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タイラー・コーエン 「政府は社会規範の形成にどこまで関与すべきか? ~ボゴタを生き返らせたモックス市長のユニークな取り組み~」(2004年12月27日)

●Tyler Cowen, “How much should governments influence norms?”(Marginal Revolution, December 27, 2004)


ボゴタ(コロンビアの首都)の惨状を改善するために、ダグラス・ノース(Douglass North)のアイデアにヒントを得て1、ユニークな取り組みを進めた政治家がいる(全文はこちらを参照)。

また別の革新的な発想も試みられた。市民の交通マナーを改善するために、パントマイムの役者が雇われたのだ。当初雇われたプロのパントマイマーの数は20名。交通ルールを無視して道路を横断する歩行者を発見すると、パントマイマーはその違反者の後ろを尾行して、その人物の一挙一動を真似てからかうのであった。無謀な運転をするドライバーも、パントマイマーの嘲笑の標的となった。このプログラムは大好評を博し、パントマイムの技術を仕込んだ上で、400名の新人パントマイマー役が追加で投入されたのであった。

これはまだ序の口に過ぎない。

アンタナス・モックス(Antanas Mockus)(数々のユニークな取り組みを推進した前ボゴタ市長)は、そのこと(『アート、ユーモア、創造力』の力を借りれば、人々の行動を変えるのも困難じゃないこと)を生き生きと実践してみせている。ある時、「いいね!」(”thumbs-up”)マークと「ブーイング」(”thumbs-down”)マークが象(かたど)られた35万枚のカードが市内で配布されたことがある。そして、モックスは、市民に向かって訴えた。そのカードを用いて、あなた方一人ひとりの力を行使してほしい。誰かが称賛に値する振舞いをしているのを目にしたら「いいね!」マークを差し出し、誰かが非難に値する振舞いをしているのを目にしたら「ブーイング」マークを差し出してほしい、と。その結果はというと、二つのカードは、街のあちこちで多くの市民によって積極的に――そして、平和裏に――使用されたのだった。

自主的に10%だけ余分に税金を納めてくれないか。モックスは、市民に対して、そのように依頼したことがある。そして、驚くことに、6万3千人の市民が市長の依頼に応じたのであった。その結果、2002年度のボゴタ市の税収は、1990年度の税収の3倍以上にのぼることになった。モックスが市長を務めていた最中に、ボゴタ市民の間でいかに劇的な態度の変化が生じたかをまざまざと示すエピソードと言えよう。

親切で正直なタクシードライバーに遭遇したら、その旨を市長室まで連絡してほしい。モックスは、市民に対して、そのように依頼したこともあった。市民から情報が寄せられたドライバーの数は150人。モックスは、その「優秀な」ドライバー全員を招いて会合を開き、「普通」のタクシードライバーの行動を改善するにはどうしたらいいか、アドバイスを求めたのであった。150人の「優秀な」タクシードライバーは「ゼブラの騎士」と呼ばれ、市長のお墨付きを与えられたのであった。

このエピソードも見逃せない。

「こいつにボゴタの惨状(混沌と無秩序)を変えられるのか」と疑う市民たちを鼓舞するために、市長に就任したばかりのモックスが打った手というのが、スーパーシチズン。スーパーマンのコスチュームを身にまとって公の場に姿を現したモックスは、自らのことを「スーパーシチズン」(”Supercitizen”)と名乗ったのである2

情報を寄せてくれたエリック・クランプトン(Eric Crampton)に感謝3。スペイン語が読めるようなら、こちらのエッセイ(スペイン語)でモックスが自らの哲学を開陳しているので、目を通してみたらいいだろう。

  1. 訳注;エントリー内では引用されていないが、記事の中から関連する箇所を以下に訳しておく。「自らの取り組みは学術的な研究成果に啓発されている面がある、とモックスは語る。具体的には、二人の学者の名前が挙げられている。そのうちの一人が、ノーベル経済学賞受賞者のダグラス・ノース。ノースは、『フォーマルなルール』と『インフォーマルなルール』との緊張関係を探り、両者のルールがかみ合わない場合に、いかなるかたちで経済発展に制約が課されることになるかを検討しているという。もう一人は、ユルゲン・ハーバーマス。ハーバーマスからは、ソーシャル・キャピタルの構築に『対話』が果たす役割について学んだという」。 []
  2. 訳注;その姿を見てみたければ、こちらのエントリーで添付されている写真を参照されたい。 []
  3. 訳注;モックス市長の取り組みについては、ポール・ザック(著) 『経済は「競争」では繁栄しない-信頼ホルモン「オキシトシン」が解き明かす愛と共感の神経経済学』や、フィスマン&ミゲル(著) 『Economic Gangsters: Corruption, Violence, and the Poverty of Nations』(邦訳 『悪い奴ほど合理的-腐敗・暴力・貧困の経済学』)などでも取り上げられている。 []

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