Paul Krugman, “G.O.P. Still Worried About ‘Those People’”, October 17, 2013.
共和党はいまだに「やつら」を懸念してる
by ポール・クルーグマン
評論家たちがこぞって,デモクラシー・コープスの出したレポートを引き合いに出している.このレポートは共和党員たちのフォーカス・グループ面談に関するもので,評論家たちが参照するのにも,もっともな理由がある:同組織の共同創設者スタンレー・グリーンバーグは,ここ数年でアメリカ政治を席巻している狂気ざたを統一的に扱う理論を提供しているんだ.
このレポートで明らかにされているのは,こんなことだ――フードスタンプから保険医療改革まで,助けを必要とするアメリカ人に手当を与える政府プログラムを現在の共和党が偏執的に攻撃しているのは,なにも小さな政府を哲学的に信奉しているからじゃあない.変化してゆくアメリカに抱いている不安――多人種・多文化社会になろうとしているアメリカに抱いている不安――と,民主党が「俺たちの金」を奪って「やつら」に与えていることに対する怒りから来ている.つまり,何年経ってみてもいまだにこうして人種論議をしてるわけだ.
ここには1つ皮肉がある.それは,現時点でアメリカを信じているのはリベラルたちであって,一方の保守派たちはそうじゃないってところだ.ぼくは,本質的なところを保持しながら変化を遂げてゆける能力がぼくらにはあると信じている.ぼくは,今日の移民たちはやがてぼくらの社会の織物に織り込まれていくと信じている.ちょうど,20世紀のなかば,イタリア人やユダヤ人が――かつては根本的にアメリカのあり方にそぐわないとみなされていたのに――「白人」になったのと同じようにだ.
他にも皮肉なところはあって,それは,社会保険プログラムは事実上,マイノリティの民主党支持票を買うことになると右派はすごく恐れているけれど,これは自己成就的な予言になりつつあるってことだ.共和党は移民に手を伸ばし,オバマケアに対する自分たちのスタンスを穏健なものに調整して,節度ある道理のわかった政党という姿勢を打ち出すことだってできた.ところが実際には,自分たちが勝ち取る必要のある人々をみんな遠ざけてしまい,みずからが恐れているリベラルの支配のお膳立てをまんまと整えかねなくしてる.
その一方で,ぼくらガリ勉どもがここから持ち帰るべき要点はこれだ――いまなされてる表面的な論争は――たとえば,身体障害者登録が増加してるのをめぐる論争なんかは――どれ一つとして,額面通りに受け取れやしない.たしかに,数字はしっかり調べる必要がある.でも,向こうさんは,そんな証拠なんて気に掛けちゃいないんだもの.〔※身体障害者の手当を受ける人たちが2007年の景気後退から増加しているという報道を受けて議論がなされている:ワシントンポストの記事を参照.〕
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Paul Krugman, “G.O.P. Tax”, October 17, 2013.
共和党税
by ポール・クルーグマン
リサーチ会社のマクロエコノミック・アドバイザーズが,2010年以来の財政政策の効果について新しくレポートを出している――2010年以来ってことは,つまり,共和党が下院を支配して以来ということだ.ただ,レポートの書きぶりで混乱する人もでるかもしれない.このレポートでは,債券市場の不確実性と,裁量支出の削減が組みあわさって生じた効果により,GDPの成長率が1パーセント縮小した,と書かれている.これは,GDPが1パーセント減少したって意味じゃあない――減ったと言ってるのはGDP成長の年率だ.つまり,ここで語られているのは,現時点でGDPのほぼ3パーセントの話なんだ.これが累積して,使われずに無駄になった経済の潜在力の損失は,およそ7000億ドルにのぼる.この数字は,ぼく自身の概算とほぼ同じだ.
また,レポートの推計によれば,現在の失業率は,ああいった政策がなかった場合に予想されるものより 1.4 ポイント高くなっている(この数字は,GDPがおよそ3パーセント低くなったという話と整合する).というわけで,ああいう〔共和党の〕議員さんたちがいなかったら,失業率は6パーセントを下回っていたはずなのよ.
まったくたいした偉業ですわね.
© The New York Times News Service