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タイラー・コーエン「社会保険の一形式として再分配を支持するロールズ的な論証はあるか?」

[Tyler Cowen, “Is there a Rawlsian argument for redistribution as a form of social insurance?” Marginal Revolution, September 23, 2017]

そういう論証を提示した一例がこれ (pdf).ただ,次の点に留意しておこう:
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タイラー・コーエン「今日の小ネタ:日本のオピオイド消費量」

[Tyler Cowen, “Japan (America) fact of the day,” Marginal Revolution, September 20, 2017]

(…)そこで,日本ではオピオイドの一日当たり標準消費量がどれくらいなのか考えてみよう.次に,それを2倍する.さらに2倍.またまた2倍する.そしてまた2倍.とどめに5回目の2倍.これだけやると,日本の消費量は世界2位になる.アメリカはその上の1位だ.

Vox の German Lopez 執筆記事から.

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タイラー・コーエン「ピアレビュー制度はみんなが思ってるより新しい」

[Tyler Cowen, “Peer review is younger than you think,” Marginal Revolution, September 17, 2017]

ベン・シュミットのブログによると,「ピアレビュー」という言葉が一般的になったのは1970年代になってのことにすぎない〔※グラフはグーグル ngram viewer の検索結果〕:

実際に学術誌での慣習がどうなっていったのか詳細を知りたいところだけど,ぼく個人の感覚だと,ごく最近になって外部査読者のチームによる査読が一般的になるまでは編集部による査読が基本だったと思う.たとえば,1956年に American Historical Review は投稿論文のコピーを1部しか求めていなかったし,1970年ごろまでずっとそれは変わっていなかったようだ.おそらく,編集の方で写真複写をつくってたんだと思う.どうやらシュミットの考えでは,政府による資金提供の慣行によって,大学専門職が複数査読者によるレポートを含むもっと正式なピアレビューへと背中を押されていったということらしい.

少なくとも,ピアレビューが論文掲載の値打ちがあるかどうかを決定している以上,さらに調べてみる必要があるね(すごく高齢の人たちに聞いてみるのはどうだろう?).率直に言うと,そういう調べ物は編集部による査読での方が掲載される見込みがあるんじゃないかと思う.

こちらは,まさか Twitter をやってるとは知らなかった Judy Chevalier〔イェール大学教授,金融・産業組織論〕のツイート

39ページの論文についたコメントに28ページの「査読者と編集部の疑義への返答」をやっと書き上げたところ.

それなら Judy にもう一本論文書いてもらう方がぼくはありがたいけどね.

ところで,科学論文はだんだん読みにくくなっているとの話だ.

タイラー・コーエン「というかセメントって輸出されてたのか」

[Tyler Cowen, “I find it remarkable that cement is exported at all,” Marginal Revolution, September 16, 2017]

下記は,2016年にドル換算でみたセメント輸出額上位15カ国だ:
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タイラー・コーエン「賃金大停滞のおわり?」

[Tyler Cowen, “Is the great wage stagnation over?” Marginal Revolution, September 15, 2017]

もしかするとそうかも.ただ,せめてもうしばしいい年が続いてくれるならありがたい.ノイズや遅れてきたキャッチアップ成長の部分もありそうだ.とはいえ,これまでの傾向から変化が起きているようだ:
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タイラー・コーエン 「独裁者の地位の継承にまつわる仮説」(2005年9月13日)

●Tyler Cowen, “Are autocratic successors less fierce?”(Marginal Revolution, September 13, 2005)


仮説A:独裁者の跡継ぎは先代に比べると気性が穏やかだと予想される。跡継ぎの座を狙っている気性の荒い側近(や身内)は独裁者にとって恐怖の対象となるためである1

仮説B:世襲君主制のもとでは権力欲(権力への愛)が培われることはなく、跡継ぎの面々はその座を力ずくで手に入れた初代に比べると気性が穏やかだと予想される。この仮説はゴードン・タロックによるものだ2、とはブライアン・カプランの言だ。

仮説C:独裁者の地位を巡ってその都度(独裁者が死亡してその座が空くのに伴って)熾烈な権力闘争が繰り広げられるよりは穏便な権力移譲を保障する仕組み3を通じて跡継ぎが選び出される方が好ましい4

仮説D:穏便な権力移譲を保障する仕組みを通じて選ばれる跡継ぎは気性が穏やかな傾向にあるとすると、穏便な権力移譲を続けていくことは次第に(代替わりが繰り返されるに伴って)困難になっていくものと予想される5

仮説E:何度も何度も企てられるクーデターの試みをどうにかして未然に防ぐことができれば、経済成長への道が開かれる可能性がある。

ネオ・ラオホ

ジョナサン・クリック(Jonathan Klick)による関連する論文はこちら(pdf)。独裁制から民主主義への体制転換をテーマとしたダニエル・サッター(Daniel Sutter)の論文はこちら。ネオ・ラオホ(Neo Rauch)の別の作品はこちら

  1. 訳注;独裁者が生前にその座を退いて跡継ぎを指名するとなったら自らの身の安全を守るためにも気性が穏やかな人物を後任に選ぶ可能性が高いものと予想される。跡継ぎの気性が荒いと場合によっては国外追放されたり殺害されたりするかもしれず、絶えずビクビクしながら日々(独裁者としての地位を退いた後の人生)を過ごさねばならなくなるかもしれないためである。 []
  2. 訳注;この仮説はGordon Tullock(著)『Autocracy』(この本はタロック選集第8巻の『The Social Dilemma: Of Autocracy, Revolution, Coup d’Etat, and War』にも収録されている)の中で展開されている。 []
  3. 訳注;世襲制はそのうちの一つ。 []
  4. 訳注;世襲制が(クーデターの発生を抑えることで)社会秩序の維持に対して持つ意義についてはこちらの論文(Peter Kurrild-Klitgaard, “The Constitutional Economics of Autocratic Succession”)を、(世襲制が)その国の経済成長に及ぼす影響については例えばこちら(pdf)の論文(Timothy Besley&Marta Reynal-Querol, “The Logic of Hereditary Rule: Theory and Evidence”)を参照されたい。 []
  5. 訳注;おそらくは政権転覆を狙った試みが誘発されやすくなるという意味だと思われる。気性が穏やかな人物が独裁者の地位にある場合、クーデター等が発生してもそれほど抵抗することもなくあっさりとその座を明け渡すことになるかもしれない。言い換えると、独裁者の気性が穏やかなほどクーデターが成功する(それも犠牲をそれほど伴うことなく成功する)見込みが高まり、それゆえクーデターが誘発されやすくなる可能性がある。 []

タイラー・コーエン「オピオイドと労働参加率に関するアラン・クルーガーの論文」

[Tyler Cowen, “Alan Krueger on opioids and labor force participation,” Marginal Revolution, September 7, 2017]

まだこの論文を読めてないんだけど,Brookings の要約から引用:

2017年秋の Brooking Papers on Economic Activity に掲載されたこの新しい論文では,労働参加率低下の一因としてオピオイドの蔓延に着目している.

それどころか,クルーガーの提案によれば,オピオイドの処方が1999年から2015年にかけて増加したことで,同期間に観察された男性の労働参加率の低下のおよそ20パーセント,女性の労働参加率低下の25パーセントが説明されうるという

Brookings へのリンクはこちら

タイラー・コーエン「若いアメリカ人はあまりスピリチュアルでもないみたい」

[Tyler Cowen, “Young Americans are also less spiritual,” Marginal Revolution, September 6, 2017]

アメリカの宗教に見られる潮流についてよく語れる物語では,スピリチュアリティが宗教に取って代わったという話になっている.(…)これが事実だった時期もあったかもしれない.実のところ,「i世代」は宗教的でもないしスピリチュアルでもない.「i世代」やミレニアル世代の若い方,18歳から24歳の人々は,他のどの年代/世代集団よりもじぶんを「スピリチュアルな人間」だと考えない傾向にある.20代後半から30代前半にあたるミレニアル世代の年長の人々と比べても,さらに大きくちがっている.(…)

もちろん,こうしたちがいは世代ではなく年齢によるものかもしれない.もしかすると,いつの時代も若い人たちの方があまりスピリチュアルでなかったのかもしれない.だが,2006年~2008年には,18歳から24歳の人たちのうち,じぶんを「そこそこスピリチュアル」から「とてもスピリチュアル」と回答する人たちが56パーセントだったのに比べて,2014年~2016年にはわずかながら減って48パーセントがそう回答している.

上記は,Jean M. Twenge によるすばらしい新著『i世代: つながりすぎた今日の子供たちに反抗心が薄く,もっと寛容で,あまりしあわせでない理由――そして大人になる準備が欠落している理由』から.

タイラー・コーエン「もっと宗教について読むべき理由」

[Tyler Cowen, “Why you should read more about religion,” Marginal Revolution, September 5, 2017.]

