アレックス・タバロック「体験じゃなくモノを買え!」(2022年1月15日)

[Alex Tabarrok, “Buy Things Not Experiences!” Marginal Revolution, January 15, 2022]

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モノじゃなく体験を買うべきだって考えがよく言われるようになったけれど,根拠をよく考えてこれに反論してるいい文章を Harold Lee が書いてる:

ストア派のようにほんとにしあわせをもたらすことを吟味するのはいいことだと思うけれど,経済学的に考えて,この分析はまるっきり逆に思える.〔モノより体験にお金を出すべきという主張は〕ようするに,こう言ってるのにひとしい――「産業化とグローバル化の時代で物質的なモノがかつてなく安くなってるなかで,そうやってあふれかえってるモノを追究するのは避けるべきだ.そのかわりに,ボーモルのコスト病にかかってるサービスを消費すべきだ.つまり,これまでと相変わらず生産が難しい長い休暇旅行に出かけたりお高い美容室に行ったりといったサービスを消費した方がいい.」

こう考えると,ミニマリズムに力を入れるのは,新しいかたちの見せびらかし消費っぽく聞こえる.「貧乏な人間ですら物質的なモノを変えるんだったら,モノをあしざまに言いつつ,それ以外でなにかお金持ちしか享受してお友達に見せびらかせない贅沢を強調しようじゃないか」ってわけだ.

[モノと体験とをきびしく区別しすぎてるという話に続けて]道具や財産は,新しい体験を可能にしてくれる.設備がしっかりしてる台所があれば,毎晩のように出前を頼まずに自分で健康的な食事をつくれる.道具一式が揃っていれば,家のあちこちを修理・修繕できるし,そうやって自分で修理するうちに現代世界がどんな仕組みになってるか理解できる.広々とした居間があれば,友達を招いてお互いの近況についておしゃべりができる.猟銃があれば肉を自分で調達できるばかりか,いっしょに猟をする仲間とのつながりもできるし,ご先祖たちが暮らしていた自然環境とのつながりの感覚もえられる.実のところ,モノと体験に本物の境界なんてない.体験寄りのモノもある.たとえば地下室の木工作業場とか,いろんな良質茶葉のコレクションなんかがそうだ.それに,モノ寄りの体験もある.たとえば,インスタ映えしやすい休暇の旅行に行けば,たくさん「いいね」をもらえるけれど,すぐに記憶は薄れる.

というか,ぼくらの現代式ライフスタイルのよくないところとしては,ある意味で,体験を消費しすぎてる部分が大きい.ぼくらの経済で,年を追うごとにますますお高くなっていく部門といえば,不動産と教育だ(こいつらが高くなっていく分だけ,耐久財の富を築くのが難しくなる).不動産も教育も,他に代えがたい「体験」をもたらすと約束して売られている.医療も,避けられるに越したことはない体験だ.GDP に占める割合でみると,耐久財ではなくこうした体験の支出こそがどんどん高まっていて,みんなのおサイフを食ってる.ほんとにミニマリストの生活をおくりたいんだったら,いろんなモノをどんどん処分するのは忘れて,教育と不動産と医療を削るのに力を注ぐことだ.

多謝: The Browser.

写真のクレジット: MaxPixel.

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