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スコット・サムナー「なぜオーストラリアは26年間不況を経験していないのか」

[Scott Sumner,”Why Australia hasn’t had a recession in 26 years,” The Money Illusion, July 18th, 2017]

 

過去の投稿において、私は、オーストラリアは名目GDPを適切に成長させ続けることによって26年間不況を回避してきたことを指摘した。コメント者の中には、オーストラリアは金融政策ではなく、むしろ鉱業ブームによって恩恵を受けている“ラッキーな国”である、と示唆するものもいた。その理論は意味をなさない。なぜなら経済が非常に不安定な商品の輸出に輸出している場合、大規模かつ高度に多様化した経済を伴った国に比べてより不安定なビジネスサイクルになるだろうからである。いずれにせよ、近年のデータは完全にその説を棄却している。

ステファン・キッチナーは、かつてオーストラリア準備銀行の役人であったウォーウィック・マッキビンの見解について議論している非常に興味深い記事に私を導いた。

元オーストラリア準備銀行役員のウォーウィック・マッキンビンは、世界の中央銀行は、家計や政府の巨額の債務負担が安全に解消されるよう、名目所得の伸びを目標とする公的金利のシステムに切り替えるべきだと述べている。

“インフレーションは、価格の期待を縛り、中央銀行が資産を引き下げないという自信を人々に与えたため、良い中間段階になった”と、彼は水曜日のシドニーでの主要な経済会議で語るだろう。

1970年代や80年代、それに90年代の初期と同様に、“高いインフレ率の時にはそれが重要なのだ。”

“しかし、本当に成長とインフレーションである非常に明示的な所得ターゲットがあるなら、同じ信用度をもつことができる”、と彼は言う。

彼は、オーストラリアでは、そのことは、準備銀行は名目GDP——本質的には、どのくらいその経済がその経済の生産した財やサービスに支払われているかの尺度——の成長を約6%に保とうと試みようとしていることを意味すると示唆している。

オーストラリアは人口増加率が1.4%であるので、オーストラリアの名目GDPの成長率がアメリカ(人口増加率=0.7%)や日本(人口減少中)の名目GDPの成長率より高いのは不思議ではない。それにもかかわらず、私は、6%は少し高いので、オーストラリアには5%にいくぶんか近い成長率を勧めたい。一方で、6%でさえ2008年以降連邦銀行や欧州中央銀行、日本銀行によって実施されている一連の政策に比べればはるかに良いだろう。

オーストラリア国立大学クロフォード校出身のマッキビン教授は、公式の2%から3%のインフレターゲットは“サイクル全体”にしか適用されないので、実際に準備銀行はすでに“曖昧な名目の”所得ターゲットを追求している、と認める。

このことは、オーストラリアは大恐慌[1]の間、隠れて名目GDP目標を行っている国であったと示唆してきた様々な市場のマネタリストの主張を裏づけしている。

私は、日本のような国にとって名目所得ターゲットの最大の利点は、それが公的債務の負担を減じうるということであると主張した。マッキビンは同様の議論を行っている。

”高い公的および私的な所得に占める負債の割合の持続可能性は過去以上に高い名目所得の成長を必要とするので、今後数十年にわたって問題になるであろうことは、名目所得の成長であろう。”

興味深いことには、6%のターゲットでさえいますぐに金融引き締めが必要なように思われることである。

彼の提唱した所得ターゲットのスキームによれば、1.5%というこんにちの準備銀行のキャッシュレートは、第一四半期に前の3か月に比べて名目GDPが2.3%上昇したことと、1年前に比べて7.7%上昇したことを考慮すればおそらく低すぎる。“現在、中央銀行は名目所得基準による緩やかな金融政策を取っているだろうし、名目所得の伸びが急速に高まっているため、このルールに従って政策を強化することを期待している。”

待ってほしい。それが正しいはずはない。私の批判者は、オーストラリアは鉱業ブームから恩恵を受けている単にラッキーな国だった述べている。いまや鉱業開発が衰退しつつあるのだから、うまくいっているはずがない。それとも私が何か間違っているのだろうか?

