経済学101は主に皆様の寄付によって賄われています。温かい支援をお待ちしています

アレックス・タバロック「あらゆるワクチン接種カードに宝くじをつけよう」(2021年5月24日)

[Alex Tabarrok, “Staple a Lottery Ticket to Every Vaccination Card,” Marginal Revolution, May 24, 2021]

このところしばらく,ワクチン接種カードに宝くじ券をつけるのをぼくは推してる.だから,オハイオ州がワクチン接種宝くじを導入したのを皮切りに,ニューヨーク,メリーランド,オレゴンも続いたのはいいことだと思ってる.さらに,このプログラムはうまく機能してるようだ.『ワシントンポスト』の Philip Bump がこう述べている:

DeWine による発表のあと,オハイオ州では初回ワクチン接種を受けた人の7日間平均が増加し,その後も日曜まで増え続けている.全米でのワクチン接種人数が横ばいを続けているなかで増加している点は特筆すべきだろう.このことから,オハイオ州での傾向は他のなにかが原動力になっているのがうかがえる.また,ワクチン接種を完了する人の数は下がってきている点も指摘すべきだろう.この点を見ても,増えたのはワクチン接種を新たに希望する人たちだという証拠は強まる.(2~3週間後に,ワクチン接種を完了する人々が増えているかどうか確かめてみたいところだ.)


〔※左側は初回接種,右側は接種完了.図中でタテに引かれている点線は宝くじが公表された日を示す.〕

悲しいことに,オハイオ州にこのプログラムをやめさせる法案を新たに通そうとしている政治家たちも一部にいる.そこで,宝くじプログラムがうまく機能すると予想される理由をあらためてまとめておいた方がよさそうだ.大半の人たちが最初に思いつくのは,行動科学的・心理学的な説明だ.ワクチン接種で大事なのは,すぐに生じるコストと,将来の便益だ.ここで,すぐに生じるコストよりも将来の便益を優先して行動するのは難しい.双曲線割引ってやつだ.ここに無料のビール券やドーナツ券や宝くじを付け加えると,すぐに便益が生じるおかげで,すぐに生じるコストが相殺される.こうして,ワクチン接種が促進されるわけだ.とくに,すごく現在指向な人たちには有効だ.とはいえ,値段は同じくらいでも,ドーナツに比べて宝くじの便益は小さいと予想されるかもしれない点に注意しよう.なぜなら,ドーナツはまぎれもなくすぐさま味わえるのに対して,宝くじはそうもいかないからだ.他方で,稀に生じる副作用を過大評価した恐怖からワクチン接種をためらっているのだとしたら,もしかすると,宝くじで稀に生じる将来便益の過大評価でそれが相殺されるかもしれない.

でも,リスクに中立的な合理的モデルですら,公共財を宝くじに結びつけるすぐれた理由がある.たとえば,チャリティでは宝くじや番号くじを利用して公共財の資金をつのる.なんで? 理由は,宝くじはタダ乗りに対抗する中立的な手段だってところにある.想像してみよう.とある公共財があればみんな得をするのに,みんなして他人の貢献にタダ乗りしたがっているせいで誰ひとりとして貢献しないでいるとしよう.その結果,その公共財は提供されない.そこに,一定額が当たる宝くじを導入する.他の誰も貢献しなければ,確実に自分が当選できる.そのため,みんながタダ乗りする均衡が生じない(公共財産出のためにぼくが考えた “dominant assurance contract” に似てる).ただし,当選番号に一致した人が当たりになる普通の宝くじでは,このモデルでの宝くじの役に立たない点に注意しよう.このモデルでは,参加者数 N のうち1人だけが当たりになる当選確率 1/N の番号くじでないといけない.そのため,無料の宝くじを配布するだけのニューヨーク方式に比べて,ワクチン接種した人たちのなかから当選者を選び出すオハイオ州とメリーランド州のワクチン宝くじの方がずっとすぐれている.それで,オハイオ州とメリーランド州の方式の方がニューヨーク方式よりも成功を収めるだろうとぼくは予想してる.

Morgan 論文を教えてくれた Casey Mulligan に多謝.


コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください