経済学101は主に皆様の寄付によって賄われています。温かい支援をお待ちしています

ポール・クルーグマン「イギリス版ポール・ライアンあらわる」

Paul Krugman, “Intellectual Dishonesty on Display in Britain,” Krugman & Co., December 19, 2014.
[“Flimflam Does London,” The Conscience of a Liberal, December 6, 2014]


イギリス版ポール・ライアンあらわる

by ポール・クルーグマン

Kieran Dodds/The New York Times Syndicate

Kieran Dodds/The New York Times Syndicate


イギリス財務大臣ジョージ・オズボーンの秋声明 (Autumn Statement) で,イギリス首相デイヴィッド・キャメロンの財政プランが明らかになった.これを見て,評論家たちの間にかなりの不信が広がっている.

「マクロ経済なんて知ったことか」――今回のプランは公的支出を急激に削減する方針だ.これにより,公共サービスに甚大な影響が出るはずだけれど,具体的な部分は明らかにされていない.

“What the hell is he playing at?” asked the economist Chris Dillow in a recent blog post.
「いったいなにがやりたいんだ?」と経済学者のクリス・ディロウが先日のブログ記事に書いている.

大西洋のこっち側で起きてることに注意を払ってきた人には,答えはわかりきってる.オズボーン氏は,アメリカ共和党議員で下院予算委員長ポール・ライアンの役をやろうとしてるんだよ.演目はまるっきり同じだ:財政赤字を心から懸念していると主張しつつ(しばしば大声で),その一方で提示する財政案の具体的な部分では,貧困者への支援をガリガリ削りお金持ちに減税する.つまりは,赤字削減にほとんど役に立たない財政案を出すわけだ(というか,ライアン氏の場合だと,むしろ赤字が増えちゃうんだけどね).
http://krugman.blogs.nytimes.com/2012/08/16/whats-in-the-ryan-plan/

そんなことをやりつつ,赤字削減を進めておりますと引き続き主張しつづける.なんでそんな主張ができるかって言えば,ちょちょいと支出削減額を書き込んでやればいいからだ.ただし,具体的になにを削減するのか,どうやって実現するのかって説明はしないでおく.

さて,その目標はなんだろう?

ようは,福祉国家に対する戦争だ――実現できそうもない支出削減案は,ひとえに,おマジメぶったみなさんをだまくらかすためにある(あるいは,ぼくと同じ分析をしてる経済学者のサイモン・レン=ルイスがいう「メディアマクロ」を
言いくるめるためにある).そうやって,「ほんとに赤字を削減してるんだね」って信じさせるんだ.

これがうまくいくからたまらない.「マジメで誠実な保守派議員」って基本線をいっこうに手放さない記者たちは,ライアン氏をうやうやしく取り上げている.

オズボーン氏が馬鹿げた財政案をつくりだしても,「馬鹿げてる」ってわかってる評論家たちですら,オズボーン氏が「イギリスの直面する制約を鋭敏に理解している」とお墨付きを与える.たとえば,JPモルガンの市場ストラテジストのステファニー・フランダースが『フィナンシャル・タイムズ』でこれをやってる

こんな風に考えてほしい:誰かが「2たす2は5ですぞー」と言うと,なるほど彼は2+2が4になる制約のもとで暮らすのは大変だってことを認識してるんだって証になるからってんで,お墨付きをもらえるって寸法だ.えらいぞ,賞をあげちゃおう.

というわけで,イギリスの評論家たちは,冷酷さと知的不誠実と独善を露骨に一身に体現してる様子に面食らってる.やあ,これでぼくの仲間入りだね.

© The New York Times News Service


コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください