タイラー・コーエン 「『ながら運転』はどのくらい危険?」(2013年8月3日)

●Tyler Cowen, “How dangerous are cell phones when driving?”(Marginal Revolution, August 3, 2013)


サウラブ・バグラヴァ(Saurabh Bargrava)&ヴィクラム・パタニア(Vikram S. Pathania)の二人の共著論文によると、「ながら運転」はこれまでに思われていたほどには(通説が説くほどには)危険じゃないらしい。以下にアブストラクト(要旨)を引用しておこう。

本稿では、通話料金の不連続性――携帯電話会社の大多数は、携帯電話の通話料金を平日の午後9時に「ピーク料金」から「オフ・ピーク料金」へと切り替える料金プランを提供していたことがある――によって可能となった「自然実験」の機会を利用して、車の運転中における携帯電話での通話が交通事故を誘発するかどうか(車の運転中に携帯電話で通話するという「ながら運転」と交通事故との間に因果関係が見出されるかどうか)を検証する。我々が収集したデータによると、車の運転中における携帯電話での通話件数は平日の午後9時になるとその他の時間帯に比べて一気に7.2%ほど増えているが、平日の午後9時前後における交通事故の発生件数はその他の時間帯と比べて特に多いという様子は見られない。本稿での推計結果によると、「ながら運転」(運転中に携帯電話で通話すること)によって交通事故が誘発されるリスクは(「ながら運転」をしない場合と比べて)上限で3倍ほど高まる可能性が示唆されている一方で、「ながら運転」によって交通事故が誘発されるリスクは(「ながら運転」をしない場合と比べて)4.3倍ほど高まるとのレデルマイヤ―&チブシラニ(1997)の結論は棄却されている。追加でいくつかのパネルデータ分析も試みたが、同様の結論が得られている。

以下の「謎」を解くことがこの論文の狙いって見方もできるだろうね。

携帯電話の普及率(国民1人当たりの携帯電話の保有台数)は1998年以降に急激に伸びており、1カ月の通話時間の平均も1993年から2005年までの間に140分から720分へと大幅に長くなっている。さらには、いくつかの聞き取り調査によると、携帯電話所有者のうちの81%近くが車の運転中に携帯電話を使って誰かと喋ったことがあるという。その一方で、自動車による交通事故の総件数は1998年から2007年までの間に大幅に減っているのである。

心置きなく「ながら運転」を続け給え(あるいは、車の運転中に携帯電話で誰かと喋ったことがない人は、「ながら運転」デビューしちゃえ)って言いたいわけじゃないよ。「ながら運転」は相当危険だ(交通事故を誘発するリスクがかなり高い)って結論付けてる研究もたくさんあることだしね。ともあれ、「ながら運転」のリスクのほどについては、まだ決着はつきそうにないようだ。

件の論文の草稿はこちら(pdf)、学術誌(American Economic Journal: Economic Policy)に掲載されたバージョンはこちら(pdf)。

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