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タイラー・コーエン 「インセンティブの力 ~民間の航空保安職員 vs. 運輸保安庁の職員~」(2010年12月31日)

●Tyler Cowen, “Incentives vs. the TSA”(Marginal Revolution, December 31, 2010)


サンフランシスコ国際空港で働く民間の保安職員にとって春と言えばあの季節だ。賞金(最高で1500ドル)の獲得を目指して同僚を相手に「マーチ・マッドネス」張りのトーナメントでしのぎを削る季節。

「ゲーム」の内容は? 乗客の手荷物の中に違法な品物や爆発物が潜んでいないか発見する。(スーツケースなどの)荷物の鍵がなかなか開かなくて困っている乗客を救う(鍵を開ける)。監視カメラに映る大勢の乗客の中からテロリスト役(今回の訓練ではCAS社の社長であるジェラルド・ベリー(Gerald L. Berry)が直々にその役を務めた)を見つけ出す。

「賞金(ボーナス)は結構な額になります」とベリー社長。「我々一同は保安職員として立派でなきゃいけません。運輸保安庁で働く方々(連邦政府職員)と同等かそれ以上に立派でなければなりません。そのために日々一生懸命努力していますし、社員にやる気を持ってもらうためにインセンティブも与えています」。

どういうわけだか今まで知りもしなければ、そんなことが可能だと思いもしなかった事実もついでに引用しておくとしよう。

米国内の大空港の中には煩わしい手荷物検査に対する国民の怒りの声に応じようとする動きも見られるようだ。運輸保安庁(TSA)の代わりにCAS社のような民間の警備会社に空港の保安検査業務をお任せしようかと検討しているところが出てきているのだ。サンフランシスコ国際空港やカンザスシティ国際空港をはじめとして米国内の16の空港は既に(2002年以降に)民間の警備会社に保安検査業務を任せている。

全文はこちら

タイラー・コーエン「移民問題に関して大事なポイント」

[Tyler Cowen, “A few simple points about immigration,” Marginal Revolution, January 15, 2018]

我ながらくどいとは思うんだけど、こういうことが相変わらず無視されている:
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タイラー・コーエン「合法大麻はメキシコからのドラッグ密輸を減らす?」

[Tyler Cowen, “Is Legal Pot Crippling Mexican Drug Trafficking Organisations?” Marginal Revolution, January 15, 2018]

どうやらそうらしい。サブタイトルは「医療用マリファナ法がアメリカの犯罪に及ぼす影響」で、著者は Evelina Gavrilova, Takuma Kamada, Floris Zoutmanの3名。Economic Journal に掲載されている。アブストラクトは下記のとおり:

本稿では、医療用マリファナ法 (MMLs) の導入がメキシコ国境付近の州で暴力犯罪が減少することにつながったことを示す。犯罪がもっとも減少したのは国境に近い州(350キロ以内)で、もっとも減少した犯罪はドラッグ密輸に関連した犯罪だった。これに加え、内陸部の州では MMLs が州境にもっとも近い場所で犯罪の減少につながっている。本稿の研究結果は、「マリファナの生産・流通を合法化すると、メキシコのドラッグ密輸組織が伝統的に支配する市場において暴力犯罪が減少する」という説と整合する。

論文へのリンクはこちら。以前のバージョンはこちら。紹介してくれた Peter Metrinko に感謝。ところで、Kevin Lewis には、〔合法マリファナの影響で〕高校卒業率が下がっているのを教えてもらった。

タイラー・コーエン 「何もしないでいるよりは『無益な忙しさ』に身を任せる方がマシ?」(2010年7月22日)

●Tyler Cowen, “Is “futile busyness” good for us?”(Marginal Revolution, July 22, 2010)


残念ながら大抵の人は自ら進んで「無益な忙しさ」に身を任せようとはしないだろうと件の研究チームは語る。そこで政府なり組織なりがパターナリスティックな(温情主義的な)立場から介入する余地が生まれることになる。何らかの無益な活動機会を作り出して無理矢理忙しくさせる(暇を潰させる)わけだ。論文の一部を引用しよう。「お手伝いさんを手持ち無沙汰にさせておく代わりに何の必要もないのにネズミを家の中に招き入れてその始末をさせる。その方が(何もしないでいるよりも)お手伝いさんも高い満足を覚えるかもしれない。政府が公共事業を通じて何もすることがない市民に何の役にも立たない橋を作る仕事を与える。その方が(何もしないでいるよりも)その市民の満足度は高まるかもしれない」。件の研究チームによるとそのような介入の実例が既に存在するという。空港の中には手荷物受取所までの道のりをわざと長くする(お客を無駄に長く歩かせる)ことでお客が手荷物の到着を手持ち無沙汰で待たねばならない時間を短くしているところがあるというのだ。

