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ポール・クルーグマン「穏健派ならそこにいる,世間には見えてないだけだ」

Paul Krugman “A Moderate, Hidden in Plain Sight,” Krugman & Co., October 31, 2014.
[“The Invisible Moderate,” The Conscience of a Liberal, October 24, 2014.]


穏健派ならそこにいる,世間には見えてないだけだ

by ポール・クルーグマン

Doug Mills/The New York Times Syndicate

Doug Mills/The New York Times Syndicate


デイヴィッド・ブルックスが先日の『ニューヨーク・タイムズ』に寄せた経済の苦難に関するコラムで書いてたことには,賛成点も多い.

でも――案の定の「でも」でしょ――バラク・オバマって名前の人だって同じように賛成してる.ここで,いまの評論界隈の言論にずっと続いてる奇妙な特徴に話がつながる:極論を言う2派の中間にあるとされる穏健で良識ある道筋を求める声はしょっちゅうでてくるけれど,それってまさしくオバマ氏がこれまで提案してきたことに他ならないんだよ.

さて,ブルックス氏はこう書いてる:「連符政府はいまの金利でお金を借り入れてインフラを建設するべきだ.よりよいバス交通網といったインフラを建設して,労働者たちが遠距離の仕事先に通勤できるようにすべきだ.連邦政府が大きなインフラ整備法案を通してない現状には唖然とする.民主・共和両党からどれほど支持がでているか考えるとね.

さて,オバマ政権は,進んでインフラにもっと支出することだろう.問題は,主要な支出法案が下院で通過する見込みがゼロなところだ.それに,これは「民主・共和両党」の問題じゃあない――法案を阻止してるのは共和党なんだもの.バス交通網を拡大する赤字支出に,いったい何人の共和党議員がすすんで関わろうとすると思う? (思い出そう,自転車を貸し出していいようにするのは「全体主義的」規則の一例だと考えるような人たちがいるんだよ.)

そうそう,ブルックス氏はこうも書いてる:「政府は,働かない人たちに気前よくふるまう金額を減らして,働いている人々への支援を増やすべきだ.つまり,余裕のある高齢者への健康手当を減らすということだ.」

ふーん.適正価格医療保険法 (Affordable Care Act) は,低所得労働者への保険プレミアムを助成してるし,メディケア・アドバンテージへの過払い減少によってそうした助成の費用の一部を工面してる.つまり保守派はこの2つともを終わらせるのを歓迎してるってわけね.それこそ「医療を受けるに値するかどうか判断する死の委員会」ってやつじゃないですかね.

なんともびっくりな話だ:オバマ氏は,本質的に,昔ならリベラル共和党員と呼ばれてたことをやってる.ド右翼からの執拗な反対に直面するようなことをやってる.ところが,オバマの穏健路線は衆目のただ中にありながら隠れてる状態だ.ひょーろんか先生たちには見えないらしい.

この前,『ニューヨークタイムズ』がすごくいい調査記事を公表した.その記事では,適正価格医療保険法ことオバマケアこと「死の委員会」にして道義的にみて奴隷制に等しい制度とやらの現時点までの結果を調べている.

結論:「うまくいってる」.保険適用は大幅に広がってるし,それもアメリカ人の大多数にとってまかなえる金額になってる.主な例外は,最小限度の適用になるプランを選んだ人たちのようだ.そうしたプランでは,保険プレミアムはおさえつつも,自己負担金は大きなままにとどまる.ひどいことになるという予想があれこれ言われていたけれど,どれひとつとして,みじんも実現してはいない.

© The New York Times News Service

【バックストーリー】ここではクルーグマンのコラムが書かれた背景をショーン・トレイナー記者が説明する

逆大岡裁き

by ショーン・トレイナー

10月23日に,『ニューヨークタイムズ』に寄稿したデイヴィッド・ブルックスのコラムでは,長く続くアメリカ経済の苦難に立ち向かう方策をいくつも提案している.

ブルックス氏によれば,アメリカの政治家たちが党派対立を乗り越えるなら,「もっと中間階級らしい満足行く仕事を創出する自明な指針が」存在するのだという.この指針には,インフラへの政府投資を増やすことや,能力に基づく移民政策の実施や,教育投資の増額が含まれる.

だが,数名の評論家たちがこれに異論を唱えている.ブルックス氏が列挙した提案の実行を妨げている行き詰まりに責任があるのは民主・共和の両党だという見方を,彼らは批判している.10月22日の『サロン』で,評論家サイモン・マロイはこう論じている:「ひとくちに『妥協』と言っても,オバマと共和党ではその基準がちがっている.基本的な政府機能の停止が起きたときには必ず「両派を責める」条件が満たされるようになってるんだ.オバマはこれまでずっと,妥協案を提示する意志を見せる努力をつづけてきた.妥協案を提示して支持者の怒りを買い味方を遠ざけることになろうと,自分の案を通すことを第一にして妥協案を示してきた.共和党は,塹壕を掘って居座り,あらゆる提案を却下し,代わりになんの提案を示すこともせず,基本的な政府機能の稼働すらしばしば拒絶し,「妥協」するのはせいぜい,文字通りの経済的破局が天秤の片方にかけられている場合でしかなかった.それでいて,大統領は共和党と妥協できなかったと非難されているわけだ.」

来週の中間選挙で投票率は低くなると予想されている.世論調査をみると,共和党が上院で過半数をとる見込みは十分にあるのがうかがえる.『ワシントン・ポスト』にペイトン・M・クレイグヒル,スコット・クレモント,ジム・タンカスリーがのせた最近の分析によれば,多くの有権者はアメリカ経済を盛り上げる対策を議会にとってほしいとのぞんでいるが,議会にその能力があるという信頼は失われているという.同記事を引用しよう:「2008年に,ここ1世代でサイアクの景気後退がおきているただ中にあって,有権者たちは投票所に足を運んでワシントンにメッセージを送った:『経済を立て直してくれ,たのむ』.2010年にも有権者たちは同じメッセージを送った(…)2012年にも繰り返した.そのころ,弱々しい経済成長と高い失業率で景気回復は苦境にあった.いまから投票日までによほどの例外的事態でも起こらないかぎり,有権者たちは今年も同じメッセージを送るだろう.だが,今回はこれまでと大きなちがいが1つある.有権者たちは,誰もこのメッセージに耳を貸してくれないとあきらめてしまっているように見えるのだ.」

© The New York Times News Service


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