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アレックス・タバロック「労働者たちが機会を求めて移動しなくなっている」

[Alex Tabarrok, “Not Moving to Opportunity,” Marginal Revolution, March 19, 2016]

【州をまたいだ移住】
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アメリカでは,労働市場の流動性〔人々の動きやすさ〕が低下している.州をまたいだ移住は下がっている(下記のグラフは Molloy, Smith, Trezzi and Wozniak から引用).州内部での移住も同様だ.とくに,あまり教育を受けていない人々で下がっている.かつては,ショックが発生すると機会を求めて人々は移動したものだったが,いまでは現状にとどまったままで早期に退職したり就業不能保険を受けとったりする傾向が強い.『ウォールストリートジャーナル』の Ben Leubsdorf が証拠をいくらか検討している

「ある州で悪いショックが発生すると,たいてい,その後に正常にもどる.その理由は,雇用が回復するからではなくて,労働者たちがその州を出て行くからだ」と経済学者のオリバー・ブランシャールとローレンス・カッツが1992年の論文で述べている (pdf).

現在は,いくつかの点でちがっているかもしれない.3名の経済学者が,昨年,全米経済研究所のワーキングペーパーでこう書いている――景気後退以前の時期とくらべて,2007年以後の大量レイオフは〔解雇された人たちによる〕「沈黙の」移住という対応を後押ししたが,そのかわりに多くの労働者は労働力から退出していった,というのだ.

同じく Leubsdorf が引用している新しい論文で,バークレーの Danny Yagan はこう主張している――移住が減少しているのは問題の一部にすぎない.2008年-2009年景気後退の余波があそこまでひどくなったのは,かつてなく移住が必要となっていたまさにそのときに移住が少なくなっていたためだ.2008年-2009年の景気後退は,とくに地域が限定されていて,打撃の大きい地域とそれほどでない地域がわかれたし,しかもその状態は長く続きそうに思われた.だが,移住は低調なままにとどまり,問題の解決にはいたらなかった.

通説では,流出と流入の移住によって,全米での賃金や失業率・就業率は等しくなると考える.景気後退の打撃が大きい地域と小さい地域がわかれることはあっても,人々が移動するために,まもなくアメリカはひとつの労働市場となる.だが,今回の景気後退では就業率にそれが起きていない.類似した教育・技能をもち同じ大企業で同じ仕事をやっているが勤務地域が異なる従業員たちに着目するという冴えた調査設計を使って Yagan が発見したのは,景気後退から数年後もあいかわらず地域のちがいがものを言っているということだ.2007年-2009年の景気後退でもっとも打撃をうけた地域で働いていた労働者たちと,そこまで打撃を受けなかった地域にいた労働者たちを比べると,前者の方が就業率が 1% 低い.〔労働市場の地域差がうまる〕収束は異例なまでに遅れている:

結論として,打撃の大きかった地域に暮らしていたことで,〔その人たちが〕職に就けない状態が長引き,格差は悪化した.最近の収束の速度がこのまま続けば,全米での就業状況の相違が正常に戻るのは2020年代のことになると推定される――大不況から10年以上もかかる計算だ.


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