全文はこちら

タイラー・コーエン 「くしゃみが生み出す無限大の『時間の無駄』?」(2008年4月10日)

●Tyler Cowen, “The infinitely bad sneeze”(Marginal Revolution, April 10, 2008)


Zackが次のような意見を書き送ってきた。

あなたは空港にいて今まさに(保安検査場にある)セキュリティゲートを通過しようとしている。そう考えてください。ちょうどその時です。くしゃみが出てしまい、ゲートを通過するのが2秒遅れてしまいました。いや、「2秒の遅れ」を被るのはあなた一人だけじゃありません。「2秒の遅れ」はあなたの後ろに並んでいる「みんな」にもこれから列に並ぶ「みんな」にも降りかかることになります。セキュリティゲートに並ぶ列が途切れることがないと想定すると――大きな空港なんかだと午前3時になっても列が途切れることはないものです――、「あなたのくしゃみ」が生み出す「時間の無駄」は(「みんな」の分を足し合わせると)無限大ということになるでしょう。

セキュリティゲートに並ぶ列もいつかは(午前4時には?)途切れるのでくしゃみが生み出す「時間の無駄」が無限大になることはないと思われるが、Zackが言うように無限大の無駄(損失)が生み出される状況というのは考え得るだろうか? 仮にそのような状況があり得るとしたら無限大の無駄(損失)を回避するためにあなたが負うべき義務は何だろうか? (くしゃみをしないために)鼻を切り落とすべき? この問題に哲学的な観点から切り込むのであればこちらの論争からヒントを得られるかもしれない。

タイラー・コーエン 「空港での当てっこゲーム」(2006年12月2日)

●Tyler Cowen, “Silly guessing games”(Marginal Revolution, December 2, 2006)


この中に地元の人間はどのくらいいるだろう? 空港に集う旅行客の群れを眺めながらそんなことを考えるのが好きだったりする。飛行機を乗り降りする旅行客の多くが地元の人間によって占められている空港があるとしよう。その空港がある都市というのは一体どんな特徴を備えているだろうか? 

例えば、都市の規模が小さいとどうだろうか? 小都市にある空港はそこに集う旅行客の中に地元の人間が占める割合が高い傾向にあるだろうか? 小都市だと人口が少ないので空港に押し寄せる地元の人間の数も少なくなるが、その一方で例えば飛行機に乗って(ノースカロライナ州にある)グリーンズボロにやって来るニューヨーク在住の人間の数はそう多くはないだろう。

空港に集う旅行客の中に占める地元の人間の割合の多寡を左右する要因はいくつか考えられるだろう。その空港がある都市の住人が旅行好きかどうか、その空港がある都市が旅行先としてどれだけの魅力を備えているか、その空港がハブ空港としての機能を備えているかどうか。

シカゴにアトランタ、そしてデンバーにある空港には地元以外の人間がたくさん集っているに違いないと容易に予想がつく。それではその反対に(飛行機を乗り降りする旅行客の中に占める)地元の人間の割合が高い空港を持つ(アメリカ国内の)都市というのはどこになるだろうか? 旅行に飢えている住人が暮らす退屈な都市で観光スポットもこれといってなければハブ機能も備えていない都市。ミネアポリスとか?

