経済学101は主に皆様の寄付によって賄われています。温かい支援をお待ちしています

ダイアン・コイル 「経済学者にお薦めの古典小説」(2018年9月2日)

●Diane Coyle, “Classics for Economists”(The Enlightened Economist, September 2, 2018)


オックスフォード大学に籍を置くエリザベス・ボールドウィン(Elizabeth Baldwin)に言われて思い出したのだが、経済学者が読んでおくべき古典小説のリストを数年ほど前に本ブログで紹介したことがある。自分でもすっかりその存在を失念してしまっていたのだが、我ながらなかなかの出来のリストなんじゃないかと図々しくも自負していたりする。そんなわけで、以下にその(なかなかの出来の)リストを再掲することにしよう。

早速本題に入りたいところだが、その前にリストは改善の余地ありということは断っておくとしよう。私がもまれてきた文化的な環境の基準に照らすと、ロシアの文豪の作品については読書量が足りていないというのが正直なところだ。ロシアの文豪のうちで経済学と関係が深い作品を残しているのは誰だろうか? ヘンリー・ジェイムズとかディケンズとかは個人的に好きじゃないのだが(学校で課題図書として強制的に読まされたのがその理由)、(ディケンズの)『リトル・ドリット』なんかはリストに入れてもいいんじゃないかとは思う。アフリカ文学だとかインド文学、はたまた中国文学の古典なんかはどうだろうね? 現代の古典――例えば、カート・ヴォネガットの『プレイヤー・ピアノ』とか――も加えた方がいい? 何かお薦めの小説があれば是非ともお教え願いたいところだ。

それではリストの紹介といくとしよう。

『ノストローモ』 by ジョゼフ・コンラッド: 植民地主義の核心に迫った一冊

『ジェルミナール』 by エミール・ゾラ: 産業革命の原動力たる石炭と炭鉱労働者の日常を題材にした一冊

『北と南』『メアリ・バートン:マンチェスター物語』 by エリザベス・ギャスケル: 産業化が社会に及ぼした様々な効果を取り上げた一冊。中でも産業化が女性(の生き方)に及ぼした効果に力点が置かれている。『メアリ・バートン』の舞台はマンチェスター。私がちょうど今住んでいる場所だ。

『巨匠とマルガリータ』 by ミハイル・ブルガーコフ: ソ連型独裁の血なまぐさい惨劇がテーマ。「ヴォランド教授、その正体はゲーム理論家?」なんて副題もありだろうか? つい最近読んだばかりの一冊。劇団「テアトル・ド・コンプリシテ」による(マジで、いやマジで)素晴らし過ぎる(『巨匠とマルガリータ』の)舞台を観に行ったのが本書を手に取ったきっかけだ。

『パルムの僧院』 by スタンダール: 統一前のイタリアをはじめとしたヨーロッパの政治の世界がテーマの一冊

『山猫』 by ジュゼッペ・トマージ・ディ・ランペドゥーサ: 「イタリア統一運動」および「近代」がテーマの一冊

『渦』 by ジョージ・ギッシング: ギッシングの作品はどれもお薦め。イギリスの新興工業都市に生きた「お金に追われる」人々がテーマ。

『ミドルマーチ』 by ジョージ・エリオット(ギッシングと同じくエリオットの作品も大体どれもお薦め): (社会の基盤が大きく変容しつつあった)激動の19世紀の鋭敏な政治分析/心理分析が展開されている。ボンネット(帽子)とフロック(ドレス)に象徴される世界が甘ったるさを排して厳しい眼差しで描き出されている一冊。

『ロクサーナ』 by ダニエル・デフォー: 女性の経済的地位がテーマの一冊。デフォーは経済ジャーナリストとして名を馳せていたが、フェミニズムを陰で支えた縁の下の力持ちでもあったのだ。

『われら』 by エヴゲーニイ・ザミャーチン: 共産主義、画一化がテーマ。20世紀初頭の暗黒面に光を当てた一冊。読んだのはつい最近。ニック・レイノルズ(Nick Reynolds)に薦められたのだ。

『レ・ミゼラブル』by ヴィクトル・ユーゴー: 何かコメントする必要ある? 少し前に封切られたばかりのミュージカル映画版も個人的にお気に入りだ。

『マイ・アントニーア』『おお開拓者よ!』 by ウィラ・キャザー: アメリカに移住した開拓民の過酷な生活および女性の強さが描かれている。

『グレート・ギャツビー』 by F・スコット・フィッツジェラルド: (アメリカにおける)「狂騒の20年代」を華麗なかたちでギュッと凝縮した一冊。バス・ラーマンが監督を務めた映画版の『グレート・ギャツビー』が公開されたばかりだが、私は未見。

『The Ragged Trousered Philanthropists』(「ボロをまとった博愛主義者」)by ロバート・トレッセル: 名作とは呼べないものの、お金に追われてあくせく働く労働者の心に訴えかける小説の一つ。

『ラックレント城』 by マライア・エッジワース: エッジワースはジェーン・オースティンと同じ時代を生きた女性作家であり、オースティンよりもずっと長生きした。


コメントを残す