エコノミスト誌は賢い国がいかにして再分配を扱って斜陽化する部門からはずすかを説明している。

鉱業ブームがしりすぼみになると、準備銀行はベンチマークの“キャッシュ”レートを2011年の4.75%から1.5%に下げた。オーストラリアドルは急速に下落した(6年前のピーク時には1.10ドルだったのに対し、現在では0.76ドルの価値である)。安い通貨と低い利子率によって、より高齢化が進んでいてより人口の多いニューサウスウェールズ州とヴィクトリア州は経済が賑わった。不動産開発業者はより多くの家を建てる、農家はより多くの食糧を輸出し、外国人(留学生と観光客の両方)がより訪れた。たとえば、オーストラリアは昨年、過去最高となる120万人の中国人を迎え入れた。

再配分が不況を引き起こすのではなく、金融引き締めが引き起こすのだ。

かつて、私はオーストラリアは名目GDPよりむしろ被雇用者の合計の補償を目標にしたい可能性があると主張した。それはなぜなら、労働市場に大きな影響を与えることなく鉱物の輸出価格の変動は名目GDPにおける大幅な変動を生じうるからである。過去12か月、被雇用者への保障は1.4%しか増えなかったが、これは名目GDPの7.7%の上昇をはるかに下回る。この類の不一致はアメリカにおいては見られない。それゆえに恐らくオーストラリアは金融引き締めを必要としないのだろう。)

 

追伸 デーヴィッド・ベックワースがNGDPと政策立案者の直面している知識の問題についての新しいポリシーペーパーを書いている。いつもどおり、デーヴィッドはいくつかの良いグラフィックを用いている。

[1]本文では“the Great recession”と表記されている。もちろんこれは1929年に端を発する大恐慌のことではなく、2008年のリーマンショックに端を発する不況のことである。

アレックス・タバロック「バーナンキVSフリードマン」

Alex Tabarrok “Bernanke v. Friedman” (MarginalRevolution, July 15, 2014)


ミルトン・フリードマンは、大恐慌が起こったのは銀行制度の崩壊によりマネーストックの減少と貨幣速度の減速が起こり、それが大規模な総需要の不足を招き、かつそれにFEDが対策をとらなかったからだと主張した。彼のアンナ・シュワルツとの共著の題名、「合衆国貨幣史」は的を射たものだ。ベン・バーナンキもまた、銀行制度の危機を大恐慌の筋書きの中心に据えているが、その伝播の仕組みは大きく異なっている。バーナンキによると、銀行制度の危機は信用の崩壊を招いた。大恐慌研究に関する彼の貢献もまた、「大恐慌の伝播における金融危機の非貨幣的影響」という的を射た題名となっている。 [Read more…]

ローレンス・ボール「大不況による長期的被害」

Laurence Ball “The Great Recession’s long-term damage“(VOX, 1 July 2014)

教科書的なマクロ経済理論によれば産出量は不況の後には潜在的な水準に戻るはずだということが示唆されるのに対し、深刻な不況は産出量に対しかなりの継続的影響を与えるという山のような証拠がある。本稿では、大不況によってもたらされた長期的な被害の測定について報告する。サンプル中のほとんどの国において、潜在産出量の損失は平均して8.4%であり、実際の産出量の損失とほぼ同じ大きさとなっている。不況による被害が最も酷かった国においては、今日の潜在産出量の成長率は2008年以前のそれよりもずっと低い。 [Read more…]

ニック・ロウ「マクロ経済論議:需要不足VS不確実性ってほんと?」

Nick Rowe “Insufficient Demand vs?? Uncertainty” (Worthwhile Canadian Initiative, July 04, 2014)

(訳者補足:本エントリは、先に訳したジョン・コクランの記事と、それへのノア・スミスの反応に対するもの。)


これは間違った二分法だ。以下では、ささっとノア・スミスジョン・コクランへの反応を書いてみよう。

ジョン・次のように言ってる。「ジョン・テイラー、スタンフォード大学のニック・ブルーム、シカゴ・ブース大学のスティーブ・デーヴィスは、勘に頼った政策によってもたらされた不確実性のせいだと考えている。大統領の次の一筆や司法当局による魔女狩りによって全ての努力が水の泡にされてしまう可能性があるのであれば、誰が雇用や貸出、投資をしたいなどとおもうだろうか。エド・プレスコットは、歪みの大きな税や差し出がましい規制を強調している。シカゴ大学のカーシー・マリガンは、社会保障政策による意図せざるディスインセンティブを解析している。そしてその他色々。これらの問題が不況を引き起こした訳ではない。だがこれらは今や悪化しており、回復を妨げ成長を遅くしている。」

