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ポール・クルーグマン「改革保守派が言う新アイディアは昔ながらのやつとなにも変わらない」

Paul Krugman, “Reform Conservatives’ New Ideas Are the Same Old Ideas,” Krugman & Co., July 18, 2014.
[“Trick or Tweak,” July 2, 2014; “The Meme is Out There,” July 9, 2014]


改革保守派が言う新アイディアは昔ながらのやつとなにも変わらない

by ポール・クルーグマン

KAL/The New York Times Syndicate

KAL/The New York Times Syndicate

先日,『ニューヨークタイムズ・マガジン』のカバーストーリーで,作家のサム・タネンハウスがこう問いかけてた――「共和党はアイディアに満ちた党になれるか?

そりゃノーでしょ.これもまた,単純な問いに単純な答えが出る一例だ.

もっと具体的に言うと,タネンハウス氏が書いてる「改革保守」ってのは,もっぱら新しげなアイディアを,新しいアイディアを出してると世間に見られるために出してるように思える.

それに,そんなにたくさんアイディアがあるわけでもない.いまの保守の教義問答集にちょっとだけひねりを加えただけじゃなくて重大な新アイディアっぽく聞こえるものが,彼の文章になにか見つけられる? ぼくには見つけられないな.

ただ,そうすると,新しいアイディアこそ政治の肝心なところだって考え方そのものが,ずいぶんと過大評価されてることになるね.政府は,スマートフォンを次から次へと売り込んでいくようなことじゃない.ぼくらが向き合わなくちゃいけない基本問題は,ごくごくゆっくりとしか変化しない.それに,政策論争の基本事項はかなり安定していて変化しないものだ.

とりわけ,アメリカ政治の中心的な論争は,ここ数十年というもの変化していないし,変化すべきでもない.リベラルたちは強力な社会的セーフティネットがぜひともほしいと考えていて,それを相対的に高い税金でまかなおうとしてる.とくに,高所得層への課税を高めたがってる.保守派は,セーフティネットをいまより減らして,富裕層に減税したがってる.

35年前には,保守派たちはたしかに新しい主張をつくりだした――「高い税金と気前いい手当のおかげで経済の足が引っ張られてる,あんな手当はぜんぶ削減した方がさらに低所得のアメリカ人たちの状態もよくなるんだ」って主張を,彼らはつくりだした.

そして,彼らはほしがってたものをあらかた手に入れた――最高所得層の課税は大幅に減ったし,ぼくらが当時知ってた福祉は終わりを迎えた.ただ,分厚い中間層プログラムまでは終わらせなかった.

でも,経済成長が低迷する一方で格差は急激に開いた.そのため,保守革命のあと,典型的な家庭の所得はかつてよりもずっとゆっくりと伸びていった.[参考グラフ

でかい話はこれくらいで.

この先,それと似たようなことが起こったりするだろうか? ないね――それに,その手のことを期待すべき理由もはっきりしない.たしかなのは,政策の隅っこを突っつき回しても,大したことはできないってことだ.

どこかの水準では,改革保守たちもこのことを承知してるんじゃないかとぼくは見てる.彼らが提案する政策いじりの狙いは,あれこれの結果を達成することよりも,根本の政治的姿勢はまったく変えないままに,急増中の格差や低迷する所得の問題に共和党が関わりをもたなくすることにあるんだとぼくは考えてる.

そんなトリックなんて,うまくいきそうにないよね.

© The New York Times News Service


「金利が人為的に低い」とかいうミーム

このまえ,『プリンストン』誌からもらった質問にいくつか回答した.そのなかにこんな質問もあった:「人為的に低く抑えられている金利によって,ベビーブーマー世代の退職ポートフォリオの現在価値がどう影響を受けているか,そして,これは連邦準備制度が考慮すべき問題なのかどうか,コメントしてください:

編集者を責めないでおこう.なんたって,編集者が経済学者じゃなきゃいけない道理もないからね.ただ,ここには,世間の人たちが金融ニュースをどんなことを耳にしているのかが反映してるにちがいない.きっと,多くの人たちは,専門家たちがそろって金利のことを「人為的に低い」と見てると思ってるはずだ.それに,そんな考えがなにか意味をなすとしても,金利はいま高すぎるんであって,低すぎるんじゃないってことも,まるで見当がつかないはずだ.

© The New York Times News Service


【バックストーリー】ここではクルーグマンのコラムが書かれた背景をショーン・トレイナー記者が説明する

共和党の再発明

by ショーン・トレイナー

共和党のために新しい政策アイディアを産み出そうと試みる知識人集団のあらましを,7月2日付日曜版『ニューヨークタイムズ』でサム・タネンハウス [Sam Tanenhaus] が明らかにした.タネンハウスは著作の大多数を『ニューヨークタイムズ』で発表している著作家だ.この知識人集団は,アメリカにおける「保守革新」運動を先導しているのだと彼は記している.

近年,共和党は右寄りに軸を移している.彼らの活動は,これに対するより穏健な反応なのだという.だが,批判者たちの考えでは,この集団が提供しているのは,とてつもない難問へのささやかな解決案にすぎず,古くからの保守的政策を新しい言葉遣いで言い直しただけでしかない.

この改革集団に連なるメンバーたちは,先日開かれた会議と論考で.自分たちの立場を説明している.彼らは,現代ではもっぱら民主党が扱う領域となっている諸問題に焦点を置く意志を持ち合わせていることを明らかにいている.たとえば,貧困,学生の債務,長期失業といった問題だ.また,彼らは共和党の支持基盤があまりにも企業オーナーとウォール街の重役に偏っていて,中流アメリカ人から離れていることを批判している.

タネンハウス氏の文章に反応して,『ニューヨーク』誌の評論家ジョナサン・チェイトはこう述べている――「演説を見ても概要を見ても,(…)「改革派」たちの反乱が成功したとして共和党の政策目標が実際にどんなものになるのか,はっきりした説明は見つからない.」

『アメリカン・プロスペクト』の編集者で著述家のポール・ウォルドマンは,こう解説する――中道に軸を移そうと試みるどんな共和党員も,政治の現実に制約を受けるかもしれない.」 なぜなら,共和党が支配しているのは保守色が強い地域であり,政治家たちは上り詰めていく過程で,右派にうったえかけることで道を開いてきた見込みが高いからだ.次の大統領予備選挙では,ティーパーティ]が重要な役割を果たし,候補者は右寄りにつなぎとめられることになるだろう.」

© The New York Times News Service


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