由主義的な(ネオリベラルな)北ヨーロッパと国家統制色の濃い南ヨーロッパという対立構図が生まれる可能性があるのだ。今後20年間の世界情勢がどうなりそうかを予測するためにはそれぞれの国の文化的な特徴がその国の政府の姿に色濃く反映されるようになると想定するのが最善の方法だと言えるだろう。中国やデンマークは資本主義的な(市場志向的な・自由主義的な)傾向をますます強める一方で、アルゼンチンやギリシャは国家統制色をますます強めていくことになるだろう。

  1. 訳注;ご存知の通り、最終的に「ノー」が勝利を収めた。 ●“欧州首脳、ギリシャ残留可能か決断へ-国民投票の結果受け”(ブルームバーグ、2015年7月6日) []
  2. 訳注;EU側が大幅に譲歩することに伴う効果についてアニール・カシャップ(Anil Kashyap)も同様の指摘をしている(“A Primer on the Greek Crisis: the things you need to know from the start until now(pdf)”)。「なぜ(EUをはじめとした)債権団は(債務負担の軽減をはじめとした)ギリシャ政府の要望に同意しないのか?」(“ 8) Why do the institutions disagree with the government?”)という問いに対してカシャップは次のように答えている。
    「債権団がチプラス首相の要求に応じない理由は2つある。まず一つ目の理由――そしておそらくは最も重要な理由――は、ギリシャと同様の調整を必要とする国が他にも控えていることである。イタリアやポルトガル、スペイン、アイルランドなどがそうだが、今挙げた国々はギリシャほどには景気は落ち込んでいないものの、失業率――中でも若年層の失業率――はギリシャと同じく高止まりしたままである。仮に債権団がギリシャに対して大幅に譲歩しようものなら、イタリアをはじめとした国々もギリシャと同様の処遇を求める可能性がある。急進的な政党に政権を奪取させたギリシャ国民が報われつつあると知れば、我が国の有権者も同じような行動に出るかもしれない。イタリアをはじめとした各国の政権内部ではそのような見方が広がっている。
    ギリシャを救うために必要な資金は簡単に用意できることだろう。ギリシャの対GDPで測った公的債務残高はかなり高い水準を記録しているとは言え、ギリシャの経済規模は小さい。ヨーロッパ全体の供給能力に比べればギリシャの債務残高の水準はそれほどでもないのだ。それとは対照的に、イタリアやスペインといった国々の債務を減免するために必要とされる金銭面での負担はドイツ(をはじめとした債務の減免に伴う負担を求められる北ヨーロッパ諸国)にとっては馬鹿にならないことだろう。」 []
  3. 訳注;この点についてはサムナー自身がコメント欄で言及している記事(英語)を参照されたい。 []
  4. 訳注;国内で売買される商品の値段がユーロ建てのままであったり、資金貸借をはじめとした経済取引上の契約がユーロ建てで締結され続ける []
  5. 訳注;「事実上の」ユーロ圏の一員というのはおそらくはその国ではユーロは法定通貨ではないもののユーロが計算単位としての役割を担っているという意味だと思われる。 []

ラルス・クリステンセン 「経済危機、幸福、自殺」(2012年4月5日)/ スコット・サムナー 「ギリシャの自殺率はなぜ低く抑えられているのか?」(2012年4月29日)

●Lars Christensen, “Crisis, happiness and suicide”(The Market Monetarist, April 5, 2012)


家族旅行でデンマーク西部にあるユトランド半島まで足を運んできたのだが、旅行を終えて自宅に戻るために車を運転しているとラジオからニュースが流れてきた。そのニュースでは2つの話題が取り上げられていたのだが、その2つの話題は一見無関係なようではあるが妙なかたちでつながっていると言えなくもなかった。というのは、どちらの話題も「幸福」の問題と関わるものだったからだ。一つ目の話題は世界幸福度報告書の調べでデンマークが世界で最も幸福な国に(またもや!)選ばれたことを伝えるものだった。それとは対照的に二つ目の話題は嘆かわしいものであり、アテネにある人通りの多い広場(シンタグマ広場)で77歳のギリシャ人男性が自殺した1ことを伝えるものだった。その男性は生活苦とギリシャの深刻な経済状況を憂えて自殺に及んだらしい。

(世界中に向けて情報を発信する)国際的なメディアの報道を眺めていると、アテネで起こったこの悲しい出来事は経済危機に見舞われている南欧諸国で広く一般的に見られる傾向を象徴しているかのような印象を受けることだろう。だが、果たしてそうなのだろうか? 経済危機と幸福、そして自殺という三者の間には一体どのような関係が見られるのだろうか? 

