経済学101は主に皆様の寄付によって賄われています。温かい支援をお待ちしています

タイラー・コーエン 「フィクションの計量経済学 ~ニューヨーカー誌の編集者に備わる影響力を測定する~」(2004年6月4日)

●Tyler Cowen, “Econometrics and New Yorker fiction”(Marginal Revolution, June 4, 2004)


ニューヨーカー誌に掲載されるのはどんなタイプの小説なんだろうか?

キャサリン・ミルクマン(Katherine Milkman)は大学時代に副専攻としてアメリカ研究を選んだという。そんな彼女が標的としたのはニューヨーカー誌。1992年10月5日から2001年9月17日までの間にニューヨーカー誌に掲載された計442編に上る小説(短編)を読み漁って膨大な情報が詰まったデータベースを一から構築したのである。そしてロココ調の壮大な数式を携えてデータの山に分け入り、小説部門のその時々の編集者が雑誌に掲載される小説のタイプに何らかの影響を及ぼしているのかどうか、雑誌に掲載される小説の作家の性別や小説に登場するキャラクターの人種に何らかの影響を及ぼしているのかどうかを検証したのである。ミルクマンの論文(卒業論文)1では統計学が大いに幅を利かせている。・・・(略)・・・「2標本コルモゴロフ-スミルノフ検定」に「ピアソンの相関係数とその検定」。

さて、主たる結論は?

・・・(略)・・・全般的な傾向としてどんなことが言えるかというと、男性の編集者は男性が主人公で女性が脇役の物語を内容とする男性作家の作品を掲載する傾向にあったという。

さらにはこんな傾向も。

小説部門の編集長がチャールズ・マグラスからビル・ビフォードに代わってもニューヨーカー誌に掲載される小説のテーマには大きな変化は無かった。セックス、人間模様(人間関係)、死、家族、旅行というのが主たるテーマ。

驚いた? さて、ニューヨーカー誌の関係者はどんな反応を見せているだろうか?

「個人的な感想を言わせてもらうと、ミルクマンの研究にはすっかり心を奪われてしまいましたね」。そう語るのはロジャー・エンジェル(Roger Angell)。ミルクマンが分析対象として選んだ期間にニューヨーカー誌で小説部門の編集者を務めていた一人。現在は作家としてニューヨーカー誌で小説を執筆している。エンジェルはミルクマンと何度も直接会って話し込み、ニューヨーカー誌の関係者を何人も紹介してやりもしたという。ミルクマンの研究結果には魅了されっぱなしではあるものの、混乱の種をまきはしないかと心配だとエンジェル。

「原稿の掲載を拒否された作家の中にはミルクマンの論文を読んでこう口にする面々も出てくるかもしれません。『ニューヨーカー誌に掲載されるにはどうすればいいのか遂にわかったぞ』、と。しかし、そううまくはいかないでしょうね。というのも、好みに適う作品を載せるというのが編集陣の方針だったという話なわけですからね」。

全文はこちら。報じているのはニューヨーク・タイムズ紙だ。

まとめ: この種の分析を目にする機会は今後ますます増えることだろう。長い目で見ると、人文科学に属する学問分野ではどの分野であれ定量的な研究が当たり前となるに違いないというのが私なりの見立てだ。

  1. 訳注;学術誌に掲載されたバージョンは以下。 ●Katherine L. Milkman&Rene Carmona&William Gleason, “A Statistical Analysis of Editorial Influence and Author–Character Similarities in 1990s New Yorker Fiction”(pdf) []

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください