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ポール・クルーグマン「ウラジミール・プーチンのロシアはガタガタになってる」

Paul Krugman, “Vladimir Putin’s Unraveling Russia,” Krugman & Co., December 26, 2014.
[“Putin on the Fritz,” December 15, 2014; “Petrothoughts,” December 14, 2014]


ウラジミール・プーチンのロシアはガタガタになってる

by ポール・クルーグマン

TOM/The New York Times Syndicate

TOM/The New York Times Syndicate


いかに迅速かつ疑問の余地なしにロシア経済の歯車が狂ってきたか,目を見張るものがあるね.石油価格急落が大きな原動力になってるのは一目瞭然だ.だけど,ルーブルの下落はブレント石油の下落より進んでいる――今年はじめから石油は 40 パーセント下落しているのに対し,ルーブルは半値になってる.

なにが起こってるんだろう? えっとね,ウラジミール・プーチン大統領は,ウクライナをめぐって西側と敵対してたところで自国の主要輸出品の底が抜けちゃったんだよ.つまり,貿易ショックに,〔制裁による〕金融ショックが加わってるんだ.

でも,貿易ショックによる劇的な効果なんて,民間部門が大幅の外債務を抱えてる発展途上国では,実にありがちな現象だ:輸出価格の下落により,まずは通貨の下落が起こり,これによって,国内価値で債務がいきなり膨らんでしまって,民間部門の債務者にバランスシート問題が生み出される.すると,経済はいっそう弱まり,信認が損なわれ…って具合に展開していく.

中央銀行は,この通貨急落を金利引き上げで制限できるかもしれない(し,できないかもしれない――いまのロシアがまさにそうらしい).でも,中央銀行がこれをやれるとしても,それには景気後退をいっそう深めるというコストが必ずともなう.2004年にでた論文で,経済学者のバリー・アイケングリーン,リカード・ハウスマン,ユーゴー・パニッツァは,ラテンアメリカの文脈でこうしたことをすべてうまく論じている.その論文で [PDF],彼らはチリを例に挙げている.チリは,1990年代の末に銅価格の下落によって,大きな痛手を受けた.当時のチリは,いまのロシアよりもずっと制度的な環境はよかったし,もちろん隣国を事実上侵略してもいなかったにも関わらずだ.

こうしたことがロシアの政治や地政学にどんな含意をもつのか,ぼくにはわからない.ただ,「新たな冷戦」だの,プーチン氏のロシアとソ連の比較なんて話が,ちょっとバカっぽく見えてこないかな?

© The New York Times News Service


石油輸出国思考

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[▲世界の石油生産に占めるサウジアラビアの割合]

先日,ドバイで開かれたカンファレンスに出席してきた.そこでずっと考えていたのは,石油価格だ.(そのカンファレンスで語られたことの多くは地政学だったんだけど,いま,ぼくはそういう陰気なことを考えるのに関心がなくってねぇ.) さて,とっちらかってて恐縮だけど,いくつか覚え書きを.

1点目には,石油輸出国機構 (OPEC) が生産を制限して価格を維持するのに失敗したことが関わる.なんで生産制限による価格維持がうまくいきそうなんて思った人がいたのか,ぼくには不思議だ.前から,誰かが「OPEC」と言ったら,その人がほんとに言わんとしてるのは「サウジアラビア」なんだとぼくは理解してる――価格維持のための生産制限をたくさんやってきたプレーヤーなんて,サウジアラビアしかいない.でも,世界の石油生産でサウジアラビアが占める割合は,約 13 パーセントにすぎない.だから,サウジアラビアにできることはかぎられている.

それに,前例を考えてみるといい:最近の石油過剰供給に似た前回の事例を探すと,1980年代にまでさかのぼる.そのときも,サウジによる劇的な減産は十分じゃなかった.やがて,サウジも降参して,石油は値崩れした.じゃあ,なんでサウジはまたしても同じことをやろうとしちゃったんだろう?

もうひとつ考えたのはこんなことだ――原子力つきベネズエラ(ロシア)は,危機に対してますます脆弱に見えてきてる:つまり,ロシアの長期金利はほぼ 13 パーセントで,通貨は急落し,民間部門の組織の多くが巨額の外債務を抱えている.「いや,外貨準備が大量にあるんだから,政府は困ってるところを救済できるだろう」と想像する人もいるかもしれないけど,市場は明らかにそう考えていない.

そう考えると,いよいよ深刻に思えてくるね.

© The New York Times News Service


【バックストーリー】ここではクルーグマンのコラムが書かれた背景をショーン・トレイナー記者が説明する

制裁と石油ショックで苦しむ経済

by ショーン・トレイナー

石油価格下落といっそうの経済制裁に直面して,ロシアは経済の苦境にあえいでいる.

クリミア半島併合を進めるロシアを処罰し,東クリミアの分離主義者たちを支援するために,西側は制裁を実施している.この制裁で,ロシア経済は大きな打撃を受けている.

これに対応すべく,先日,ロシアの中央銀行は金利を 10.5 パーセントから 17 パーセントに切り上げた.国外に通貨が流出するのを阻止しようとしての試みだ.それでも,アナリストのなかには,「ロシアはこれから数ヶ月のうちに大幅な経済縮小を経験することになる」と考える人たちがいる.彼らによれば,こうしてき上げた金利も,ただ痛みを悪化させるばかりだという.

金利引き上げの同日,オバマ大統領はこの経済危機にも関わらずウラジミール・プーチン大統領の政府に対するさらなる制裁を支持すると発言した.

石油とガスの売り上げは,ロシアの輸出市場の 65 パーセント以上を占める.ロシア政府は国内エネルギー企業の多数を所有しているので,こうした輸出は,連邦政府の歳入の半分以上を占めてもいる.財政を均衡させるためには,ロシアは1バレル105ドルでの貿易を必要とする.だが,現在の輸出価格は約 60 ドルで,投資家たちのなかには「ロシアがまもなく債務不履行に陥りかねない」と心配する向きもある.

「決まり文句のように『弱り目に祟り目』と言われすぎではあるが――」と『ガーディアン』の経済編集者ラリー・エリオットは12月16日に書いている――「しかし,崩壊しつつある通貨,崩壊しつつある経済,懲罰的な金利,この3つがそろい踏みした状況は『弱り目に祟り目』としか言いようがない.いま問うべきことは,『プーチンはどう対応するのか』という一点だ.もしプーチンがウクライナへの姿勢を軟化させれば,西側の賭けは成功したことになり,任務完了になるだろう.だが,モスクワには強硬派がいる.彼らが主張する危機対応策は,経済封鎖と対ウクライナの軍事圧力強化だ.経済的に苦しませた結果,ロシアがいっそう好戦的になったとしたら,西側が手にするのは無益な勝利でしかない」

© The New York Times News Service


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