ブラッド・デロング 「『ルピーの下落』について書かれている章は読み飛ばしてもいいわよ」(2008年3月15日)

●Brad DeLong, “The Chapter on the Fall of the Rupee You May Omit…”(Grasping Reality, March 15, 2008)


確実に観客の笑いを誘う場面より。

オスカー・ワイルド(著)『The Importance of Being Earnest』(『まじめが肝心』): プリズム女史:・・・(略)・・・セシリー、私が留守にしている間に、経済学を読んでおくんですよ。「ルピー [1] 訳注:インドの通貨 の下落」について書かれている章は飛ばしてもいいわよ。ちょいとセンセーショナルすぎますからね。こうした金属絡みの問題にさえ、メロドラマ的な面があるんですもの。

第二幕からの引用だ。あの経済学にエドワード朝に生きる純真な乙女の心をかき乱す面――退屈でない面――があると聞いて、観客はつい笑ってしまうのだ。

とは言え、皆が皆、同じ理由で笑うわけではない。周りと一緒になって笑っているわけではなく、プリズム女史のセリフを聞いて笑っている客を(「わかってないなあ」と見下して)あざ笑っている客もいるのだ。

そういう客は、わかっているのだ。プリズム女史は、ありのままの真実を語っているに過ぎないということを。「ルピーの下落」とかいう金属絡みの問題には、メロドラマ的な面があるのだ。通貨価値の高騰や暴落は、激しい戦争に引けを取らないくらいに、経済活動の再編を引き起こすし、人々の生活を揺さぶるし、社会の勢力図を塗り替えることになるのだ(流血を伴わずに・・・と望みたいところだけれど)。

ワイルドは、どうやら気付いていないようだ。経済学をあざ笑っているつもりらしいが、それと同時に、自分があざ笑われてもいるってことを。

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1 訳注:インドの通貨
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