デンマーク人(私もその一人だ)は大変幸せな日々を送っている一方で、ギリシャ人は悲嘆に暮れる日々を過ごしており自殺も絶えない。そう思われるかもしれない。しかしながら、事実はそうなってはいない。少なくともデンマークとギリシャの自殺率(人口10万人あたりの自殺者数)を比較する限りではそうなってはいない。デンマークの自殺率はギリシャの自殺率を3倍以上も上回っているのだ。世界保健機関(WHO)のデータによると、2011年度のデンマークでは人口10万人あたり11.9人が自ら命を絶っている計算になるが、ギリシャではその数字(2011年度の自殺率)は人口10万人あたり3.5人という結果になっているのだ2

興味深い事実はまだある。デンマークの自殺率はPIIGS諸国3のどこよりも高いのだ。ギリシャ以外のPIIGS諸国の自殺率(人口10万人あたりの自殺者数)の数字を順番に挙げると、ポルトガルは7.9人4、イタリアは6.3人5、アイルランドは11.8人6、スペインは7.6人7である。実際のデータに照らす限りでは大勢の人々が経済危機の影響で絶望の淵に追いやられて自殺に及んでいるとは到底言えないわけだ。(デンマークを含む)スカンジナビア諸国と比べると南欧諸国においては自殺はそれほど多くない傾向にあるのだ。

「経済危機の影響で自殺が急増している!」といった筋書きの記事をジャーナリストは書きたがるものだ。大恐慌下のアメリカで高層ビルから身を投げた人々に関するエピソードも広く流布している。しかしながら、そういった類の話は正しくないことが多い。経済危機と国ごとの自殺率との間には概して強い相関は見られないのだ。誤解しないでもらいたいが、経済危機は自殺者の数に何の影響も及ぼさないと言いたいわけではない。経済危機以外の要因の方が(その国の自殺の動向を説明する上で)ずっと重要なのではないかと言いたいのだ(スカンジナビア諸国の冬は長くて暗いという特色があるが、そのような気候条件もスカンジナビア諸国で自殺率が高いことといくらか関係しているかもしれない)。「いや、そんなことはない」と反論する人はどうしてギリシャやイタリアよりもデンマーク(世界幸福度ランキング第1位の国)やフィンランド(世界幸福度ランキング第2位の国)の方が自殺率がずっと高いのかを説明する必要があるだろう。例えば2008年以降のギリシャでは自殺者の数が増えていることは確かだが、その主たる理由を経済危機に求めるのはこじつけのように思えるのだ。

デンマークは大変幸せな国であるらしい(世界幸福度報告書の調べによるとそうらしい)のにどうしてこんなにも多くのデンマーク人が自ら命を絶っているのだろうか?8 デンマーク国民の一人として不思議でならない。あえてその理由を探るなら生存バイアスのせい9ということなのだろうか?
———————————————————————————————————————

●Scott Sumner, “The absurdity of claims of cultural superiority”(TheMoneyIllusion, April 29, 2012)


ギリシャの自殺問題をテーマに取り上げている最近の記事から少し引用しよう。

2009年に入って金融危機が国内に大混乱を引き起こすようになるまではギリシャは世界の中でも自殺率が最も低い国の一つだった。人口10万人あたりの自殺者数は2.8人に過ぎなかったのだ。しかしながら、ギリシャ保健福祉省の調べによると、2010年上半期の自殺率はそれまでと比べて40%も上昇したという。

2011年に関しては今のところはまだ信頼の置けるデータは揃っていないが、ギリシャの自殺率はそれまでよりも倍増して人口10万人あたり約5人程度まで上昇しているのではないかと語る専門家もいる。とは言え、フィンランドの自殺率(人口10万人あたり34人)やドイツの自殺率(人口10万人あたり9人)と比べるとずっと低い数値である。

