経済学101は主に皆様の寄付によって賄われています。温かい支援をお待ちしています

タイラー・コーエン「間違ったAmazon批判」

Tyler Cowen “The rant against Amazon and the rant for Amazon” Marginal Revolution, September 19, 2018


ワオ!こうした問題すべては買い手独占と売り手独占(monopsony and monopoly)タイプの市場集中によって引き起こされているってことをこんなにも一生懸命否定しようと頑張ってるなんて驚きだ。Amazonと競合するのが簡単だと思うかい?Amazonが各産業に参入を考えたとき,それによってその産業の競合他社の株価がどうなったか考えてみなよ。従業員への支払いを低く抑えるためにAmazonがその市場影響力とブランドネームを使っていないとでも?同じものを使って政治家のインセンティブを引き出してない?経済に占める企業利益の割合は記録的な高さになっているけど,それはどうやって維持されてると思う?こうしたことに目をつぶって企業の力が増しているのを否定しているのはどんな思惑からかな?論理的とは思えないね。

上はSteven Wolfによるコメント1 。Amazonについては正当な非難というものもありうるけれど,このコメントはこれだけの短い中に驚くほど多くの間違いを含んでいる。

ひとつめ。買い手独占と売り手独占は対照的ないしは正反対の効果をもたらすことが多い。Amazonが買い手独占となっているのであれば,それによって産出が増えて価格は下がるだろう。

ふたつめ。Amazonが競合他社を打ちのめしてしまっているのであれば,それは消費者にとってはとても良いことかもしれない。消費者は他社がなかなか競合できないような企業を求めている。そんな企業がなければ同じような企業が増えてしまうだけだ。

みっつめ。市場を製品ごとに考えてみた場合,Amazonが大きな市場力を持っていたり,その財やサービスの大きなシェアを占めているというような分野はほとんどない。

よっつめ。Amazonは書籍市場では比較的強い。とはいえ,一般の書店で28ドルする本の場合,アマゾンではたぶん17ドル,中古で良ければ更に安く買える2

いつつめ。Amazonは(全国レベルで)たくさんの競合他社から市場シェアを奪っているけれど,一般的に言ってほとんどの地域ではそれによって労働市場のインフラが打ちのめされてはいない。それはつまり,みんながどれだけAmazonの雇用について文句を言いたがっていようが,Amazonはより高い給料を払うかより良い労働環境を提供することで労働者を雇用しているということだ。

むっつめ。無形資本の性質や経済学的な意味での利益と会計上の利益の違いを踏まえた場合,現時点で企業利益が記録的なまでに高くなっているかどうかは定かじゃない。

ななつめ。Amazonが進出の見返りとしてワシントンDC地区から税率の引き下げと地下鉄網の改善を「引き出して」いるならば3 ,それは純粋なパレート改善,そうでなくても少なくとも反対すべきものかどうかは明らかじゃない。

やっつめ。コメントには「エコシステム」という単語が含まれていないけれど,Amazonは流通やクラウドコンピューティングを良くするために多くのことを行ってきていて,それによってたくさんの生産者,ひいては消費者が恩恵を受けている。文筆家たちは,彼らのためにAmazonが作り出した新たな世界でうまくやっていけばよくなる筈だ。

以下はラナ・フォルーファーの記事からの引用。

「Amazonが私たちの銀行データや資産を見ることができた場合,Amazonが把握している私たちの支払い能力の限界まで貸し出しを行う(ことを止めるものなどあるだろうか?)」とオモロヴァ教授は問いかける。

どこかよそからお金を借りることもできるけれど,そうしたほうがいいと思うかい?

追記:Amazonに対する批判でもっとおもしろく,これまでほとんど聞かれていないものとして,クラウドコンピューティングにおけるAmazonの支配力が,市場での彼らのプレゼンスの崩壊や妨害が国家の保安問題になりかねないほどのものだというのがある。とはいえ,ほかにどうすればより安全となりうるかは分からない。.

  1. 訳注;景気回復にも関わらず賃金の上昇が鈍い,資本収益率が高い,国内投資が弱いといったアメリカ経済の異変について,その原因は資本の移動が自由であることや投資家が高利益を求めるようになったからだではないかという趣旨のコーエンの過去記事についたコメント。つまりSteven Wolfは,コーエンはごちゃごちゃ屁理屈をこねているけれど,今の経済問題はAmazonが市場の支配力を濫用して人々から搾取しているのが原因だろうということを述べている。 []
  2. 訳注;アメリカの場合,日本と異なり書籍の再販制度がないため新品の本でも値引きがされている。 []
  3. 訳注;Amazonの第2本社の設置先としてワシントンDCが有力候補とされている。 []

コメントを残す