ジョン・コクラン「イエレン議長を振り返る」

John Cochraine “Yellen Retrospective” The Grumpy Economist, November 2, 2017


本日の新聞報道によれば,トランプ大統領はジャネット・イエレンの後任としてジェローム・パウエルをFed議長に任命することを決定した。

Fedの責務は「雇用最大化,価格の安定,長期金利の安定を促進する」ことだ。彼女の任期におけるこれらの結果について,イエレン女史は胸を張って良いだろう。

全都市消費者物価指数(除食料及びエネルギー)

文民失業率

10年物財務証券満期利回り

これら3つの変数すべてが過去50年において最良となっている。私を含め,多くの人が多くのことについてFedに文句を言うが,Fedに課せられた責務に関していえば,彼女が上の3つのチャートを次の職場の壁に飾るのを咎める人はいないだろう。

イエレン女史が特段課題に見舞われることがなかったと言う人もいるかもしれない。大統領が戦時において試されるがごとく,Fed議長は出来事によって試されるというわけだ。イエレン女史が不況や金融危機に見舞われることはなかった。この晩夏の静けさ漂う景気循環の中で,彼女の仕事の大部分は何もしないこと,そして彼女に大きなことをさせようとする人々の呼びかけに抵抗することだった。Fedの主要なツールであるフェデラルファンド・レートはほとんど動かなかった。

実効フェデラルファンド・レート

彼女が何もしなかったというのは正しいが,彼女は状況をめちゃくちゃにすることもなかった。金融政策の歴史の多くは凡ミスで構成されており,うまく業績を上げてきたわけではない。歴史的には,中央銀行家は晩夏のような景気循環の時に過剰ないし過少に反応してきた。緊縮・緩和を問わず,劇的な行動をとるよう大きな声で求める人がいないということもなかった。Fedが株式と住宅価格を操作すべきという「マクロプルーデンス政策」という誘惑の声はとりわけ強かった。彼女の前任であるベン・バーナンキは,2008年の危機と不況に対するFedの対応,そして2007年に危機が来ることをFedが見通せなかったという失敗について,彼女よりもはるかに多くの紙幅を割かれるだろう。状況をめちゃくちゃにしなかったということが歴史において大きな位置づけを与えられることはないが,おそらくはそうした位置づけを与えられるべきだ。

金融政策について,そしてより重要な問題である(と私が考えている)Fedの金融規制についての各人の考えはどうあれ,トランプ大統領は彼女を再任命しないという伝統破りを行った。Fed議長が順当な仕事を行った場合,彼あるいは彼女は再任されるという伝統はFedの独立性を保つための良い方策だ。この伝統がなくなってしまわないことを祈ろう。

イエレン女史の新たな旅立ちと,パウエル氏のFed議長就任に幸いあれ。

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