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スコット・サムナー「名目 GDP を伸ばせば企業は財とサービスをまた提供し始める」(2020年4月9日)

[Scott Sumner, “Build the NGDP and businesses will come with the goods and services,” TheMoneyIllusion, April 9, 2020]

今回の景気後退は,〔金融危機後の〕大不況よりもさらに悪いものになるかもしれない.だが,おそらく,必ずそうなるわけではない:

#1. この景気後退は大不況よりも深いものになるのは確実だ.それどころか,おそらくすでにそうなっている.だが,より深いからといってより悪いとはかぎらない.

#2. 医学的状況がぼくの予想よりもはるかに悪いものとなった場合には,景気後退は大不況よりも悪いものにならないといけないのかもしれない〔経済活動をさらに控える必要が生じるため〕.

#3. だが,医学的状況がだいたいぼくの世道どおりになった場合には,2020年の後半には経済が成長して,2022年に完全雇用にいたることもありうる.

どうして〔断定せずに〕「ありうる」と言ってるかというと,これが金融政策しだいだからだ.

ぼくの考えでは,5月に症例数が急減するというのが,いちばんありそうな医学的な結果だ.また,就労者が着用する〔マスクその他の〕個人防護具改善とライフスタイルの変化は長く続くだろう.これにより,(全部ではないけれど)一部の企業は再開できるようになる.次に,2021年のどこかの時点で,ワクチンか医薬品ができるか,または個人防護具の大幅改善がなされる見込みが大きい.この楽観的なシナリオが正しいかどうか自信はないけれど,問題を解決せねばという圧力がこれほど巨大なら,なにか見つかるんじゃないかと思う.というわけで,確率は 50% 以上だと思ってる.

このポストの目的は,べつにコロナウイルスについてぼくのしょうもない予想を述べることではなくて,メディアで見かける誤解をとりあげることだ.繰り返し出てくる話に,こういうのがある――「いまの医学的な危機が終わった後に経済が回復するのは困難だ.なぜって,あちこちの企業が破産してしまってるから.」 ナンセンスだね.

なにか問題が発生して経済が影響を受けても,その後に爆発的な急速回復がなされる事例なんて,アメリカ経済史にいくらでもあう.(1933年3月~7月のように)金融システムの多くがシャットダウンした期間のあとですら,経済は急速回復している.いい例は,1921年~22年のきわめて急速な回復だ.1921年7月に,アメリカはすごく深い景気後退のどん底にあった.そして,1922年12月には好景気にわいていた――「狂騒の20年代」のはじまりだ.2021年~22年も急速回復させようぜ!

1921年~22年の回復では,賃金が非常に柔軟だったことが助けになった.当時の賃金は,いまよりも賃金が柔軟だったんだ.他方で,いまのぼくらには不換貨幣制度という利点がある.おかげで,お金を十分に刷ってやれば,名目 GDP を2022年までにトレンド線にまで戻せる.賃金の柔軟性は必要ない.それに,2008年~9年不況からの,あの無駄に緩慢な回復を繰り返す必要もない.

医学的な理由によるシャットダウンがなければ,連銀が堅調な名目 GDP を提供すれば完全雇用まで急速に復帰できるだけの力がアメリカ経済にはある.この点はいくら強調してもしたりない.映画のあの言葉を思い出そう,「それをつくれば,やつらはやってくる」〔『フィールド・オブ・ドリームズ』で,野球場をつくるきっかけになる謎の言葉〕.ぼくに言わせれば,「名目 GDP をつくれば,企業は財とサービスをもってやってくる」んだよ.

さっきの悲観論を信じないこと.いったん感染が終息したら,連銀が堅調な名目 GDP を提供することをぼくは期待すべきだし,それどころか,そう要求すべきだ.もし2022年の早期に経済が完全雇用になってなかったとしたら,それはきっと,名目 GDP が2020年の第1四半期レベルを 8% 超えていないためであって,謎の「履歴効果(ヒステリシス)」のせいではない.

ジェイ・パウエルは,正しいことを肝に銘じているようだ:

コロナウイルス・ショックから経済が回復するまで連銀は「強力に,先手を打って積極的に」みずからの権限を行使するとジェイ・パウエルは発言した.合衆国の中央銀行である連銀は,高利回りの企業債務について市場に追加の 2.3兆ドルの資金提供を行うべく動いている.〔※こちらも参照〕

だが,よい心構えだけではたりない.〔名目 GDP の〕水準目標が必要だ.それも,できるだけ早く.

PS. おまけの予測:この夏,メディアは世界各国を「安全な国」「感染国」に分類し始めるだろう.「安全な国」の範疇には,オーストラリアやニュージーランド,中国・台湾・ベトナム・アイスランドと,あと数カ国が入れられるだろう.その後まもなくして,韓国・香港・ノルウェーも加わり,しだいに「安全」とされる国は増えていくはずだ.ここでいう「安全」とは,週 2% 未満の域内感染拡大を意味する.感染国から安全な範疇の国にどう移動するかメディアではおしゃべりがたくさん交わされるだろうし,この話題をめぐって政治的な意見の相違もたくさん出てくるだろう.

PPS. 合衆国では,コロナウイルスの感染拡大は西部の州からはじまった.今日,感染拡大はテキサス/ルイジアナ州境の東にある各州で劇的に悪化している.人口で調整してもなお悪い.

更新:北欧よりもフランスの受けた打撃の方がずっと大きく,ケベックの打撃はカナダの他の地域よりもずっと大きい.さて,ルイジアナ〔旧フランス領〕は…

PPPS. 1938年秋に最低賃金が施行されたあとにいったん景気回復が中断したものの,1938年中盤から1939年終盤にかけての景気回復もすごく急速だった:

▼ 鉱工業生産指数

あるいは,1983年の急速な回復はどうだろう:

あるいは,1958年はどうだろう:


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