オーケー。政治的不確実性の増大が「雇用や貸出、投資」をする意志の減少を引き起こしたと仮定してみよう。これは妥当なように僕には見える。ただ力の向きは正しいけれど、その大きさは分からない。 [Read more…]

ノア・スミス「マクロ経済論議:不況と回復についてのコクランの考え」

Noah Smith “Cochrane’s thoughts on the recession and recovery” (Noahpinion, July 03, 2014)

(訳者補足:本記事は、先日訳したジョン・コクランの記事に対するノア・スミスの反応。本件についてはこのほか、ニック・ロウの反応ノア・スミスの別の反応も後日投稿予定。)


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ジョン・コクランがウォール・ストリート・ジャーナルの論説で今回の不況の原因について議論している。この論説は基本的にはケインジアン、ニューケインジアン、そして回復の鈍さが「需要」の関数だと考えているあらゆる人に対する批判となっている。

マクロ経済学者の違いが先鋭化するのは、不況後の景気の低迷の原因とそれを治す可能性があるのはどの政策かということについてだ。それは大まかに言えば、景気の低迷は金融刺激や財政刺激によって解決できる「需要」不足なのか、あるいは刺激策では解決できない歯車の中の砂粒のような構造的なものなのかということだ。

「需要」側は当初、ニューケインジアンのマクロ経済学モデルを引合いに出していた。(中略)しかしニューケインジアンモデルを厳密に見てみると、この診断と政策予測は脆弱なものに映る。(中略)こうした問題は認識されており、ブラウン大学のガウティ・エガートソンやネイル・メフロトラをはじめとした研究者たちは今やこれらを解決するためにモデルをいじくるのに懸命になっている。(中略)

別の見方では、「需要」不足が問題となっているのではもはやない。(中略)それでは一体問題はどこにあるのだろうか。ジョン・テイラー、スタンフォード大学のニック・ブルーム、シカゴ・ブース大学のスティーブ・デーヴィスは、勘に頼った政策によってもたらされた不確実性のせいだと考えている。大統領の次の一筆や司法当局による魔女狩りによって全ての努力が水の泡にされてしまう可能性があるのであれば、誰が雇用や貸出、投資をしたいなどとおもうだろうか。エド・プレスコットは、歪みの大きな税や差し出がましい規制を強調している。シカゴ大学のカーシー・マリガンは、社会保障政策による意図せざるディスインセンティブを解析している。そしてその他色々。これらの問題が不況を引き起こした訳ではない。だがこれらは今や悪化しており、回復を妨げ成長を遅くしている。

こうした考え方は、唯一の原因は需要であって簡単な魔法の弾丸のような政策によって解決できるというものよりも大分セクシーさに欠ける。

なぜみんなは不況を理解するにあたって「需要」が鍵になると考えるのだろうか。「需要側」の解決策が簡単、あるいは単一原因説が「セクシー」であるからだけじゃないと僕は思う。僕が思うに、これは価格に関係しているんだ。 [Read more…]

ジョン・コクラン「マクロ経済論議」

John Cochrane “Macro debates” (The Grumpy Economist, July 2, 2014)

(訳者補足:この記事に対しては、デヴィッド・グラスナーノア・スミスニック・ロウなどが反応している。後二者については別途時間が許せば訳す予定)


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以下はウォール・ストリート・ジャーナルに掲載された私の論説だ。下敷きとなっているのはニュー・ケインジアンの流動性の罠という論文なので、ニュー・ケインジアンモデルに関する主張についてもっと知りたい人はそちらを見てほしい。

ウォール・ストリート・ジャーナルはグラフをいらないと言ったのだが、グラフは要点をうまく説明してくれると思う。

というわけで以下が本文となる(いくつか削除した部分を戻したのと、タイポの修正を行った)。 [Read more…]