●Alex Tabarrok, “Hacking the Nazis”(Marginal Revolution, November 16, 2017)
街角でナチスに抵抗した者もいれば、世界で最初のIT(情報技術)システムをハッキングしてナチスに抵抗した者もいる。「内側」からナチスに抵抗した無名のハッカーが何人もいるのだ。Ava Ex Machinaがそのうちの一部をこちらの素晴らしいエントリーで紹介している。ちょっとだけ引用しておこう。
ルネ・カルミル(René Carmille):パンチカードの開発者。フランス軍の会計監査役を務めた後、フランス人口統計局長に就任。
ナチスは、IBM社からパンチカードを提供してもらっていた。国勢調査のデータを更新するスピードを上げて、ユダヤ人の居場所を速やかに特定する(そして、捕まえる)ためにである。カルミル率いる二重スパイ軍団は、パンチカードの機能をいじってその邪魔をしたのである。
IEEE(米国電気電子学会)発行のThe Institute は、カルミルをホワイトハッカーのはしりに認定している。「カルミルらは、2年間にわたって、国勢調査のデータが更新されるペースを意図的に遅らせた。パンチカードの打ち間違いが起きるように、機能をいじったのである。それだけでなく、カルミルは、お手製のパンチカードにもハックした。特定の地域の情報がカードに打ち込まれないように、プログラムを書き換えたのである」。システムの脆弱性を見つけてそこに付け込んだカルミルらのハッキング活動のおかげで、大勢のユダヤ人がナチスに捕まらずに済んだし、強制収容所に送られるのを免れたのだ。
カルミルは、1944年にリヨンでナチス親衛隊に捕らえられ、クラウス・バルビー(Klaus Barbie)――「リヨンの虐殺者」の異名を持つ、冷酷で残虐なナチス親衛隊の幹部――による尋問を受けた。拷問は 2日間に及んだが、カルミルはそれを耐え抜いた。その後はダッハウ強制収容所に送られ、そこで1945年に亡くなった。
情報を寄せてくれたティム・ハーフォード(Tim Harford)に感謝。
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●Tyler Cowen, “The cutthroat world of children’s food”(Marginal Revolution, May 13, 2019)
データには違いない。
FBI(連邦捜査局)による1年に及ぶ調査を経て、カリフォルニア州で事業を展開する企業の重役が逮捕された。競合相手のウェブサイトをハッキングして顧客情報を盗み出した容疑がかけられている。
変わり種のニュースだ。というのも、ハッキングの標的となったのは、巨大IT企業でもなければ、大型金融機関でもないからだ。巨額の金が動く世界で起きた話ではないのだ。アメリカの児童が食べる給食を提供する業者が狙われたのだ。
先月逮捕されたのは、Choicelunch社のCFO(最高財務責任者)を務めるキース・ウェズリー・コスビー氏。40歳。同じくサンフランシスコ・ベイエリアにある学校に給食を提供する競合相手のThe LunchMaster社のウェブサイトをハッキングして、児童の食の好みに関する詳しい情報を不正に盗み出した容疑がかけられている。
コスビー氏が問われているのは、コンピュータへの不正アクセス、個人情報窃取の二つの罪。有罪判決が下れば、刑務所で3年間過ごさなければいけなくなる。
サンマテオ郡にある裁判所に提出された告発状によると、コスビー氏は、不正に入手した数百名に及ぶ児童の情報をカリフォルニア州教育省――カリフォルニア州における学校給食プログラムの管理を担う公共機関――に匿名で伝えたという。そうすれば、競合相手に打撃を与えられると踏んだようだ。
全文はこちら。こちらの記事でも同じニュースが取り上げられている。情報を寄せてくれたthe estimable Chugに感謝。