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アレックス・タバロック「マスクが足りない? 市場にまかせよう」(2020年3月23日)

[Alex Tabarrok, “Let the Markets Work,” Marginal Revolution, March 23, 2020]

多くの人が大統領は「国防生産法」(Defense Productions Act; DPA) を用いるべきだって言っているけれど、現実には、国防生産法はとりたてて有用でもないし必要不可欠でもない。各種の市場はすでに急速かつ洗練されたかたちでリソースの再配分を行なっている。品物の不足は、その大部分が一時的な需要の増加によるものだ。いま、店頭の棚にはふたたび品物が揃いつつある。食品は潤沢にある。手指の消毒剤と手洗い用石鹸は、店頭まで届けられつつあるか、すでに並べられている。トイレットペーパーが品切れになることはない。CDC と FDA が認可したことで、検査キットは増産中だ。

ハニーウェルと3Mは、すでに N95 マスクの製造を増強している。中国と調整して、さらに購入量を増やすべきだ。連邦政府は、ヘインズのような企業から医療用マスクを購入することで有用な役割を果たしている。皮肉にも、医療用マスクはラテンアメリカから輸入することになるようだ。

ウィンストン=サイレム・ジャーナル: 同社スポークスマンによれば、同社は1週間以内に製造を開始する契約の交渉を連邦政府と進めている。

アメリカ製コットンを使用することで、マスクはエルサルヴァドール・ホンジュラス・ドミニカ共和国にあるヘインズブランドの縫製工場で製造中だ。

こうした工場は、平時にはTシャツ・下着・靴下・スウェットパンツ・スウェットシャツを製造している。

(アメリカ製コットンを使用するという馬鹿げた要求を盛り込んでいるのに注目)

タイラーとぼくが『現代経済学の原理』で書いているように、価格は、インセンティブにくるまれたシグナルだ。統制経済と価格システムを比べてみるといい。いまぼくらは人工呼吸器を必要としている。連邦政府は、人工呼吸器をあつかってる企業に命令して、もっとたくさんつくらせることもできるけれど、言われるまでもなく企業はすでにそうしている。政府は他の企業に命令して、人工呼吸器の事業に参入させることもできるけれど、どの企業がそれにふさわしい技術をもちあわせていて、どの企業が低コストで(他の分野に不足や混乱をもたらさずに)人工呼吸器製造に転用するのにふさわしい技術を有しているのか、連邦政府はうまく把握しているんだろうか? 何百万もの起業家たちが価格シグナルに反応する分散化されたプロセスよりも、連邦政府がうまくやれるだろうか? できないよね。

「便乗値上げ」についてひとこと言っておこう。便乗値上げには2種類ある。ひとつは、いま注目されている方で、需要が高まっているのに製造業者や小売業者が価格を一定に据え置いているとき、目端の利くやつが在庫を買って真の市場価格で売り始めるのがこれにあたる。チケット転売モデルだ。「チケット転売」にはよい特徴があって、ぼくなら違法にはしない。でも、大きな問題点がひとつある――転売で高くなった価格の利益が製造者に入らないんだ。製造業者や小売業者が自分で価格を上げる方がよいだろう。転売屋は一掃され、しかも価格上昇による利益は製造者にはいるから、生産を拡大するのにリソースを回すインセンティブが彼らに生じる。でも、チケット転売については、あんまり心配しない方がいい。なぜなら、一時的だからだ。典型的に、事態はこんな具合になる――製造業者と小売業者は短期間にわたって価格を低いまま維持して消費者の反感を買うのを避け、そのうち産出が増加し、その後、価格は上がるけれど、供給は増えているから品不足になってた時期ほどの値上がり圧力はない。これもうまくいく。ようするに、ここでとても大事なのは、真の希少性を反映して製造業者が価格を上げて、リソースが正しい方向に流れることだ。ここまでのところ、ぼくらはそうしていて、システムはうまく機能している。

トラックがそろって前線から逃亡しているときには、軍隊は車両を接収して逆向きに走らせられないと困る。民間のインセンティブと社会のインセンティブは必ずしも合致するとはかぎらない。時間と確実性が最重要な場面だったら、〔市場の価格システムより〕統制の方がすぐれているかもしれない。(タイラーとぼくが『現代経済学の原理』の外部性に関する章で書いているように)。でも、大部分において、いまぼくらが身を置いている状況はそういうものとはちがう。民間のインセンティブがそろって生産拡充の正しい方向に物事を推し進めている。市場が反応するのにまかせよう。連邦政府は統制経済をうまくやれないけれど、助けを必要とする人たちのための再分配で果たすべき役割が政府にはある。

アメリカのすぐれた強みは、脱集権化と市場だ。そしていま、ぼくらはこの強みを必要としている。


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