意義の半減期がとても長い宗教的事実はとてもたくさんある.4つの福音書がどうちがっているか勉強したとしようか――すると,今日のキリスト教のいろんな分派やキリスト教神学を理解するのにいまなお意義をもつ.宗教改革について読んだ場合は? 宗教改革と同時代のドイツやスイス内部の政治事情における純粋に世俗的な派閥について読んだ場合にくらべて,いまなお意義をもつ見込みがずっと大きい.
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タイラー・コーエン 「宿願達成に燃える金正日総書記」(2009年3月17日)/「改革に燃える金正恩第一書記」(2012年9月4日)

●Tyler Cowen, “A market in something, every now and then”(Marginal Revolution, March 17, 2009)


あれにもこれにも時としてマーケットができる。今回は北朝鮮版だ。そのマーケットとは・・・「ピザ」のマーケットだ。

ついにである。北朝鮮が総書記の宿願であるプロジェクトに乗り出すに足るだけのテクニックをついに体得したのだ。10年近くを要した一大事業である。「本格的な」ピザを提供する同国初のイタリアンレストランがこのたび開店に漕ぎ着けたのだ。

金正日(キム・ジョンイル)総書記の指示によりコックの一団がイタリアのナポリやローマに派遣されたのは昨年(2008年)のこと。本場でピザ作りの正しいテクニックを学ばせるためである。それまでにもピザの模倣に向けた努力は地道に続けられてはいた。しかしながら、金総書記によって「国産」のピザには「間違ったところ」があるとの判定が下され、本場での修業が必要ということになったのであった。

1990年代後半に遡るが、金総書記の指示によってイタリアからピザ職人の一団が北朝鮮国内に招かれたこともある。部下の将校らにピザの作り方を伝授してもらうためである。北朝鮮ではピザはぜいたく品の一つ。国内で暮らす2400万人の多くが食うに困る状態に置かれている中、ピザを堪能できるのは一部のエリート層だけ。

国内では食糧不足が続いているものの、いつでも「完璧なピザ」が作れるように取り計らうために本場のイタリアから小麦や小麦粉、バター、チーズ(いずれも高品質)といった(ピザを作るために必要となる)材料が買い付けられているという。

東京に本社を置く朝鮮新報がこのたび平壌(ピョンヤン)で開店したばかりのイタリアンレストランの支配人に取材したところ、金総書記が語った言葉を引用するかたちで次のようなコメントを口にしたという。「我が人民も世界的に有名な料理を楽しめるようにすべきだ」。

同じく朝鮮新報によると――同紙は共産主義体制(たる北朝鮮当局)の意見を代弁する機関紙としばしば見なされているが――、件のイタリアンレストランは昨年の12月に開店して以来大人気を博しているという。

同紙はレストランを訪れた女性のコメントとして次のような言葉も報じている。「ピザやスパゲッティが世界的に有名な料理だということはかねてよりテレビや本を通じて知ってはいましたが、実際に食べてみたのは今回が初めてでした。独特な味がしますね」。

「首都(の平壌)で本格的なイタリア料理が味わえるようにしたい」との金総書記の長年の夢が叶えられたとのニュースが届く中、北朝鮮当局は「ロケットの発射実験を行うぞ」との脅し――そのロケットはアメリカ本土を射程に収める能力を備えているのではないかとアメリカ国内では信じられている――を続けている。

この話題に気付くきっかけをくれたLeonard Monasterioに感謝する。

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●Tyler Cowen, “What counts as progress in North Korea”(Marginal Revolution, September 4, 2012)


(父である金正日の後継者であり)新たな国家指導者である金正恩(キム・ジョンウン)第一書記が躊躇なく現状批判を行う様を目にして驚いたと語るアナリストもいる。そのような姿が特に顕著に見られたのは金第一書記が部下を引き連れて4ヶ月前に国内の遊園地を視察した時のことだ。

北朝鮮の国営メディアでは「北朝鮮=社会主義の楽園」として描かれる決まりになっているが、金第一書記が遊園地を視察した時の報道は一味違った。金第一書記が遊園地を巡回しながらその惨状に不平を漏らす様を包み隠さず報じたのだ。(遊具の)塗料のはがれ、亀裂の入った舗道、あちこちに生える雑草。金第一書記の目に飛び込んでくる荒廃した遊園地の姿。国営メディアの報道によると、金第一書記は「イライラした顔つき」で近くの雑草を次々に引き抜いていったという。

どうしてこんな有様になるまで放っておいたのか。「時代遅れでイデオロギーに縛られた」考え方が招いた結果なんじゃないのか。金第一書記は視察の最中にそのように部下をたしなめていたという。さらに、金第一書記は遊園地の改修工事を監視する責任者をその場で任命したという。

視察が終わってから2週間後に国営メディアが伝えた続報によると、「朝鮮人民軍は問題の遊園地を近代的なレクリエーション施設として蘇らせるべく全精力を注いでいる最中」ということだ。

全文はこちら(この記事では北朝鮮で進行中の農業改革のあらましも取り上げられている)。