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アレックス・タバロック「初歩の経済学,ドラッグ戦争,アフガニスタン」(2021年8月31日)

[Alex Tabarrok, “Econ 101, the Drug War, and Afghanistan,” Marginal Revolution,  August 31, 2021]

ヘロイン生産の経済事情と外交政策に関する自分の研究を要約したすぐれた文章を Jeffrey Clemens が書いている:

ユーラシアのヘロイン密輸業者たちの視点から見れば,中所得~高所得の消費者たちにまで届けるコストに比べて,原材料となるケシのコストが占める割合は小さい.コストの大半は,密輸そのものに関連する出費とリスクが押し上げている――買収・資金洗浄・文書偽造をはじめ,当局の目をかいくぐる試みが失敗したときには暴力に訴えるためのコストも必要となる.そのため,アフガニスタンの農家が生産するケシを求める密輸業者の需要は,非弾力的となっている.つまり,農家が要求する対価が大きく変化したところで,密輸業者が入手するのに選ぶケシの量には,そう大きな影響は及ばない.このため,ケシ栽培を減らそうとする政府の各種対策は,生産量よりも価格の方により大きな影響をもたらした――密輸業者の需要に応えて生産される量は減らされないまま,政府によってケシの価格が押し上げられた.

ケシ生産の総量は減らなかったが,その一方で重要な変化が起きた.案の定,政府の統治がもっとも行き届いている州から政府が掌握に苦心している州へと,ケシ生産地が移ったのだ.これをもたらした要因は,ターゲティングと国家の統治能力の単純な問題だ.各種の禁止令が実施できるのは,国家が統治している領土にかぎられる.そのため,ケシ生産を抑圧する対策を行うと,歴史的にタリバンが弱かった州でケシ栽培が減少した.麻薬対策の政府支出が増える前,ケシ栽培は国内全土の行政区に広く見られた.だが,2000年代後半までに,タリバンに支配された南西部の州にケシ栽培は集中していった.なかでもケシ栽培が盛んなのはヘルマンド州で,ケシ栽培に利用されている農地の半分がここにある.

このように,対ヘロイン戦争はケシ栽培を減少させるのに失敗したばかりか,タリバンの勢力を強化させてしまった.ここから引き出される一般的な教訓は,次のとおり:

ある政策が人々の生計に関わっているとき,政府がその忠誠を頼りにしている人々を政府から遠ざけてしまうスクをその政策は冒すことになる.国家の統治能力が弱いとき,こうした政策を実施するのは賢明でないことが多い.そして,ほかでもなく政府の権威に対立する人々,政府に抵抗する手段を有している人々こそが,〔政策で禁止されたモノを売買する〕違法市場で栄える傾向にある.このため,そうした市場をつくりだすことで,各種の禁止政策は政府に敵対する集団を富み栄えさせる経済環境をつくりだしうる.コロンビア政府・ドラッグカルテル・それに関連した準軍事集団の紛争でも,同様の力学がはたらいている.コロンビアでは,合衆国による支援はコカイン生産を抑制する対策と歴史的につながっている.

(…)このように,各種の経済的な禁止は,政府に対立する集団を富ませるという意図せざる帰結をともなうことがある.国家が弱体なとき,経済的な制限の強制は控えるか,せめて重視せずにいるべきだ.各種の禁止を実行する能力は,より協力で安定した体制にのみ許される贅沢品なのだ.

この文章と,そのもとになっている研究は学部教育にうってつけの教材になる.単純な経済の原則でどれほど世界が理解できるかがわかるからだ.

追記: 上記の最後で述べられている弱体国家と経済制限の強制の自重に関する論点については,「時期尚早な模倣」について Shruti Rajagopalan が書いた文章も参照.


写真のクレジット: “Poppy Field (Chollerford)” by wazimu0 is licensed with CC BY 2.0. このライセンス証はこちらを参照 https://creativecommons.org/licenses/by/2.0/


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