●Tyler Cowen, “In praise of travel in middle-income countries”(Marginal Revolution, June 24, 2011)
メキシコ、トルコ、ブラジル。いずれも、「先進国」と「開発途上国」の中間に位置する「中所得国」だ。どの国も、その中に一歩踏み込むと、多様性に富んだ風景が広がっている。どの国もそれぞれに違っていて異国情緒を感じさせてくれるし、快適に過ごせるだけの豊かさを備えてもいる。国内を旅しているだけなのに、(地域ごとに多様性があるために)いとも容易く別世界を行き来できる。上等な食事に、ワールドクラスの観光スポット付き。出来上がった完成品ではなく、仕上げの途中にある国。旅の最中は、サスペンス(ハラハラドキドキ)の連続だ。メキシコ、トルコ、ブラジルのうち、二ヶ国(ブラジル除く)は安くで廻れるし、治安もいい。
(トルコの首都である)アンカラは素晴らしい都市だが、どういうわけだか、称賛する声はあまり聞かれない。現代都市に足を踏み入れたはずなのに、何世紀も昔の世界にタイムスリップしたかのような気分に襲われる。どんなにか興奮するだろう! 市場(いちば)に、昔のままの建物、エキゾチックな食材、政治的なモニュメント、人間精神のダイナミズム。ありきたりの旅を凌駕する材料が揃っている。あちこち歩き回っているうちに、ふと目が覚めて、自分が今いるのは、21世紀のアンカラだということに気付かされる。興奮が冷める暇があろうか?
今に近いものほど愛(め)でられがちだが、そんな偏見なんてうっちゃろうじゃないか。廃墟は朽ち果てども、アンカラは朽ち果てず。