アレックス・タバロック「連邦犯罪者になる方法」(2019年6月20日)

[Alex Tabarrok, “How to Become a Federal Criminal,” Marginal Revolution, June 20, 2019]

秀逸な Twitter フィード @CrimeADay を流してるマイク・チェイズが,イラスト入りのハンドブックを出した.題名は『連邦犯罪者になる方法』だ (How to Become a Federal Criminal).実のところ,このハンドブックを読まなくても,連邦犯罪者になるのはすごくかんたんだったりする.
これはご存じの読者もいるんじゃないかな.合衆国から海外に出たり海外から合衆国に入ってくるときに現金 10,000ドルを所持している場合,その旨を報告する義務がある.たとえば,ちょいと中古車のお買い物にカナダ国境を越えると,連邦政府がキミの現金を没収してしまうかもしれないわけだよ(毎年,没収される金額は数百万ドルにも及んでいる).これも知ってるかな? 合衆国から国外に出て行くとき,5セント硬貨を1ドル以上持ち出してはいけないんだよ.これをやると連邦犯罪で,最高で禁固5年をくらってしまう.あと,国立公園に金属探知機を持ち込むと禁固6ヶ月の罰を受けるのは知ってた? さらに,金属探知機でなにか100年以上古いものを見つけると禁固1年だったりする.他に国立公園で違法なこと? 馬とすれちがうときに変な身振りをするのは違法だ.

生活のありとあらゆるところにまで連邦刑法が拡張されてるのは,笑いのネタにもできるけど,同時に,もっと暗い側面もある.

連邦政府は,信じられないほど強力なツールも持ち合わせている.連邦政府は,キミの銀行口座記録の開示を命令したり,電話での通話を聴取したり,起訴陪審っていうヒミツの手続きでキミを起訴できる.しかも,キミが嘘をついていると彼らが考えた場合,それだけを理由にキミを訴えられる.さらに,たった1件であっても陪審がキミを有罪だと判断すると,それまでまったく起訴されたことのなかった件でも陪審は法定限度までの刑をキミに科せられる.それどころか,別の機会に陪審が無罪判決した件であっても,同様の処置がとれる.おそらくキミがやっただろうと陪審が判断しさえすればそうなってしまうんだ.
(強調は引用者によるもの).

さらに,誰かが犯罪で訴えられたとき,刑法の適用は裁量に任される.この裁量を利用して,他のさまざまな権利の自由な行使を抑圧することも可能だ.実際,近年の最高裁のニーヴズ v. バートレット裁判によって,たとえ逮捕理由が合法な行動に対する報復措置〔参考〕であっても警察が人々を逮捕するのは以前よりかんたんになっている.

スレート』: 合衆国憲法の修正第1項〔言論の自由〕により,相手の言論を嫌っているのを理由にして政府の職員が誰かに報復措置をとるのは違憲行為になっている.一方,連邦法では,言論の自由などの憲法で規定された権利を政府職員が侵害したときには彼らを訴えて補償を求める権利が認められている.だが,この火曜に連邦最高裁は新しい法律をつくりだした.この法律では,気に食わない言論に対する報復として,法的責任を負うことなく警官が人々を逮捕できるようになっている.

(…)〔連邦政府ではなく州政府などの〕地域の法律には小さな違反の規定が満載だ.たとえば「徘徊」がそういう違反で,これを利用すれば,気に食わない言論を行っている人々を逮捕する口実を警察はつくれてしまうし,現にしばしばそうやって逮捕している.デモ参加者や報道写真家,さらには公衆に開かれた場で言論の自由を行使したがっているどんな人々に対しても,こうした悪用を免責することでニーヴズ判決は破壊的な影響を及ぼしてしまうかもしれない.たとえば,警察を撮影する権利や,職員の不正行為を言葉で非難する権利が,これでひどく抑圧されてしまうかもしれない.人々を逮捕する権力は,言論を抑圧する強力な道具だ.なぜなら,かりにそうした訴えがあとで却下されたとしても,逮捕された人は,長所をとられたり牢屋に入れられたりする苦しみを――さらには危険も――味わわねばならなくなるからだ.さらに,将来,就職活動するときや住居をかりようとするときに,この逮捕歴とそれについて回るもろもろの事情を開示しないといけなくなるかもしれない.

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