タイラー・コーエン 「ライバルの数が多いほど競争心は萎える?」(2009年1月5日)

●Tyler Cowen, “Do we compete more against fewer competitors?”(Marginal Revolution, January 5, 2009)


こんな記事が目に留まった。

たくさんの競争相手(ライバル)で埋まった教室(試験会場)でテストを受けねばならなかった。そんな体験をお持ちのようならこれから紹介する研究結果に共感してもらえるかもしれない。争わねばならないライバルの数が多いほど、あなたのやる気も競争心も萎えてしまう可能性があるらしいのだ。心理学のとある論文でそのようなパターンが観察されている。それも様々な状況下で同様の結果が確認されているのだ。標準テストが実施される教室(試験会場)が混雑しているほどテストの平均点が低くなる傾向にあるだけではない。「これから出題する簡単な一般常識テストをできるだけ早く解いてください。早く解けた順の上位20%に入れば賞金が出ます」。学生にそう伝えた上で「テストを受ける人の数はあなた以外に全部で100人います」と言い添える場合と「テストを受ける人の数はあなた以外に全部で10人います」と言い添える場合とでは後者(テストを受ける人の数はあなた以外に全部で10人います」と言い添える場合)の方が学生が問題を解き終えるスピードも早くなる。「かけっこで上位10%に入れば賞金1000ドルを差し上げます」。学生にそう伝えた上で「かけっこに参加する人の数はあなた以外に全部で500人います」と言い添える場合と「かけっこに参加する人の数はあなた以外に全部で50人います」と言い添える場合とでは学生のやる気も違ってくる。後者(「かけっこに参加する人の数はあなた以外に全部で50人います」と言い添える場合)の方が「力を出して走る気だ」という答えが返ってくる傾向が強いのだ。学生に架空の就職面接やFacebookでの友達集めコンテストに参加してもらい、「勝者」になるには上位20%に入る必要があると伝える1。その場合、競争相手が多くなりそうだと予想されると学生の対抗意識も薄まる傾向にある。ライバルの数が多いと競争心が萎えてしまうのはライバルの数が多いほど自他の比較が難しくなるからではないか2と件の研究を手掛けた心理学者チームは結論付けている。

上の引用箇所で紹介されている論文はこちらだ。具体的なコンテキスト(文脈)の違いに応じて最終的な結果にも違いが出てくる可能性があることには注意しておくべきだろう。上で引用した記事では社会科学の分野の興味深い研究成果が他にも色々取り上げられている。例えば、犬には癒し効果がある(飼い主をリラックスさせてくれる)とかいう話(私は特段驚きはしなかったけれど)も紹介されている。

(追記)「見えざる競争(見えざる相手との競争)」をテーマにした拙記事はこちら

  1. 訳注;架空の就職面接の場合は面接を受けた志望者のうち20%が内定をもらえると伝え、Facebookでの友達集めコンテストの場合は集めた友達の数が多い順の上位20%に入れば賞金がもらえると伝える。 []
  2. 訳注;自分と比較すべき候補の数が多くて具体的に(自分との比較対象として)誰に目を付けていいか絞りきれない、という意味。 []

タイラー・コーエン 「ご先祖様効果 ~ご先祖様に思いを馳せて自信をつけてから試験に臨もう~」(2010年12月22日)

●Tyler Cowen, “Is there an ancestor effect?”(Marginal Revolution, December 22, 2010)


まずはじめの実験では総勢80名の大学生が3つのグループに分けられた。第一のグループには15世紀に生きた遠い祖先について5分間だけ思いを馳せてもらう。第二のグループには近い祖先である曽祖父母(ひいおじいちゃん、ひいおばあちゃん)について5分間だけ思いを馳せてもらう。そして第三のグループには最近した買い物について5分間だけ思い出してもらう。その後でそれぞれのグループの学生に将来の試験について自信の程を聞いたところ、祖先について思いを馳せた二つのグループ(第一のグループと第二のグループ)の学生は最近した買い物について想起したグループ(第三のグループ)の学生よりも強気な(近々ある試験でいい点数が取れるに違いないと自信を持って答える)傾向にあったという。ご先祖様のように自分も人生を己の力でコントロールできるはずだ。祖先について思いを馳せることでそのような感覚が強まったことがどうやら要因の一つとなっているようだ1

同論文ではその他にも3つの実験が試みられているが、祖先(遠い祖先と近い祖先)について思いを馳せたり祖先について知っていることを書き出すように求められた学生はそのようなことを求められていないコントロールグループの学生に比べて実際にも(語彙力や空間認識能力などを測る)知能テストで高い点数をたたき出す傾向にあったとのことだ(3つの実験のうちの一つの実験では遠い祖先について思いを馳せた学生グループのテストの点数の平均点は(16点満点中で)14点、コントロールグループの学生の点数の平均点は(16点満点中で)10点という結果になっている)。祖先について思いを馳せた学生は一つでも多く問題を解こうという気になり――論文では突撃志向(’promotion orientation’)の高まりと表現されている――、そのことが「ご先祖様効果」を生み出す要因の一つとなっているようだ。

