ノア・スミス 「ロブ・リーに聞く ~ロシアの安全保障政策の専門家にウクライナ情勢について教えを乞う~」(2022年2月28日)

●Noah Smith, “Video interview: Rob Lee, Russian defense policy specialist”(Noahpinion, February 28, 2022)


海外で勃発した争い事――とりわけ、ロシア(および、その前身のソ連)が絡む争い事――について深く知りたいと思ったら、ロブ・リー(Rob Lee)に教えを乞うのがお決まりになっている。リーは、米海兵隊の元将校。現在はキングス・カレッジ・ロンドンの戦争学科の博士課程に在籍中で、ロシアの安全保障政策について研究している。戦略・テクノロジー分析センター(CAST)っていうロシアにある安全保障分野のシンクタンクで客員研究員を務めていたこともある。リーのTwitterのスレッドでは、ロシアによるウクライナ侵攻について、どこよりも包括的で、堅実で、濃い内容の議論が展開されている。

ウクライナでは目まぐるしいスピードで情勢が日々移り変わっているが、そんな中にもかかわらず、リーはわざわざ時間を作って僕のインタビューに応じてくれた。ロシアがウクライナに侵攻するに至ったきっかけについて。目下の戦況について。停戦合意に至る見込みについて。衝突がエスカレートする可能性について。そんなあれこれについて二人で話し合った様子をおさめたのが、以下の動画だ(インタビュー冒頭の自己紹介が雑で申し訳なく思う。でも、まあ、こんな時だし。色々と切羽詰まってるからね。ともあれ、もっと修業を積む必要がありそうだ)。

リーに教えてもらったことのうちで、いくつか重要なポイントを列挙しておこう。

  • ロシアによるウクライナ侵攻は、あらかじめ予見できた。プーチンは、はったりなんかじゃなくて、本気でウクライナに攻め込むつもりらしいってことを仄(ほの)めかす兆候はたくさんあった。
  • プーチンは、ウクライナを脅して譲歩を引き出そうとしたが、うまくいかなかった。「こうなったらもう侵攻するしかない。そうしないと、これから脅しをかけても二度と真剣に受け取ってもらえないかもしれない」ってプーチンは感じた可能性がある。
  • プーチンは、ウクライナがすぐに降参するだろうと踏んでいて、プランB〔ウクライナが徹底抗戦を続けた場合に備えた作戦〕を用意していなかった。
  • ウクライナに侵攻する準備は秘密裏に進められ、ロシア兵にも目的が何なのかが伝えられなかった。ロシア兵の多くは、自分が一体何をやっているのか今でもわからずにいる。それだからこそ、ロシア軍は大した戦果も収められずに、犠牲ばかりが増えているのだ。
  • ロシア軍は、連携がうまく取れていなくて、狙い撃ちされる隙が出来ている。ロシア軍を攻撃する武器として、ジャベリン(対戦車ミサイル)、スティンガー(携行型地対空ミサイル)、TB2(ドローン)なんかが効果を発揮しているのは、そのためだ。
  • これまでのところは、ロシア軍は民間人に手を出すのを渋っている。しかし、今後はそうじゃなくなるかもしれない。キエフをはじめとした都市を破壊し始める可能性もある。
  • 「ウクライナの都市を破壊せよ」との命令が下っても、ロシアの部隊はその命令に従わない可能性もある。
  • プーチンの権威にしても(圧倒的な権力者としての)地位にしても、これまでになく危うい状態にある。
  • プーチンの振る舞いは、筋が通っていなくて、予測不可能。多くのロシア人も、プーチンの行動に驚かされている。プーチンが次に何をするのか、誰にもわからない。
  • 第三次世界大戦に突入しないためにも、米国とNATO(北大西洋条約機構)は奇を衒(てら)ったりせずに慎重に行動する必要がある。ウクライナ上空に「飛行禁止区域」を設けるなんていうのは、絶対にやっちゃダメ。

つまりだね、目下の状況は、物凄く不安定で危ういのだ。僕たちは、相手にしている敵のことがよく理解できていない。たくさんの命が奪われかねない瀬戸際に立たされている。西側諸国は、決死の覚悟で勇敢に抵抗し続けているウクライナ人を支えなくちゃいけない。それと同時に、衝突がエスカレートして手に負えなくなるような事態は避けなくちゃいけないし、(プーチンが権力の座からどうしても退くつもりがないのだとすれば)プーチンの顔を汚さずに済む出口をどうにかして見つけ出さなくちゃいけないのだ。

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