タイラー・コーエン 「『リパブリカン・クラブ』 ~この絵から何が読み取れる?~」(2018年11月23日)

●Tyler Cowen, “The Republican Club — why is this painting interesting?”(Marginal Revolution, November 23, 2018)


『リパブリカン・クラブ』と題された上の絵はホワイトハウスの壁にかけられていてトランプ大統領もお気に入りらしい。何か目に付くところがあるだろうか? 私なりに思うところをいくつか列挙してみるとしよう。

1. 「建国の父」をはじめとして遥か昔の大統領は誰一人として描かれていない。「リパブリカン」(共和党員)はアメリカという国の長い伝統から独立した独自の集まり(勢力)として描かれているわけだ(右端で中腰になっているのは誰だろうか? セオドア・ルーズベルト? それともバーノン・スミス? あるいは他の誰か?)

2. パパブッシュ(左上)と(トランプ大統領の背後で柱に寄りかかっている)ジェラルド・フォードの二人は「話し合いのテーブルの席」に座れていない。パパブッシュはテーブルに座る面々を羨ましげに傍観しているように見える。テーブルの一番左に座っている子ブッシュは疲れてやつれているように見える。仕事で何かやらかした後のようだ。青ざめたオバマのように見えなくもない。

3. 任期中に(大統領職を)辞任に追いやられたニクソン(右下)はお酒を飲んでいる一方で、トランプはどうやらコーラを飲んでいるようだ。

4. レーガンはトランプの唯一の同志のように描かれている。トランプの一番「近く」にいる(トランプに一番密着している)のはアイゼンハワーであり、トランプに一番好意を寄せているのもアイゼンハワーのように見える。トランプの政策の多くは何らかの方法でアメリカを(関税が高くて移民が少なくて規制も少なくて等々といった特徴を備えた)アイゼンハワー時代に回帰させようと試みていると言えなくもない。

5. テーブルに座っている中でネクタイを締めているのはトランプだけだ(テーブルに座っていない面々も含めるとネクタイを締めているのは他にはルーズベルトだけ)。鮮やかな赤色のネクタイだ。

6. 右側の奥にぼんやりと描かれている三人の人物は誰かというと、フーバーにハーディングにクーリッジだ

7. 『最後の晩餐』をテーマにした作品の数々(ダ・ヴィンチ作のやつじゃなくてね)が思い出される。12人いるしね。

8. 背景の柱にしてもきらめく光にしても19世紀後半のフランス印象派の絵が連想される。

9. こちらに背中を向けて座っているヒゲを蓄えた人物は誰だろうか? 初見時はメフィストフェレスかなと思ったのだが、どうやら正解はリンカーンのようだ。話し合いには積極的に参加せずに傍観しているように見える。肩も弱々しくて存在感も薄い。

10. この絵の作者であるアンディ・トーマス(Andy Thomas)は(民主党出身の歴代大統領がテーブルに座って歓談している姿を描いた)『デモクラティック・クラブ』という名の対照的な絵も描いている。二枚の絵(『リパブリカン・クラブ』と『デモクラティック・クラブ』)の違いをテーマにしたコンパクトな本もすぐに書けてしまえることだろう。例えば、『デモクラティック・クラブ』ではテーブルに座っている面々はビールを飲んでいる。背景も広くて開けている。柱の本数も少ない。

『リパブリカン・クラブ』についてはこちらの記事Anecdotalに教えてもらったもの)も参照されたい。

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