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スコット・サムナー「雑感いくつか:FRB議長の件とか,のぞましい税制とか」

[Scott Sumner, “Random thoughts,” TheMoneyIllusion, November 3, 2017]

ジェローム・パウエルについて『ワシントンポスト』に書いた.
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スコット・サムナー「英『エコノミスト』誌に投資のヒントを求めず」

[Scott Sumner, “I don’t buy the Economist for investment tips,” TheMoneyIllusion, October 31, 2017]

英『エコノミスト』誌は世界で最良の雑誌だと思っている.だからこそ,こんなにしょっちゅう引き合いにだしてるわけだ.最近,2回ほど,『エコノミスト』で信条ベースの推論の事例を見かけた.まず,最近の日本の景気回復について書かれた記事
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スコット・サムナー 「賃金にまつわるパラドックス」(2013年3月15日)

●Scott Sumner, “The wage paradox”(TheMoneyIllusion, March 15, 2013)


賃金(名目賃金)の下落は労働市場が均衡から外れている(不均衡状態に置かれている)ことを示唆するサインであり、それゆえ問題が発生している証拠であると言える。一方で、賃金(名目賃金)の下落は労働市場が再び均衡に復する(労働市場における不均衡を解消する)助けとなると考えられる。そういった意味では、賃金の下落は問題の解決を促す役割を担っていると言える。

このどちらの主張もともに弁護可能である。私が思うに、景気循環について具体的なイメージを掴むためにはこの2つの主張を同時に念頭に置いておくことが最善の方法だと言えるだろう。ところで、次の文章はつい最近のエコノミスト誌の記事からの引用である。 [Read more…]

スコット・サムナー「安倍首相のいうとおりに賃金を上げるのは日本にとっていいこと?」

[Scott Sumner, “Abe reasons from a price change,” TheMoneyIllusion, October 26, 2017]

フィナンシャルタイムズ』から:

安倍首相は,来年から賃金を3パーセント増やすよう日本企業に要請した.先週行われた衆院選での大勝を利用して日本経済をいっそう加速しようとの思惑だ.

今回,首相がこうして具体的な数字を示すことに決めたことで,民間の賃金調整に対する政府の介入はさらに深まることとなる.昨年,安倍首相はたんに少なくとも前年度と同程度の賃金引き上げを要請しただけだった.

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スコット・サムナー「ジョン・テイラーが連邦準備制度議長のよい選択肢かもしれない理由」

[Scott Sumner, “Why John Taylor might be a good choice for Fed chair,” The Money Illusion, October 16, 2017]

これまでに何度か,ケヴィン・ウォーシュの FRB議長指名に反対するポストを書いておいた.さて,ジョン・テイラーの株が上がっているという噂があちこちで出てきている:
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スコット・サムナー「2.9%!(イェレンに朗報)」

[Scott Sumner, “2.9%! (Good news for Yellen),” Money Illusion, October 6, 2017]

最新の賃金レポートはジャネット・イェレンにとってすごい朗報だ:
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スコット・サムナー「大不況はアメリカの出生率を低下させたか」

[Scott Sumner, “Did the Great Recession reduce the US birth rate?” Money Illusion, September 22, 2017]

2~3年前,「大不況でアメリカ人の出生率が低下した」というのは通説だった.ありえる話ではあるけど,その主張を支える証拠の乏しさには目を見張るものがあった.たしかに2007年から2010年のあいだに出生率は下がったけれど,誰もが知っているとおり,相関は因果関係の証明にならない.しかも,逆方向を指し示す証拠はたくさんある.出生率の数字として広く受け入れられているものはこんな具合だ:
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スコット・サムナー「賃金の伸びが遅い? 説明すべき謎なんてないよ」

[Scott Sumner, “Slow wage growth? There’s no mystery to explain,” Money Illusion, August 28, 2017]

『エコノミスト』誌から:

2007年序盤も,最近と同じくらいアメリカの失業率は低かった.当時,賃金は年率およそ 3.5% で成長していた.今日の賃金の伸びは約 2.5% だ.これに経済学者は首をかしげている.「失業率から示唆されるほど労働市場は堅調ではないのだ」と言う人たちもいれば,生産性成長が低調なのを指摘したりインフレ予想が低いのを指摘したりする人たちもいる.最新の説は,ベビーブーマー世代の退職が犯人だと説く.

ホントのところ,ここには説明すべき謎なんてない.低調な賃金成長を引き起こしているのは低調な名目 GDP 成長である,まる.一件落着.

すると,今度はもしかすると名目 GDP が謎になるかもしれない――ここ2年の名目 GDP 成長がかろうじて年率 3% を超える程度でどうして失業率がこうも低くなりうるんだろう? マイルス・キンボールから引用しよう:

ますます,各国の中央銀行はこんな状況に直面するようになってきている――彼らが見ている産出ギャップがゼロに近づいているように見えるのに,インフレ率が目標を下回っているのだ.おそらくこれは,たとえば日本・スウェーデン・アメリカに当てはまる.ユーロ圏すら,この状況にだんだん近づいてきている.ときに,ジャーナリストたちは産出ギャップゼロとあまりに低いインフレ率の組み合わせをみて,あたかもそんな状況が奇妙なものであるかのように議論する.だが,産出ギャップゼロがどの一定のインフレ率とも整合するのは多様なマクロ経済理論がそろって認めているところだ.(これは「金融の超中立性」(“monetary superneutrality“) の一側面だ.)

メディアは金融の超中立性という概念を理解するのに困っているらしい.1970年代から,経済学者たちはインフレ率と失業率に長期的なトレードオフがないことを理解している.だが,インフレ率を 1.5% から 2% に上げられるのであればさらにもっと大勢の人たちが労働力に参入するだろうと人々はいまなお考えている.そういうことはありそうにないのだが.

