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アレックス・タバロック「妊娠が増えれば犯罪も減る?」(2019年11月22日)

[Alex Tabarrok, “More Pregnancy, Less Crime,” Marginal Revolution, November 22, 2019]

こと犯罪に関しては,経済学者はもっぱら抑止に関心を集中させる.抑止は機能するけれど,機能するのは抑止に限られない.質が良い初等教育や,認知行動療法などの心理学的な介入でも犯罪は減るし,街灯を改善したりといった単純なことでも犯罪は減る.社会学の研究では,犯罪は制約の問題であると同時に選好の問題でもあることを強調する.たとえば,結婚や出産など人生の帰路になる大きな出来事は犯罪に関わる選好を大きく変えうる.すぐれた新論文「家族形成と犯罪」で,マキシム・マセンコフイヴァン・ローズ(2人ともバークレー出身の雇用市場研究者)は,こうした知見を大規模データセットで実証している.

マセンコフとローズの論文には説得力がある.その大きな理由は,その調査結果のほぼすべてが無加工データやごく単純な分析からあまりにも明瞭なところにある.たとえば,女性の犯罪率(薬物,飲酒運転,経済犯罪・器物損壊)を見てみると,妊娠以前・妊娠中(赤い点線ではさまれた時期)・出産後の時期でこんな風になっている.妊娠中に犯罪率は劇的に下がって,妊娠前にくらべて出産後3年間は平均で50パーセント低くなっている.

妊娠すると女性は身体的にできないことがいくらか増えるものの,〔犯罪率低下の〕効果は男性でも非常に大きく,パートナー妊娠中に犯罪率は 25~30% 低下し,その後も数年にわたってそのまま低く推移する.ここで留意してほしいのが,ヘランドとぼくがスリーストライク法について書いた論文の発見だ.服役期間が20年増える(!)という見込みがあるときにも,再犯率はだいたい 17% くらいしか減らない.つまり,妊娠がもたらす効果は,びっくりするほど大きいわけだ.

ここから政策のありかたについて導ける帰結は,すぐには思い浮かばない.〔10代くらいの〕もっと若い時期に子供を産むのは,そんなに正しそうではない.でも,マセンコフとローズは10代の出産に関する分析で,10代の妊娠がもたらすコストがどうであれ,その妊娠カップルの犯罪率は低下するという便益があってコストを相殺すると示している.でも,もっと一般的に言えば,すぐに生じる結果をこえて考えるなら,政策への帰結はある.第一に,こうした結果からは,犯罪はたんなる出身家庭の背景や貧困やネグレクトの産物につきないのがわかる.犯罪は,選択なんだ.

最善を尽くして:インナーシティで父親であること』(Doing the Best I Can: Fatherhood in the Inner City) で,エディンとネルソンはこんな逸話を引いている(マセンコフとローズから孫引き):

「連れ」の女性が身ごもったと聞くと,バイロンその他の男たちはすぐさま一変した.それまでパートタイムでタクシー運転手をやりながらヤクの売人もやっていた男性は,ほぼすぐさま,清掃部署で市内の仕事を確保した.(p.36)

バイロンは変わることを選んだ.それも,将来の出来事を見越した合理的予想にもとづいての選択だ.マセンコフとローズは,こうした選択がありふれていることを示している.

こうした結果は妊娠と結婚の問題なのだと考えるのではなく,人々の犯罪を減らさせる妊娠と結婚の問題なのだと考えるべきだろうか? 愛情・責任・長期的思考がすべて作用している.経済の観点で見ると,妊娠は割引率を下げて,人的資本に投資して将来のために働く理由を男女にもたらす.子供と結婚は,男女両方を社会化し「文明化」するのに大きな役割を果たしてる.でも,関わっている要因は子供と結婚だけに尽きるはずがない.実際,平均で見ると,男性も女性も妊娠で劇的に犯罪率を下げるものの,そんなに下がるの,もともと犯罪率が高い男女の犯罪率低下による部分が大半をしめる――もともと犯罪率が低くて妊娠でそんなに犯罪率が下がらない男女もおおぜいいる.見方によっては,この〔犯罪率がもともと高かった〕男女は社会化以前だったのだとも考えれる.そうすると,妊娠によって生じる便益を妊娠の予想にまで敷衍するにはどうすればいいんだろうか,あるいは,同じく文明化しうる他の要因にまでこの効果を広げるにはどうすればいいんだろうか?


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