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ブランコ・ミラノヴィッチ「不平等と新型コロナウイルス」(2020年9月15日)

Inequalities and Covid-19
Posted by Branko Milanovic on Tuesday, September 15, 2020

不平等というのは様々である。所得と富の格差だけではなく、性別、人種、年齢、国内の地域単位などにおいても不平等は存在している。ニューヨークのような街を散歩していると、あるエリアから別のエリアへと歩いただけで格差が見て取れる。

そのため、(様々な形で)不平等とパンデミックの影響にしばしば関連性が見られるのは特に不思議なことではない。私が思うに、これはアメリカにおいて非常に明白であるが、おそらく南アフリカやペルー、チリ、ブラジル、インドと言った甚大な被害を受けた他の国においても同じである。

アメリカにおける健康格差の問題はよく知られた話である。オバマケアの後ですら3000万人近くのアメリカ人が未だ健康保険に加入していない。多くの人々が健康保険をそれぞれの働き先に頼っている状況だ。この場合、パンデミックの間もそうであったが、仕事がなくなると保険もなくなってしまう。多くの病院が保険の有無に関係なく患者を治療したにも関わらず、医療格差が原因で死者が出ており、これは政治家の公共精神が著しく欠けていることを示している。

アメリカにおける教育格差の問題は新型コロナウイルスをめぐる議論の中でほとんど触れられていない。しかし、初等・高等学校教育の質の低さに加え、幅広い自由裁量での在宅教育の実施も相まって、科学の否定や感染拡大を抑制する予防的措置の否定が蔓延するようになった。アメリカが最も馬鹿げた信仰(携挙1 から地球平面説まで)を持っている人口の割合において、他の所得の高い国々を大きく上回っているという事実は決して偶然ではない。危機の渦中、科学が自分や家族、友人のためにダメだと教えることを人々が信じなくなり、無法な一面が露わになった。

政治の意思決定システムが分断されていることは、連邦政府の公然たる妨害に対して、当初は非常に有用であるかに見えた。しかしそれも幻想であることが明らかとなった。上位の地域単位(州)が、下位の管轄区域(2 )に対してパンデミックを封じ込めるための規則を施行することができず、行政は混乱に陥ったのである。さらに、自由な移動の条件の下で各郡ごとにそれぞれ異なる対応が取られたことでウイルスが拡散し、パンデミックの拡大につながった。最も制限の緩い郡がウイルスを拡散させることとなったのである。このような状況では、各行政が責任を引き受けたところで抱える事案が悪化する一方であり、伝染を阻止することはできない。責任を引き受けるだけ無駄なのである。こうして、広範囲に及ぶ無責任のインセンティブが形成された。

政治権力をめぐる不平等も明らかとなった。州や郡の行政が厳しい施策を打ち出したものの、企業の執拗な圧力に晒されることになったのである。ほとんどの政治家は選挙において企業の支援がいかに重要であるかを知っているため、その圧力に抗える者はいなかった。中でも注目すべきは、そうした問題が原因ではじめは成功例とされていたカリフォルニア州が感染抑制に大失敗してしまったことである。

死者数が多かったのは特に黒人とラテン系住民であったため、こうした死者数の偏りが政治的対応の遅れに繋がったようにも見える。これら2つのコミュニティはいずれも政治的な力を持っていない。カリフォルニア州のラテン系住民の多くは不法移民とみられ、彼らの政治的影響力はさらに小さい。そのため彼らの死はほとんど問題にはならなかった。

こうしたのプロセスの結果、実際のところ中国のような独裁政権よりもはるかに死に対して無関心な民主国家が誕生したのである。

アメリカは命よりも企業を優先していながら、経済は大きく落ち込み、世界一の死者数を出す結果となってしまった(2020年9月現在)。

 

[これは不平等とパンデミックの関係をどう見ているかを説明するために、ベルリンのボッシュ財団の依頼で書かれた短い記事です。]

  1. 訳注:プロテスタントにおけるキリスト教終末論で、イエスの再臨のときに、敬虔であった全ての死者が蘇り、生きている信徒とともに天を昇ってイエスと出会い、永遠の命を得るというもの。 []
  2. 訳注:アメリカの州と基礎自治体の間にある行政区分。 []

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