アレックス・タバロック「電気を大切にね:道徳的説得 vs. 価格インセンティブ」

[Alex Tabarrok, “Moral Suasion vs. Price Incentives for Conservation,” Marginal Revolution, April 9, 2015]

カリフォルニアの渇水[参考]が取りざたされるなか,伊藤・依田・田中がちょうど時宜を得た論文を出している.電力管理の手法2つを比較した論文だ.著者たちは,日本の691家計を3つのグループに割り振った――

a) 道徳的説得グループ
b) 経済的インセンティブグループ
c) 対照グループ

道徳的説得グループには,「ピーク需要の日には電気の節約が重要かつ必要」と告げ,それから1年にわたってピークに達する前日と当日に「どうかピーク時の電力消費を節約してください」というメッセージが送信された.経済的インセンティブ・グループには「特定のピーク期間には電力価格が高くなる」と告げ,それから1年にわたってピークに達する前日と当日に価格が高くなるというメッセージが送信された.価格はピーク時におよそ2~4倍となった.対照グループにはスマートメーターを設置したものの,メッセージは送信されなかった.

道徳的説得は機能したものの,経済的インセンティブにはまったく及ばなかった(図は使用量の折れ線が低いほどよいことを示している).

Electricity12

それどころか,著者たちが議論しているように,この図は経済的インセンティブで得られた分を大幅に過小評価している.というのも,道徳的説得が機能したのは対象期間のごく初期だけで,それから次第に効果をなくしていったからだ.経済的インセンティブは対象期間を通して機能し続けた.さらに,そうやってインセンティブに反応し続けたがゆえに,人々は節約週間をつくりあげていった.これにより,経済的インセンティブ・グループは対象期間外でさらに節約し,実験終了後にもこれを継続した.

多謝:John Whitehead at Environmental Economics.
追記:以前に渇水を取り上げたエントリはこちら

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