タイラー・コーエン「中学校でのスマホ禁止に関するノルウェーでの研究――Twitterで聞いた話とちがうかも?」(2024年4月25日)

中学校でスマートフォンが禁止されたものの,禁止の実施率はノルウェー各地でまちまちだった(し,外生的だ).中核的な発見をいくつか見てみよう.実際に論文を読んでみると,Twitter に出回ってるいろんな要約から受けるのとはいくぶんちがった印象を受ける

Sara Abrahamsson による新しい論文がこちら.ノルウェーのみに当てはまる事情も働いているのかもしれないけれど,研究結果はぼくの予想とだいたい合ってる.基本的な状況は次のとおり.中学校でスマートフォンが禁止されたものの,禁止の実施率はノルウェー各地でまちまちだった(し,外生的だ).中核的な発見をいくつか見てみよう.実際に論文を読んでみると,Twitter に出回ってるいろんな要約から受けるのとはいくぶんちがった印象を受ける:

  1. 成績は改善した.たとえば,女子生徒の成績は 0.08 標準偏差の向上を示している.やる値打ちはあるけれど,一世代の子供たちを救うにはほど遠い.女子生徒の場合,いちばん向上したのは数学のスコアだった.
  2. 精神衛生関係の専門家に女子生徒が相談することが減った.〔心の問題での〕一般開業医の受診は平均 0.22 回減り,専門医の受診は 2~3回減った.
  3. 「専門医や一般開業医で心理学的な症状・疾患と診断されたり治療を受けたりする確率にはなんらの影響も見られない.」 つまり,スマホ禁止後も診察を受ける生徒たちはいるけれど,心の問題があると診断される確率は大して変わらない.
  4. いじめは減少している.女子生徒では 0.42 標準偏差,男子生徒では 0.39 標準偏差の減少となっている.これは,ぼくの予想よりも大きな影響だった.
  5. 成績の向上は,社会経済的地位の背景が低い〔=貧しい家庭出身の〕生徒でもっとも大きい.
  6. データの詳細 (p.22) を見てみると,成績の向上は精神衛生の専門家の受診回数減少と相関しているようには見えない.

というわけで,学校でスマートフォンを禁止した場合,成績はごくささやかな上昇を示し,いじめ減少はそれほどではないけれどささやかで,実際の心の健康の診断は変わらなかった.少なくとも合衆国では,親たちはスマホ禁止をいやがっているように思える.なぜなら,〔スマホを禁止すると〕好きなときに子供と連絡をとれなくなってしまうからだ.

こんなところ.あとは,論文の p値についての論評がこちら


[Tyler Cowen, “The Norwegian ban on smart phones in middle schools,” Marginal Revolution, April 25, 2024]

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