●Alex Tabarrok, “Bagel Theft”(Marginal Revolution, June 8, 2004)
20年ほど前の話になるが、一人の経済学者が学者稼業に嫌気が差して、ベイグル売りに転身した。朝になると、ワシントン周辺にあるオフィス街を訪れて、方々の会社のカフェテリアにベイグルと代金入れを置いていく。午後になると、売れ残ったベイグルと代金入れを回収しに戻る。さすがは元経済学者と言うべきか、そのベイグル売りは、持ち去られた(食べられた)ベイグルの数と売上代金のデータを事細かに記録しており、そのおかげで人がどんな状況で不正直に振る舞うかを推測することが可能となったのだ。
以上のエピソードは、スティーヴン・レヴィット&スティーヴン・ダブナーの二人がニューヨーク・タイムズ紙に寄稿している記事(“What The Bagel Man Saw”)で紹介されているものだ。データから明らかになった真実をいくつか列挙しておこう。
- 9.11テロ事件後に、「盗み」 [1] 訳注;代金を支払わずにベイグルを持っていったケースは15%減少した
- 好天に恵まれると、人は正直に振る舞いがち。その反対に、悪天だと、人は不正直に振る舞いがち [2] 訳注;正直に振る舞う=ちゃんと代金を支払ってベイグルを持っていく/不正直に振る舞う=代金を支払わずにベイグルを持っていく
- オフィスの規模が小さいほど、「犯罪率」は低くなる(都市の規模が小さいほど、犯罪率は低いというのと同じというわけだ)
- クリスマスが近くなると、「盗み」がごまんと増える
ところで、執筆者の紹介欄の記述に引っかかった。
スティーヴン・ダブナー(Stephen J. Dubner)は、ニューヨークを拠点とする作家・ジャーナリスト。スティーヴン・レヴィット(Steven D. Levitt)は、シカゴ大学に籍を置く経済学者。二人は、赤ちゃんの命名、イカサマ、コカインの取引、不動産取引などをテーマとした経済学の本を共同で執筆中。
赤ちゃんの命名、イカサマ、コカインの取引、不動産取引・・・。一体どこに共通点があるっていうんだ? [3]訳注;・・・と気になった方は、是非とも『ヤバい経済学』(スティーヴン・レヴィット&スティーヴン・ダブナー 著/望月衛 … Continue reading