全文はこちら。同様の結果が再現可能かどうか、実験の設定の違いによって結果に違いが生まれるかどうかを検証してもらいたいところだが、興味深い研究結果ではある。

  1. 訳注;この点について論文の執筆者は次のように語っている。「我々の祖先は数多くの問題――プライベートな問題だけではなく深刻な病気の流行や戦争、最愛の人の死、景気の急激な悪化といった社会的な問題――をどうにか潜り抜けてきています。祖先について思いを馳せると、人間(それも自分と似た遺伝子を持つ人間)には数々の問題や逆境をどうにか乗り越えられるだけの力が備わっているんだということに思いが至るわけです」。 []

タイラー・コーエン 「『裁定機会』に魅せられて ~ただ飯なんてものはない~」(2014年7月7日)/「『裁定機会』に魅せられて ~私人による量的緩和は許すまじ~」(2011年4月6日)

●Tyler Cowen, “German leberkas meatloaf and sweet sausages with mustard arbitrage”(Marginal Revolution, July 7, 2014)


ミュンヘン空港にあるルフトハンザドイツ航空のラウンジでは飛行機への搭乗を待つビジネスクラスの乗客に無料でごちそうを振る舞うサービスが提供されているが、そのサービスを利用して1年間にわたり35回もただ飯にありついた男が現れた。それも一度も飛行機に搭乗することなく。

その男は1年間有効なチューリッヒ行きの片道チケットを購入。チェックインした後にラウンジで好きなだけ飲み食いすると予約を変更(その日の搭乗をキャンセル)。1年間にわたり何度も同様のことを繰り返し、結局一度も飛行機には搭乗しなかった。ミュンヘン地方裁判所の判決文によると、ルフトハンザドイツ航空はチケットの有効期限が過ぎると新たにチケットを買い替えることを条件にチケット代を払い戻しており、その男にも同様にチケット代を払い戻したという。

ミュンヘン地方裁判所は無料で食事を提供するラウンジのサービスはあくまでも飛行機への搭乗を前提としていると判断、その男に飲み食いの代金として1980ユーロ(2705ドル;およそ30万円)を支払うよう命じた。1980ユーロということはチケットの代金(744.46ユーロ)の倍以上であり、食事1回あたりに換算するとおよそ55ユーロの支払いという計算になる。その男はチケット代が払い戻されると再びただ飯にありつこうとして新たにチケットを買い替えたが、ルフトハンザドイツ航空も黙ってはいなかった。その男を裁判所に訴えたのである。

ビジネスクラスの乗客には搭乗前にプレミアラウンジや会議室、シャワーなどを自由に利用できる特典が用意されているのが一般的だが、予定が変わった場合にはチケットの予約の変更にも柔軟に応じてくれるケースが多い。ミュンヘン空港にあるルフトハンザドイツ航空の(ビジネスクラスの乗客だけが利用できる)ラウンジでは(バイエルン産の)レーベンブロイ(生ビール)に加えて郷土料理のレバーケーゼ(ドイツ風ミートローフ)やスイートマスタード付きのソーセージなどが無料で振る舞われている。

全文はこちら。情報を寄せてくれたHugo Lindgrenに感謝。ところで、「レバーケーゼ」の綴りって色々あるんだね。

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タイラー・コーエン「『見て見ぬフリ:日常生活の隠れた動機』――この知見で地位が上がる人と下がる人は?」

[Tyler Cowen, “*Elephant in the Brain* — what is really going on in this book?” Marginal Revolution, January 11, 2018]

ちょっと前に,ケヴィン・シムラーと共著で『見て見ぬフリ』(未翻訳)を書いたロビンといっしょにランチを食べていたとき,こんな質問をした.「あの本が出たことで,地位が上がってほしい人とか下がって欲しい人って誰かいる?」 地位が上がって欲しい人については,同書のエピグラムが答えになると言って,引用してくれた:
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