経済学101は主に皆様の寄付によって賄われています。温かい支援をお待ちしています

アレックス・タバロック 「政府の関与無き市場の実状」

●Alex Tabarrok, “Society without a State”(Marginal Revolution, December 2, 2003)


政府によって所有権が保護されない状態で市場は一体どの程度スムーズに機能する(あるいは機能しない)のだろうか? そのあたりの事情を知りたければ「犯罪市場」の実状を詳しく理解するに限る。つい最近のWired(ワイアード)の記事でコンピューターに詳しいマフィアであるらしい匿名の著者が貴重な情報を語ってくれている。

・・・借金を返せなければ、「コワいお兄さん達」に脚の骨を献上しなければいけない(脚の骨を折られる)とかいう噂がまことしやかにささやかれているようだが、それは誤解だ。そういった話はテレビではよく見るが、実際にはそんなことは決してあり得ない。ボディガードを引き連れて借金の取り立てに向かうことはあるかもしれないが、こちとら何万ドルもの現金を持ち運びしている身だ。ガタイがいい連中を付き従えたくもなるってものだ。お客さんの脚を折るなんて割に合わない話だ。無一文で借金を返せないお客さんを痛めつけたところで預金口座にお金が振り込まれるわけでもない。ただし、「痛い目に遭うぞ」と脅すことは有効な抑止力とはなる。「借金を踏み倒したらどうなるかわかってるよね? ・・・脚貰うから」と脅しておけば、実際にその脅しを実行する必要はないわけだ。まあ、そう脅しても借金が返ってこない場合もあるわけだが、その場合はこちらで返済プランを用意してやる。それでもうまくいかないようなら、「このお客とは取引しない方がいい。リスクが高い相手だ」と言いふらすまでだ。そのお客さんのアングラ経済(地下経済)における信用情報に傷が付くってわけだ。

驚きの情報は続く。

違法賭博のビジネスは信頼の上に成り立っていると言える。こちら側とお客さんとの間に信頼関係がなければうまく成り立たない信用取引みたいなものだ。賭けに勝てばちゃんと賞金が支払われるとお客さんは信頼して疑わないし、サツにチクる(警察に通報する)ような奴なんかいないとみんな信頼しきってるんだ。

どうやらこの「違法賭博市場」はかなりうまく機能しているようだ。しかしながら、同じ「犯罪市場」でも「違法ドラッグ市場」のようなケースでは協調や信頼の欠片も見られずに恐ろしいまでの暴力が蔓延っている。「違法ドラッグ市場」は無政府資本主義ではなく(混沌という意味での)アナーキーと形容するにふさわしい状態にあるのだ。どうしてこうも違うのだろうか? この問題についてはこれまでにそれほど突っ込んでは分析されてきてはいないと思われるが、おそらく重要なポイントは次の点にあるだろう。「違法賭博市場」では利害が一致する面が大きい買い手と売り手との関係が中心となる一方で、「違法ドラッグ市場」では利害が対立しがちな売り手同士の関係(ライバル関係)が中心となる。売り手と顧客との関係に比べると売り手同士の関係の方が律するのが厄介であり、それだけ政府の関与が必要とされる度合いも高いということなのかもしれない(おやおや。無政府資本主義者の理想の一つ――民間の防衛・警備会社同士の競争を通じた治安サービスの提供――に疑問を呈する格好となってしまったようだ)。


コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください