アレックス・タバロック「なんで摩天楼はあんなに低いの?」(2022年4月24日)

[Alex Tabarrok, “Why are skyscrapers so short?” Marginal Revolution, April 24, 2022]

ギザの大ピラミッドにはじまって今日までいたる高層建築に立ちはだかる物理的障害・経済的障害・規制の障害について,ブライアン・ポッターが楽しい読み物を書いてる.ポッターの結論は,こう:今日の高層建築の限界は技術的なものじゃなくって,行政の規制によるものだ――建てようと思えば技術的にはずっと高いビルも建てられる:

(…)さらにもう一階くわえる限界コストと賃料とを比べてみることで,建築の高さ制限の大きさを推計できる.Glaeser et al. 2005 の研究でマンハッタンの場合を推計したときには,もう一階増やす限界コストに比べて賃料は実に2倍なのが見出されている.彼らは結論でこう述べている――「なぜ[デベロッパーたちは]ここにある機会を活かさないのだろうか.その理由の最良の説明は,彼らがみずから語っている説明のとおりだ.ニューヨークのさまざまな建築規制がおりなす迷路によって,事実上,建物の高さに制限がかかっているのだ.」 さらに,欧州各地のさまざまな大都市についても,同様の賃料とコストの比が Cheshire et al. 2007 によって見出されている.ニューヨークのビルの高さがもたらす外部性の規模を推計しようと試みた Glaeser et al. によれば,賃料/建設コストの差にはとても及ばない.ここから,現行の高さ制限が必要な水準よりもはるかに厳しいことがうかがえる.

こうした建築物の高さ制限によって,みんなが損をする――たんに,とりわけ必要とされてる地域で利用できる建築物の空間の供給を人為的に制限することで死重損失を生じさせるだけじゃなく,密度上昇でもたらされる潜在的な凝集の便益を捨てることになってしまう.これによって,労働者も企業も生産性が下がり,できるはずのイノベーションも減る.これは,当の労働者や企業にとって損なだけじゃなく,みんなにとって損だ.みんな,〔そういう制限で生産性が下がらなければ〕より安価によりよいモノ・サービスを享受できるはずなのだから.

ここで大事なのは,より高いビルを建てることでやすやすと果実をたくさん手に入れられるという点だ.建設できる建物の限度を押し上げるのに,新技術はなにもいらない.たんに,自分たちで自分たちの邪魔をするのをやめるだけでいい.

以前,インドのムンバイの建物の高さに着目したときに,ぼくも同じ結論を下してる.下記の動画にも,容積率(別名「床面積率」)のとてもいい解説が含まれてるよ.

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