・・・(中略)・・・

ギリシャの自殺率は(ここのところ上昇傾向にあるとは言え)他の国と比べると依然として低いわけだが、それはなぜなのだろうか? ギリシャは家族の結び付きが極めて強いだけではなく、表現豊かで人と人のコミュニケーションが極めて盛んな(話好きな)文化という特徴を持っているが、このことが自殺率を他の国よりも低く抑える上で重要な要因となっている可能性がある。

「ギリシャでは誰も彼もがあなたに話しかけてくることでしょう。ギリシャはそういう国です。」 アテネで精神分析医として働くシデリス氏はそう語る。「あなたが苦しんでいたら必ず誰かがその苦しみをともに分かち合い、救いの手を差し伸べてくれることでしょう。」

「ギリシャで自殺率が低いのは気候に恵まれているためだけではありません。ギリシャでは苦しんでいる人を支援するための強力な人的ネットワークが張り巡らされており、そのこともまた自殺率をこんなにも低く抑える働きをしているのです。そのようなネットワークは今も健在ではありますが、今回の危機がもたらす痛みに耐え切れないでいる人々がいるのもまた事実です。」

かつて次のような持論を語ったことがある。優れた文化だとか劣った文化だとかというものはない(異なる文化の間に優劣はない)。どの文化も異なるニーズに適応すべく独自に進化してきたのであり、異なるニーズに応じて異なる文化があるだけだ、と。ギリシャが抱える経済問題(例えば、巨額に上る税金の不払い)の背後ではギリシャの文化が何らかの役割を果たしていることは疑いないが、文化的な特性のあるもの(例えば、「結び付きが強い家族」)はある面では厄介事を招き寄せることがある一方で別の面では有用な働きをしている可能性がある。上で引用した記事はそのことを思い出させてくれている。

どうもこのことがわからない人もいるようだ。自国の文化に(自然と)魅了される一方で他国の文化を客観的な立場から「間違いだ」と断罪してしまうのだ。

  1. 訳注;このニュースについては例えば次の記事も参照のこと。 ●「アテネの広場で男性が自殺-ギリシャ経済危機で借金苦か」(ウォール・ストリート・ジャーナル日本語版、2012年4月 5日) []
  2. 訳注;WHOが推計している自殺率の最新のデータは2012年度のものだが、デンマークの2012年度の自殺率は8.8人、ギリシャの2012年度の自殺率は3.8人という結果になっている。 []
  3. 訳注;ポルトガル(Portugal)、イタリア(Italy)、アイルランド(Ireland)、ギリシャ(Greece)、スペイン(Spain)の計5カ国の総称であり、財政破綻の危機に見舞われている南欧の国という共通点を持っている。 []
  4. 訳注;2012年度は8.2人 []
  5. 訳注;2012年度は4.7人 []
  6. 訳注;2012年度は11.0人。2012年度に関してはアイルランドの方がデンマークよりも自殺率は高いということになる。 []
  7. 訳注;2012年度は5.1人 []
  8. 訳注;幸福度の高さと自殺率の高さが並存する(幸福度が高い国(地域)でありながら自殺率も高い)現象の謎の解明を意図した研究としては次の論文が有名である。 ●Daly, Mary C, Andrew J Oswald, Daniel J Wilson, and Stephen Wu (2011), “Dark contrasts: The paradox of high rates of suicide in happy places“(Journal of Economic Behavior and Organization, vol. 80(3), pp. 435-442) この論文の概要についてはhimaginary氏が過去に以下のエントリーでまとめてらっしゃるのであわせて参照されたい。 ●“幸せな場所では自殺が多い”(himaginaryの日記、2011年4月25日) []
  9. 訳注;ここでは(その名の通り)生存者だけの意見が聞き入れられる結果として幸福度の調査結果に歪みが生じているという意味。人生を幸せと感じられない人々が自ら命を絶ってしまっているとすれば、「幸せではない」という意見が調査結果に反映されることも少なくなってしまうことになる。 []