Tomas Ståhl の新研究論文から:
「無神論者は信頼できず道徳的指針が欠落している」というステレオタイプは国をまたいで広くみられる.この考えには,なんらかの真実味があるのだろうか? 無信仰にいたる文化的要因・動機づける(または〔信仰する〕動機をそぐ)要因・認知的要因に関する理論にもとづき,本研究では,信仰者と無信仰者それぞれが抱く道徳的価値観・原則には信頼できる相違点や類似点があるのかどうかを検討した.宗教色が強い国とそうでない国(アメリカ vs. スウェーデン)でさまざまな道徳的価値観・原則を抱くことと無信仰(vs.信仰)がどう関連しているのかを4つの研究で検討した.〔Amazon の〕メカニカルタークを用いたアメリカでの2つの研究(研究 1Aと1B,N=429)と国をまたいだ2つの大規模な研究(研究 2-3,N=4,193)では,無信仰者は集団の結束に寄与する道徳的価値観を抱く傾向が(信仰者よりも)弱いことが一貫して示されている(強調は引用者によるもの).これと対照的に,他の道徳的価値観(個人化する道徳的基盤,認識に関しての合理性)を抱くかどうかに関しては,無信仰者と信仰者に見られる差はわずかなものにとどまった.また,無信仰にいたるとされる文化的要因や動機面の要因が無信仰と相関していることも示されている(信憑性を強化する表示,生死に関わる脅威の少なさ).さらに,こうした要因はどちらの国でも結束を強める道徳的基礎を信奉する度合いが低いことと関連している(研究2).こうした発見の大半は研究3で再現された.また,研究結果からは,どちらの国でも無信仰者(vs.信仰者)は道徳のあり方について帰結主義の傾向がより強い見解をとることも示されている.道徳のあり方に関する帰結主義的な見解は,無信仰-分析的認知スタイルにつながるとされる要因とも相関している.
Via 知見の人 Samir Varma.