Alex Tabarrok “Poor Sleep Makes People Poor: The Costs of India Standard Time” Marginal Revolution, February 5, 2019
独立後,インドは国土全体に単一の時間帯を採用した。インドは東西1,822マイルにまたがり,これは経度で29度に相当する。15度ごとに時間帯を分けるという慣習にインドが従っていれば,インドには少なくとも2つの時間帯があったことになる。時間帯が1つしかないことで,東では一番西よりも二時間早く日が昇るということがあり得る。
モーリク・ジャグナニは,その独創的かつ驚きの論文の中で,インドの単一の時間帯は睡眠の質,特に貧しい子供のそれを下げており,それによって彼らの教育の質を下げていると主張している。なぜ名目の変化が実質変数に影響を及ぼすのだろうか。学校はインド全土で大体同じ時刻に始まるが,日が沈むのが遅い場所では子供たちが床に就くのも遅い。そのため,西にいる子供たちは東にいる子供たちよりも睡眠が短く,これが彼らの教育水準,後々には彼らの賃金にさえ響くのだ!
日没の遅さが就学児童の入眠を遅くさせる一方で,起床時間には影響を与えないことを発見した。日没時刻の1時間(およそ2標準偏差)の遅れは子供たちの睡眠を30分減少させる。日没の遅さが就学児童が宿題や勉強に費やす時間,就労児童が正規ないし非正規の仕事に費やす時間を減少させる一方で,全ての児童に対して室内娯楽に費やす時間を増加させることも示す。この結果は,睡眠が生産性を強化し,就労児童にとっての学業努力及び就労児童にとっての勤労努力の限界収益を増加させるというモデルと整合的である。
本論文の第2部では,児童の学業上の成果に対する日没の遅さの生涯にわたる影響を検討する。ここでは2015年インド人口・保健調査(DHS)の全国データを用い,同一県内の東から西にかけて児童の教育上の成果と年間平均日没時刻がどのように共変するかを推定する。年間平均日没時刻の1時間(約2標準偏差)の遅れは,教育年数を0.8年減少させ,日没が遅い地点に住んでいる児童ほど初等及び中等教育を満了する可能性が低くなることが見いだされた。
追記:睡眠や睡眠による体内時計の調整の重要性は,10代の子供たちの睡眠パターンにうまく合わせた始業時間にした場合に子供たちの睡眠時間が増して成績もよくなる現象にも表れている。そのため,10代の子供たちのために始業時間を遅らせる運動も起きている。インドもそのうち時間帯を2つに分けるのではなかろうか。