PS. 最近のポストで指摘したように,政治的正しさに関する世間の人たちの見解は,みんなが想定しているものとちがっているかもしれない.新しい世論調査によると,アフリカ系アメリカ人の多くが南部軍記念像〔リー将軍・ジャクソン将軍の銅像;南北戦争時代の奴隷制度支持の象徴として撤去すべきという運動とこれへの抗議があり死者がでたシャーロッツビル事件につながった〕をそのままにする方がいいと考えている.この世論調査が多少かたよったものだとしても(標本サイズが小さいので),黒人のあいだで10対1で像をそのままにしておくのに賛成する人が多数派だというのはぼくには驚きだ.また,ヒスパニック系は3対1近くで像の維持に賛成している.白人も同様だ.レインボウ連合はこんなところだろう.

「リベラルの指導者が一般庶民のリベラルを代弁している」とも,「黒人指導者が黒人コミュニティ全体を代弁している」とも想定するべきでない.

スコット・サムナー「政治的正しさはおろか者の考えだ」

[Scott Sumner, “Political correctness is a stupid idea,” Money Illusion, August 27, 2017]

数週間まえにも書いた論点だけど,この主張をうらづける実証的な証拠がでてきた.ラジブ・カーンが下記のグラフを示している.これを見ると,知能テストで高いスコアをとっている人たちの方が,不人気な言葉遣いをはるかに許容しやすいのがわかる.


【▲ ムスリムの説教師がコミュニティでアメリカ憎悪を説教するのを許容する割合を語彙テストのスコア別にみたグラフ】
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スコット・サムナー 「劉暁波と零八憲章」(2010年10月8日)

●Scott Sumner, “Congratulations to Liu Xiaobo”(TheMoneyIllusion, October 08, 2010)


劉暁波(リウ・シャオポー)に今年度(2010年度)のノーベル平和賞が授与される運びとなったが、実は私は劉暁波および(彼が中心となってその起草にあたった)零八憲章の大ファンの一人だ。零八憲章では主に政治的自由の拡大が求められているわけだが、以下の引用1をご覧いただければわかるように経済政策と関わりのある記述もいくらか目に付く。

8. 都市と農村との間における平等の確保: 現行の二元的な戸籍制度は撤廃すべきである。現行の戸籍制度は都市の居住者(都市戸籍の持ち主)に有利に働く一方で、農村の居住者(農村戸籍の持ち主)には不利に働く格好となっている。すべての国民に同等の憲法上の権利を保障して誰もが同じように居住移転の自由を享受できる制度への転換を図るべきである。

14. 私的財産の保護: 私的財産に対する所有権(私的所有権)を確立・保護し、自由で開かれた市場に基づく経済制度の発展を促すべきである。商工業の国家独占は取り止め、創業の自由を保障すべきである。立法機関(議会)に対して報告義務を負う国有財産管理委員会を設置して国営事業の民営化(国有財産の民間への委譲)が公平かつ開かれた条件の下で混乱なく進むように監視すべきである。土地の私有化を促すとともに土地を自由に売買する権利を保障するために土地改革にも乗り出すべきであり、そうすることで私的財産(土地)の価値が市場で適切に評価される(市場価格に的確に反映される)ように図るべきである。

15. 財政・税制改革: 行政府が国民に対して説明責任を負う民主的なコントロールの行き届いた財政制度を確立して納税者の権利を保障すべきである2。さらには、(租税の賦課・徴収をはじめとした)財政上の決定は(国民の代表によって構成される)立法機関(議会)が定めた法律に則って行われるべきである3。中央政府と地方政府(省、地区級市、県、鎮、郷)との間で財政運営を分担し、それぞれの政府に帰属する税収の使い道はそれぞれの政府が各自の判断で自由に決められるようにすべきである4。大規模な税制改革を通じて税率の軽減、税制の簡素化、税負担の公平性の担保を図るべきである。議会での審議や議会の同意もなしに税金が引き上げられたり新税が導入されるようなことがあってはならない。金融業への新規参入を後押しして金融機関相互間での競争を促すべきである。そのために所有権制度の改革に乗り出すべきである。

16. 社会保障制度の整備: 国民全体をカバーする公平で適切な社会保障制度を整備して教育や医療、年金、失業保険といった基本的な社会保障サービスを誰もが享受できるように図るべきである。

(追記)コメントを少々。ノーベル「平和」賞という賞自体に賛成する気はない。というのも、ノーベル平和賞は世界平和の推進ということとはほとんど何の関係もないことは明らかだからだ。劉暁波にノーベル平和賞が授与されることによって零八憲章の存在が広く知れ渡ることになる。今回の決定が持つ意味はむしろその点にこそあると言えるだろう。零八憲章は古典的自由主義の最良の部分を体現したものだというのが私なりの見立てだ。零八憲章にはエコノミスト誌に見られるようなプラグマティックな新自由主義イデオロギーが反映されているのだ。今回の決定にはおかしなところがあるかもしれないが、仮にそうであったとしても零八憲章のいい宣伝にはなるだろう。

  1. 訳注;零八憲章の英訳は複数出回っているようだが、サムナーはペリー・リンク(Perry Link)の英訳から引用している。基本的にはリンクの英訳に照らして和訳を試みたが、所々その他の英訳(例えばこちら)も参考にしつつ訳してあることを断っておく。 []
  2. 訳注;いわゆる「財政民主主義」の要求 []
  3. 訳注;いわゆる「租税法律主義」の要求 []
  4. 訳注;いわゆる「財政連邦主義」の要求 []