アレックス・タバロック 「経済学者も『機会費用』のことがよくわかっていない!?」(2005年9月2日)

●Alex Tabarrok, “Opportunity Cost”(Marginal Revolution, September 2, 2005)


ロバート・フランク(Robert Frank)がニューヨーク・タイムズ紙に論説――“The Opportunity Cost of Economics Education”――を寄稿している。本業である経済学について経済学者がどれだけ正確な知識を備えているかを調査した研究が取り上げられているのだが、読後にしばし頭を抱え込まざるを得なかった。

ジョージア州立大学に籍を置くポール・フェラロ(Paul J. Ferraro)&ローラ・テイラー(Laura O. Taylor)の二人が、2005年に開催されたアメリカ経済学会(AEA)の年次総会で、およそ200名の経済学者――そのうちの多くは、一流大学でPh.D(博士号)を取得している――に次のようなシンプルな質問を投げ掛けた。

エリック・クラプトンのコンサートのフリーチケット(無料招待券)が手に入ったと考えてください(ただし、そのチケットは転売できないものとします)。クラプトンのコンサートが行われるのとまったく同じ時間帯に、別の場所でボブ・ディランもコンサートを行う予定になっています。あなたにとって、ディランのコンサートに行くことは、クラプトンのコンサートに行くことの次に(2番目に)ベストな選択だとします。ディランのコンサートチケットの値段は40ドルです。あなたは、ディランのコンサートを観るためなら最大50ドルまで支払ってもいいと考えているとしましょう――ディランのコンサートがいつ行われようとも、最大50ドルまで支払う気があるという点に変わりはないものとします――。どちらのコンサートに足を運ぶのであれ、他にコストは一切かからないものとします。さて、これまでに与えられた情報に照らして、クラプトンのコンサートに行くことの機会費用はいくらになるでしょうか? 次の4つの選択肢の中から、正しいと思うものを選んでください。

(a) 0ドル, (b) 10ドル, (c) 40ドル, (d) 50ドル

調査対象となった経済学者のうち、78%が間違った選択肢を選んだ(誤答した)という。いやはや、信じ難い話だね。特段難しい問題でもないし、引っ掛け問題というわけでもない。「機会費用」と言えば、経済学の分野で中心的な概念の一つだ。質問に回答した面々は、世界の中でも選りすぐりの経済学者たち。彼らの大半は、経済学入門の講義を受け持った経験もあることだろう。それにもかかわらず、正しい答えが(4つの選択肢の中で)一番人気がなかったというのだ [1] … Continue reading

プロがこんなんじゃあ、素人のみんなも困惑しちゃうだろうね。

あなたも上の問題を解いてみて、「世界の中でも選りすぐりの経済学者たち」と知恵比べしてみるといい。正しい答えは、エントリーの一番最後で説明するとしよう。ところで、経済学をきちんと学びたいとお考えのようなら、是非ともジョージ・メイソン大学 [2] 訳注;タバロックも勤めている大学にお越しあれ。ジョージ・メイソン大学で経済学を教えている教授連は、機会費用について――「稀少性」だとか、「インセンティブ」だとかについても――ちゃんと理解してるはずだから。

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正しい答えは、(b) の10ドル。あなたにとって、クラプトンのコンサートに行くことに次いでベストな選択は、ディランのコンサートに行くこと。ディランのコンサートに行くことで得られる便益は50ドルであり、ディランのコンサートに行くために要するコストは40ドル。差し引きすると、10ドル。「ディランのコンサートに行く」という選択は、あなたにとって、10ドルの純便益(=便益-コスト)を備える選択ということになる。この10ドルの純便益こそが、クラプトンのコンサートに行くことであきらめざるを得ない価値――すなわち、機会費用――なのだ。

References

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1 訳注;正しい選択肢を選んだ人の割合が一番低かったということ。ちなみに、それぞれの選択肢を選んだ人の割合は以下の通り。(a)と回答した人の割合;25.1%、(b)と回答した人の割合;21.6%、(c)と回答した人の割合;25.6%、(d)と回答した人の割合;27.6%
2 訳注;タバロックも勤めている大学
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