●Alex Tabarrok, “Banksy Comments on the Nobel Prize?”(Marginal Revolution, October 15, 2013)
Mashable: ストリートアーティストとして知られるバンクシー(Banksy)の絵が土曜日にニューヨークのセントラルパークで路上販売された。露店で売りに出されたのは万ドル単位相当の値打ちがあると見積もられている作品ばかりだが、そのお値段は1点あたりなんとわずか60ドル。
その模様はバンクシーの公式サイトで映像付きで報告されているが、記念すべき最初の売り上げにたどり着くまでに開店から数時間を要したという。最初の購入者は女性。値引き交渉の末に2点の作品を半額で購入していったという。午後6時に店が閉じられるまでに絵を購入していったお客の数は合計で三名。一日の売上高(売り上げ総額)は420ドルにとどまったらしい。
ちなみに、バンクシーの作品のうちで『Space Girl & Bird』は2007年にオークションで57万8000ドルの値がつけられており、『Keep it Spotless』は2008年に187万ドルで落札されている。
ファーマ&シラー&ハンセンの三人――「資産価格の実証分析」への学術的な貢献が讃えられて本年度(2013年度)のノーベル経済学賞を共同で受賞した三人――なら上の結果について何てコメントするだろうね?
複製不可能な作品(アート作品)を売って得られる儲けを最大化する(一つでも多くの作品をできるだけ高値で売りさばく)というのはマッチングの問題の一種であり、「この作品を手に入れるためなら誰よりも金を出してやる」と意気込む相手(買い手の候補)を世界中から探し出す努力が欠かせない(この点について詳しくは “An Economic Theory of Avant-Garde and Popular Art”(pdf)を参照のこと)。・・・という観点からすると、上の結果はマーケティング(宣伝)の失敗として説明がつけられるかもしれない。
「現代芸術(モダンアート)はバブルに彩られている」という別の説明も考え得る。将来的に誰かに(自分が買った時よりも高い値段で)売ってしまえるだろうと予想するからこそ買う。そうじゃなければモダンアートなんて買わない、というわけだ(ファッション感覚で買ったり流行に乗って買うというのもバブルを後押しする働きをする可能性があるが、それでもやはり将来的にいいカモ買い手が見つかる(高値で転売できる)に違いないという予想に支えられている点では変わりがない)。
あるいはバンクシーとしては(「シグナリングの理論」の分野を開拓した)別のノーベル経済学賞受賞者の業績に目を向けよと言いたいのかもしれないね。