アレックス・タバロック「住宅建設と逆転イス取りゲーム」(2021年3月26日)

[Alex Tabarrok, “Housing and the Game of Reverse Musical Chairs,” Marginal Revolution, March 26, 2021]

シャーロッツビル市長が,先日こうツイートしていた

市場価格の住宅建設を増やして,どうして低所得市民向けの住宅市場の問題解消になるのか,説明してほしい.45万ドルで売りに出されるような住宅を買ったり借りたりできる低所得市民がどこにいる? 新しく住宅を建設しても,既存住宅の売値は下がらないだろう.

さいわい,Bryan Caplan が手際よく説明してくれている.逆転イス取りゲームがその説明だ.

新規の住宅建設は,たいてい,いい物件だ.というのも,時が経つにつれてテクノロジーは向上するし資本は減価するからだ.お金持ちの人たちほど,よりすぐれた物件の上乗せ価格にお金を払う意志があるものだ.そのため,新規の住宅に将来住むことになる人たちは,たいてい,羽振りがいい.

さて,うわべだけ見ている人たちが見落としてることは,なんだろう? 見落としているのは,大きな状況だ:新築物件に移り住む人たちは,古い物件から出ていって,そっちに移る.すると,その古い物件は他人が利用できるようになる.そういう物件に入る人たちは,おそらく元の住人たちに比べて劇的に貧しくはなく,わずかに羽振りがよくないだけの傾向がある.「階段を一段下がって」いくのを考えるといい.旧物件に入るそういうわずかに羽振りがよくない人たちが引っ越していくと,それまで彼らが住んでいた物件には彼らよりさらに一段羽振りがよくない人たちがやってくる傾向がある.以下同様に続いて,すてきな連鎖反応が起こる.こうして,新規の住宅建設を許すと,〔お金持ちから貧しい人たちまで〕所得分布全体の助けになるわけだ.

これはなかなか頭のなかで思い描きにくいので,イス取りゲームを思い浮かべてみるといい.ただし,ひとつ大事なちがいがある.ふつうのイス取りゲームでは,最初に1人あたり1コのイスが用意されていて,回を重ねるごとに1コずつイスが減らされていく.するとどうなるか:よりすばやくて積極的な子供が他のみんなを押しのけていって,最後には誰よりもすばやくて積極的な子が勝者になる.ぼくのバージョンのイス取りゲームでは,最初にイスの数が参加者よりも少なくて,それから回を重ねるごとにイスを足していく.するとどうなるか:トロくてのんびりした子たちがだんだん座れるようになっていって,最後にはイスが行き渡ってみんなが座れるようになる.

どちらのゲームでも競争して先を争う方式になっている.でも,ふつうのイス取りゲームでは競争がだんだん過酷になっていって,最後にはほぼ全員が負け組になる.これと対照的に,逆転イス取りゲームでは,競争がだんだんゆるくなっていって,最後にはみんなが勝ち組になる.

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