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ピーター・ターチン「主流派経済学によるとパンデミックでインフレになるらしい:ペストとインフレーション」(2017年4月6日)

The Black Death and Inflation
April 06, 2017
by Peter Turchin

マーク・コヤマのツイッターに誘導されて、スコット・サムナーのブログに辿り着いたが、そこで、異端派経済学が、伝統経済学の牙城American Economic Reviewを侵略しつつあることを私は知った。サムナーはノーベル賞受賞者のロバート・シラーの〔異端派的内容の〕論文を、猛烈に糾弾している。エイプリルフールの投稿なのに、サムナー、クソ真面目のようである。

以下、シラーの論文の要旨からの引用である:

人間の脳は、いかなる時も、経路依存的な行動を正当化するため、事実に基づいていようといまいと、好意的な「物語化」チューニングを行ってしまう。これは、支出や投資といった基礎的な行動ですらそうなのだ。物語化によって、〔人は〕活動を動機・関連付け、価値観や要求を深く感じ入るのである。物語が「バイラル化」すれば、経済的な影響を伴い、世界規模にまで広がっていく。

シラーの論文そのものは読んでいないのだが、シラーは、正当化経済学の関心があまりに狭くなっていて、テンプレ化してしまっているので、経済学の活動を感化できるなら感化して、〔学問〕領域の拡張を提起しているようだ。この件については、私もブログで喚起してきている(例えば、ここ〔本サイトでの翻訳版はここ〕)。興味深いのは、ノーベル賞学者であっても、〔このような喚起を行えば〕異端派の烙印から逃れられないことだろう。

もっとも、私がこのブログを書こうと思った主な目的は、サムナーがエントリで「しかしながら、まさにAS/ADモデルが予測する通りに、ペストはインフレーションを引き起こしていたのだ」(強調はサムナーによる)と続けて述べていたからだ。AS/ADモデルだか何だか知らないが、歴史的事実に照らせば、このサムナーの発言は明らかな間違いである。これは、ヴィルヘルム・アベルの画期的な研究以来、経済史家の間では周知の事実である。フィッシャーの本“The Great Wave(大波)”に転載されているので参照してほしい。

「中世の価格革命」を見ると、14世紀前半までは物価は持続的に上昇しており、ペスト到来以降の時代(1350~1450年)は、デフレの時代となっている。

さて、〔私の本〕“Secular Cycles(永年周期)”の読者なら、事情がもう少し複雑だったのをご存知だ。農耕社会において、持続的な人口増加は、最終的に仕事を求める農耕従事者と、食料を必要とする飢餓者が過剰増加する結果となる。そのため、土地や土地からの生産物(例えば穀物)のような財は高価となり、労働による生産物(製造業製造物)のような他の財は安価となる。つまり、価格の有り様は、商品に応じて反応するのだ。過度の人口増加は、土地・食料・燃料・住宅価格を上昇させる。また、(ほとんどの未熟練)労働の賃金価格を低下させる。製造業生産物の価格は、主に労働がコストとなっているので、その価格も低下させる。公僕や兵士の賃金も、“余剰人口”からの採用程度に応じて、低下する。

資源に応じての、実質賃金と人口圧迫の関係性は、経済史において最も信頼性が高い関係性の一つである。私の研究から実例を1つ挙げてみよう。

以上グラフにおいて「相対的人口数」は、土地の収容力に対する人口の相対的な数である。「逆賃金」は実質賃金の逆数、すなわち「悲惨指数」である(詳細は“Secular Cycles”を参照)

歴史的に(農耕社会では)、ペストのような伝染病による人口減少は、常に(生き延びた)庶民の生活の質の向上をもたらしている。庶民は、より良い穀物(大麦に代わって小麦)を食べたり、ビールやワインを飲んだり、果物や肉を食べるようになっている。


『農民の饗宴』ピーター・アールウェン画

この〔庶民の生活向上〕は、ヨーロッパではペストの後にも起こっているが、地中海においては、「アントニヌスの災い」や「ユスティニアヌスの災い」の後にも同じ動態が起こっているのを観察できる。そして、ペストが17世紀にヨーロッパに再来した時だと、デフレの時代が続いている。


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