タイラー・コーエン 「メディアの報道に備わる『つけ上がらせ』効果」(2008年3月11日)

●Tyler Cowen, “Department of unpalatable results”(Marginal Revolution, March 11, 2008)


こちらの論文によると、イラクに駐留する米軍の活動に批判的なニュースが米国のメディアによって報じられると、イラクで抗戦を続ける勢力がつけ上がって、イラクに駐留する米軍に対する攻撃が増えるらしい。

占領地での自軍の死傷者の発生に米政府が神経質になっていることを示す情報は、米軍に占領されている地で抗戦を続ける勢力(抵抗勢力)の行動に影響を及ぼすだろうか? 本稿では、イラクにおける抵抗勢力による米軍への攻撃に関するデータに加えて、イラク内部の県ごとの衛星放送の普及率に関するデータ――衛星放送の普及率は、県ごとに違いがある――を用いて、メディアの報道に抵抗勢力を「つけ上がらせる」(”emboldenment”)効果が備わっているかどうかを検証する。具体的には、米政府の要人が米軍による軍事行動に批判的なコメントをしたことが米国のニュースで報じられた後に、米国のニュースを視聴できる衛星放送の普及率が高い県と低い県との間で、抵抗勢力による米軍への攻撃にどのような違いが生まれるかを比較した。その比較の結果によると、米政府の要人が米軍による軍事行動に批判的なコメントをしたことが米国内のニュースで報じられると、その後に一時的に抵抗勢力による米軍への攻撃が7~10%ほど増えることが見出された。本稿で得られた結果によると、イラクで抗戦を続ける勢力は、米軍が撤退する確率の見積もりが変化するのに応じて、合理的に振る舞いを変えているようである。イラクにおける抵抗勢力が合理的に振る舞っているらしいことを踏まえると、索敵殲滅(さくてきせんめつ)ではなく、抵抗勢力の伸長を防ぐことに、鎮圧作戦の主軸を置くべきだろう。

FOXニュースの言う通りってことなんだろうかね?

それはともかく、個人的に納得しかねる点がいくつかある。まず一点目。イラクでは県ごとに衛星放送の普及率に違いがあるとのことだが、県ごとに衛星放送の普及率に違いがあるのは、別の何らかの特徴の面で県ごとに違いがあって、そのことを反映しているだけなんじゃなかろうか? そうだとすると、米国のメディアの報道が原因で、抵抗勢力による米軍への攻撃が誘発されているとは言えなくなる。それに、衛星放送の普及率に違いがあるとしても、米国のニュースの内容をどれだけ知っているかに大きな違いが生まれるだろうかね? 衛星放送を見れる人が見れない人に向けて、「衛星放送を見てたら、こんなニュースが報じられたよ。米軍に攻撃するチャンスだよ」ってメールするって手があるんじゃなかろうかね? 次に二点目。バグダッドは、検証の対象に含まれてるんだろうかね? 除外されてるんじゃなかろうかね?

ともあれ、ガツンとした刺激が欲しい人は、この論文を今すぐに読むといい。

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